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旅の仲間 その1

「お恥ずかしい話ですが、いまのところ私たちに魔族の支配する地域を突破して魔王城へ向かう戦力は残されておりません。

そのため、魔法で敵の奥深くに転移してから、大勇者様を召喚したのです」

「それってもしかして決死隊ってこと?」

「大丈夫です。大勇者様は私たちがしっかりお守りいたします。この命に代えても必ず魔王のところへ連れてまいりますからご心配には及びません。

それに、どうしても、の場合にはこの帰還の笛がございますから」


 リリアナは首にかけていたペンダントを見せる。細長い筒に翼のようなものが左右に生えていた。先っちょが確かに笛の吹き口のようになっていた。なるほど、それを吹くと町とかに戻れるアイテムのようだ。


「そんな便利なアイテムがあるなら僕に持たせてよ」


 僕の言葉に、リリアナは一瞬目を見開いて、驚いたように、「これをですか?」と言った。


「……いえ、これは自分が行ったことのあるところに戻るアイテムですので、大勇者様が吹いたとしてもせいぜい今居る、この洞窟に戻れるぐらいなのです。ですので、大勇者様が持たれてもあまり役に立たないと思います。

いえ! 大丈夫ですわ。

大勇者様を置いてきぼりにして逃げるなんて女神リュシーシャ様の名にかけていたしませんから!

そんなことより、そろそろ大勇者様を守る仲間を紹介いたしましょう。

さ、さ、こちらへ」


 リリアナは僕の手を取るとぐいぐいと洞窟の外へと引っ張っていった。


 外へ出るとそこは森の中だと分かった。洞窟の入口付近は少し大きな草地になっていたが、ちょっと行くとすぐに鬱蒼とした木々に囲まれ、視界が遮られていた。

 草地の真ん中では火が炊かれており人が何人かいた。


「皆さん。召喚は無事、成功いたしました。

大勇者様を紹介します。集まってください」


 リリアナの言葉に火の周りにいた人間がぞろぞろと集まってきた。

 男女二人ずつ。四人いた。


「こちらが大勇者様です。

名前はアスナロヒデオ様です。

では、皆さん、自己紹介をいたしましょう。

まずは私から……」


 リリアナはそう言うと、僕の方に向き直り、深々とお辞儀をした。西洋風なのにリグンシャラにはどうやら日本のお辞儀と同じ習慣があるようだった。


「あらためまして。リリアナと申します。

聖女を賜っております。神聖魔法を少々使います。大勇者様をお守りするのが私の使命であります。至らぬところが多々御座いますが身の回りの世話もいたしますので、なんなりとお申し付けください」


 言い終わると、また、深々と頭を下げる。こんな美人に身の回りの世話をすると宣言されるとドキドキしてしまう。もしかして、変なことをお願いしても聞いてくれるのだろうか、とあらぬ妄想をしてしまう。


「俺の名はガイナック!」


 野太い大声が僕は煩悩を消し飛ばす。

 声の主は浅黒い肌にずんぐりとした男だった。背は低いが腕も太股も筋肉隆々で丸太のようだった。


「戦士だ。まあ、俺がいれば百人力、いや、千人力。大船に乗った気で居てくれればいいぜ。

ガハハハハ」

「おお、言うねぇ。でも、ガイナックの大口には気を付けたほうがいいぜ」


 ガイナックの後ろから声をかけてきたのは、赤毛の短髪の男、だと思っていたが、良く見ると、着ているなめし革の上着は胸が大きく膨らんでいて女性であることを誇示していた。

 いわゆるボクっ()、いやいや、オレっ()ってことか。


「俺はシャンリー!武闘家さ。

脳筋のガイナックよりか頼りになるぜ」


 シャンリーはニヤリと笑いながらハスキーながらどこか甘い響きのある声で言った。

 誰が脳筋じゃ!っと叫びながら抱きつこうとしてくるガイナックを軽やかなステップでかわす。両手をこめかみのところでヒラヒラさせながらあっかんべーをした。


「へっ、ウスノロには捕まらねーよ」

「なんだと、こらー!」


 ガイナックは顔を真っ赤にしてシャンリーに突進するがまるでそよ風に舞う蝶のように右へ左へと、一向に捕まらない。


「いやはや、自己紹介のはずがなんでこんなに騒がしくなるのですかね」


 穏やかな声に、視線を移すと、そこには銀色の甲冑に身を包んだ男が1人立っていた。面長の顔はハンサムと評して良いだろう。

 その男は僕と視線があうと、片膝を付き、頭を垂れる。


「我が名はオルディン。バルン王国の騎士(ナイト)を拝命しております」

騎士(ナイト)はその身に纏う鎧による強靭な防御力が身上です」


 リリアナが補足をしてくれた。オルディンは我が意を得たりと頷く。


「さよう。これにリリアナ様の支援魔法が加わればまさに無敵。オークの大集団が来ようとも、なにを恐れることもありませんぞ」


「わ、わたくしは、あ、あのマ、マドーラと言います!!」

 

 上擦った、甲高い声がしたと思うと、オルディンの後ろから小柄な少女が姿を現した。クリーム色のワンピースのような服。手には自分の身長と同じぐらいの大きな杖を抱えてた。


「えっと、わたくしは癒し手(ヒーラー)です。どんな傷でもわたくしが治しちゃう……いえ、治しますので安心してください」

「私も治癒魔法を使えますが、戦闘になれば支援魔法などで忙しくなると思います。そのため、治癒はこのマドーラが担当することになりますわ」

 

 よ、よろしくお願いします、と舌を少し噛みながらピョコンとお辞儀する姿はどこかリスやウサギのような小動物を連想させた。


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