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お花のこはるちゃん

作者: カモミール

私の友達のこはるちゃんは不思議な女の子です。

花を指さしては

「あのね、このお花は私なの。」

と言うのです。


小さな白いお花。いつから咲いていたのか覚えていません。

私はこはるちゃんと出会った日にこのお花に気がつきました。


「どうしてこのお花がこはるちゃんなの?」


私は不思議でした。

道路に近い場所に咲いてあるこのお花は、車が通るたびに風に吹かれて今にもちぎれてしまいそうです。

お花なら公園にも沢山咲いているのに、どうしてこのお花がこはるちゃんなのだろうと。


「だって、見つけてくれたから。」


そう言って、こはるちゃんは笑っていました。

私は意味が分からなかったけれど、こはるちゃんが笑ってるなら良いかなと思いそのまま二人で遊びに行きました。






次の日、私は風邪を引きました。

お母さんからお薬をもらって、苦かったけれど頑張って飲みました。

外は雨が降っていました。


「こはるちゃんは大丈夫かな。」


何故か分からないけれど、こはるちゃんが雨の中一人ぼっちで立っている姿が思い浮かびました。

こはるちゃんにも家があって、家族がいて、今頃はテレビでも見ているだろうとは思っても、よく分からないもやもやを感じました。


「...行こう。」


お母さんは台所で料理を作っています。

私は音を立てないようにそろそろと歩き、静かに家を出ました。

そういえば私はこはるちゃんの家が何処にあるのか分かりません。


いつも待ち合わせはあのお花の前でした。

初めて出会ったのもあの場所でした。

あそこに行けばこはるちゃんに会えるような気がして、傘をさして雨の中歩き始めました。






はたしてそこに、こはるちゃんはいました。

傘もささずに立っていました。


「こはるちゃん!」


私が駆け寄ると、こはるちゃんはビックリしていました。


「どうして傘をさしてないの?」

「持ってなかったから。」

「どうしてこんな雨の中外にいるの?」

「ここから動けないから。」

「どうして動けないの?」

「このお花も動けないから。」


ざぁざぁと雨は強くなっていきます。風も吹いてきました。

こはるちゃんは静かに道路を行き交う車を眺めていました。

その足元に雨粒と風とを受けて今にも折れそうなお花がありました。


「お花が折れちゃったらこはるちゃんはどうなるの?」

「分かんない」


こはるちゃんは寂しそうに笑いました。

私は傘を地面に置いてお花が濡れないようにしました。

そしてそのまま、二人とも何も言うこともなくじっとお花を眺めていました。






「あれ?」


目を覚ますと、私は何故か病院にいました。

お母さんによると、私は昨日家を抜け出したあと風邪が悪化して外で倒れてしまい救急車で運ばれてしまったらしいのです。

私の枕元には私の傘が置かれていました。


「こはるちゃんは?」


私は尋ねるけれど、倒れていたのは私一人だけだったようです。

もう風邪はすっかり治りました。


お母さんと手を繋いで病院から帰る道の途中で、寄り道させてもらってあのお花の場所に行きました。

そこにはこはるちゃんはいませんでした。

あのお花は折れてはいなかったけれど、力なく地面に横たわっています。


「お母さん、このお花どうすれば元気になるかな。」

「あら、どうして?」

「このお花は、私のお友達なの。」


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