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大勇者

 リグンシャラを一言で言うとファンタジーの世界だ。文明レベルは中世ヨーロッパぐらい。魔法がある。


 そう! つまり、剣と魔法の世界だ。


 リリアナはその世界の神官様、いや、神官は男に使う言葉なので、聖女と呼ばれていた。最初に彼女を見た時、聖女様みたいと思ったけれど、()()()ではなく、正真正銘、本物の聖女様だったのだ。白い法衣と頭の帽子は単なるコスプレではなかった。

 さて、ファンタジー世界では良く人間族と魔族が争うということが良くあるけど、このグリンシャラもご多分に漏れず、人と魔族が争っていた。

 その力は拮抗して何百年もの間、世界を二分して戦い続けていたそうだ。しかし、そのバランスが最近大きく崩れた。


 魔王が現れたからだ。


 その名を魔王デルデオン。


 デルデオンのため、人間は大陸の辺境に追いやられ、わずかな拠点で必死に抵抗をしている状況だった。そして、その残り少ない拠点も日に日にひとつ潰され、ふたつ奪われ、と言う有り様らしい。

 言わば風前の灯火ってやつ。

 そこで、人間側の指導者は異世界から大勇者なるものを召喚することにした。


 その大勇者こそ、誰でもない。この僕、翌檜(あすなろ)英雄(ひでお)、ってことらしい。


「ぼ、僕が大勇者って、そんなの。

僕なんかどこにでもいるモブキャラだったんだよ。

そんな僕が大勇者なんて、あり得ないよ!」

「モブキャラ……とはなんですか?」

「あーー、つまり、なんの取り柄もない凡人っていう意味さ」


 僕の言葉にリリアナはふるふると首を振る。金髪がその度に扇状にひらひらと舞った。


「そんなことはありません。あなた様には凄い力があるのです。

間違いなく魔王デルデオンを倒すことができます!」


 まあ、確かに召喚とか転生ものって主人公はチートな力を持ってるよね。でも、どうにも実感がない。気づいたらここにいて、神様か女神様と面接した記憶もない。


「そう言うけど、僕はどんな力を持っているの?」

「それは……」


 リリアナが真剣な眼差しで僕を見つめてきた。僕は固唾を飲んで答えを待つ。


「分かりません」


 盛大にずっこけた。


「分かんないってそんな、いい加減な!

う~ん。そうだ。

えっと、鑑定!」


 僕は大声で叫んだ。


 …… ……


 なにも起きなかった。


「じ、じゃあ、メニューオープン!!」


 今度は、片手を上げる動作も付け加えてみた。


 …… …… ……


 やはり、なにも起きなかった。


「あ、あのー、なにをされているのですか?」


 少し引きぎみにリリアナが聞いてきた。

 ものすごく恥ずかしい。試すなら一人の時にすれば良かったと後悔する。


「いや、自分の隠れた力がわかるかなぁー、とと思ったんだ」

「大勇者様のいた世界では、そのようなことをすると分かるのですか?」

「いや、分かんない、かな……

でも、ほら、ここは僕にとっては異世界だから。異世界だと、今みたいことをすると分かったりすることが良くあるから」


 リリアナは小首を傾けて、じっと僕の顔を見つめる。多分何を言っているのかさっぱり分からないのだろう。それでも一生懸命理解しようとしてくれているのは分かった。僕の話を真剣に聞いてくれる人なんていなかったから、なんかすごく嬉しかった。ちょっと鼻の奥が熱くなる。


「まあ、こっちの話さ。とりあえずその話は一旦忘れようか」


 とりあえずこれ以上話が変な方向へ広がらないように話題を変える。


「でも、困ったな。自分の力が分からなければどうやってその魔王を倒せば良いのか分からないよ。

旅を続けて、力を身に付けるとか、気づくとかするってことなのかな」

「旅? 旅なんて出てもらっては困ります。大勇者様には一刻も早く魔王に会ってもらわなくてなりません!」

「いや、いや、旅と言っても魔王討伐の旅だから。その途中で力に気づく設定なのかな、と思ったんだ」

「魔王討伐の旅、というほど大袈裟なものにはなりません。

魔王の住む城は、ここから北へ3日ほどのところですから。私たちはすぐにそこへ向かうのです」

「えーーーーーーーー!!


 

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