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第七章~記憶~/決別と新しい道

病院を出て歌舞伎町に戻ってからが大変だった。

オーナーに事の顛末を伝えたが、既にオーナーは知っており、健と星矢の名前も歌舞伎町界隈の知り合いから聞いていたらしい。


「責任をとって俺は辞めます。」


健は言った。そもそも健は記憶が戻ったときからホストという仕事を辞めようと思っていたので、このタイミングが一番だということに気づいていた。オーナーは考えこんでいたが、健の売り上げという利益よりも、店のイメージを優先して、健を解雇するという運びになった。星矢も辞めるといいかけたが、健が制止して星矢はこのまま続けるという方向になった。


健は無趣味でお金を使うことなんてほとんどなかっただけにかなりの貯金があった。とにかく今はそれで繋いでいこうと考えていた。すぐに仕事を始めようという考えもあったのだが記憶が戻った健は出来る限り、綾の傍に居たいと考えていた。


そしてもう1つ健にはやるべきことがあった…。


「面会お願いします。」


健は警察署にいた。そう…理恵の面会だ。理恵は綾を刺した後すぐに警察に逮捕された。そして、起訴されて殺人未遂の罪で求刑5年の判決を受けていた。

話だけは聞いていたのだが、面会に行ってはいなかった。


「久しぶりだね…」

「……」

「元気してたか?綾の方は少しずつ回復しているけど、記憶をなくしたんだ。」

「綾…?死んでなかったんだね。よかった。」

「今日は理恵に聞いてもらいたいことがあってきたんだ。」


そうして健は過去のことを話した。驚愕していたが、少し安堵したような顔をして口を開いた。


「そうだったんだね…どこか掴めないって思っていたけどそういう過去があったんだ。綾ちゃんと渉がいい雰囲気だった理由もわかるね。なんかそれ聞いたらすっきりした。幸せになってね。」

「ありがとう。理恵も出てきたら幸せになれよ。」


そうして、また理恵は婦人警官に連れられて扉の向こう側へ姿を消した。


それから健は毎日、綾のところに行き、記憶をなくしてしまった綾を支え続けた。綾は最初、健のことが誰かわからなかったので怪訝な表情で話を聞くことが多かったが、今では心から笑えるようになってきていた。

退院してからも、綾は自分の家に帰り、仕事も健が働いていたキャバクラに一緒についていって理由を伝えて辞めた。そこからは毎日のように外でご飯を食べたりデートを繰り返した。

健は少しでも早く、綾の記憶が回復してくれればいいと考えていたが何をしても一向に記憶が戻ってこない。ただ、2人の仲はどんどん近づいていった。健はこれまでの2人の距離を埋めるような恋、そして綾は初めての恋をしていた。そしてしばらくして…2人は恋人同士になった。

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