もしも、あの日あなたにみつけてもらえなければ、この私はどんな女になっていたかしら?
晴れた綺麗な青空の、
休みの日、
通りすがりの教会から、
見知らぬふたりの
結婚を寿ぐ鐘の音が
リンゴンリーン、リンゴンリーン
と、聴こえて来た。
クリスマスに来ないかと
久しぶりに教会からの
招待状がきたのを思い出した
もちろん、行けないんだけどね。
でも、
それで思い出したことがある。
あなたに出逢うまえのはなし。
あなたのような人を探して、
いいえ、
あなたを探して、
私は、ずっと、ずっと、
ずっと、ずっと、ずっと、
この広い世界をさ迷っていたの。
まだ見ぬ《あなた》を訪ねて、
どんなパーティーにも顔を出したわ。
中には、すり寄って来る
魅力的な外見の、中身の軽い奴もいたわ。
心汚して、いい気になって、
私、家族に顔向けできないことも
やったかもしれない。
毎週日曜日には教会に行ってた
幼いころの私に会ったら、
蔑まれるわ。
どこにもいなかったわ、
私をくるんでくれるあたたかい毛布は。
どこにもいなかったわ、
私の疲れ果てた心の髪を
撫でて癒してくれる
優しいカタルシスは。
いま、
また教会で祈ることができれば、
私の罪を、消し去ることができるのでしょうか?
あなたが私をみつけてくれたとき、
私の心に芽生えた、あなたへの想い。
ここで私が使う「芽生え」って言葉には
意味はふたつあるの。
ひとつは、
恋心の芽生え、
もうひとつは、
悪意の芽生え、
あなたが、もっと早く、
もっともっと早く、
この私をみつけてくれてさえいたら、
私は、
ここまで堕ちることはなかったのに。
血を吐くほどの
悪意を向けて、
たいせつなあなたに、
あなたに言うわ。
あなたが、好きだわ。
でも、嫌いだわ。
あなたに、救われたわ。
でも、放って置いて欲しかったわ。
私のことが、好きだとどうして、
1番最初に出会ったときに
おっしゃってくださらなかったの?
あのころの、
綺麗なころの私なら、
あなたの「好き」を素直に受け入れられたのに。
こんな、バカみたいな恨みを、
あなたに抱くこともなかったのに。
堕ちちゃった。
いくら、あなたがそれでもいいと
言ってくれても、ダメだよ。
堕っこちちゃったの、あたしだもの。
あたしは罪を抱いて、生きて行くしかないんだ。
『自答』は、───こうね?
堕ちたことに、後ろめたさは感じながらも、
それを恥じる心も捨てちゃって、
ただひたすら自堕落で、
淫靡で、その日暮らしの毎日を
から元気で楽しもうとする
女になっていたでしょう。
もしも
あの日あなたにみつけてもらえなければ
この私はどんな女になっていたかしら?
この、
あなたへの嫌味にまみれた
問い難き『自問』に、対する…………ね?