第七章~記憶~/亀裂
4人で仲良く遊んだり飲んだりしている反面で星矢は気持ちがモヤモヤしていた。
綾と会う度に星矢は止められないくらい綾のことを好きになっていった。ホストも人間…人を好きになることはある。そして好きになる度に綾のことが気になり、綾は渉のことが好きだということが見えてくるのがわかる。
渉がいくら綾に対して好きになることがないとわかっていても、だからといって綾が渉を嫌いになるということはないだろう。かといって渉の悪口を吹き込んで綾を渉から離すということをしても、そんなことをすると星矢が嫌われてしまうことも考えてしまい出来ずにいた。そして、理恵が一人でお店に来た時や、一人になったところを狙ってそんな相談を理恵にしていた。
「理恵ちゃん、ここだけの話にして欲しいんだけど、俺もしかしたら綾ちゃん好きかもしれないんだよね…」
「えっ知ってるよ!」
「そうなの!?」
「綾と渉はどんかんだからあんまり気づいていないかもしれないけど理恵は分かってたよ!(笑)」
「そっかー…しってたんだ。もうそれって綾ちゃんも気づいてるかな?」
「んーどうだろーでも鈍感だから気づいてないんじゃない?伝えた方がいいよ!印象は悪くないはず!」
理恵はしっかりと相談に乗ってくれた。ただ、ダメ元で告白するほどの勇気は星矢は持ち合わせていないし、そもそも一か八かで告白するなんて多くは中学や高校までだろう。成人すると色々な知識が蓄積されて、確実にお付き合いが出来るという確信をもった上で告白する人がほとんどだ。だからこそ星矢も確信が欲しかった。
そんなことを考えて悩んでいたら、それを理恵が察して
「協力してあげようか?」
と言ってきた。星矢もそのことばを待っていたのかもしれない。その時に理恵のことを女神だと思った…が、続けて理恵が話し出した。
「実はね…」
の一言から始まった言葉は星矢が考えていたことと思い切り合致した。自分一人だけの考えじゃないかと思って内々にしてきた考えだったが、2人が感じているというのであれば話は変わってくるだろう。その話を聞いた後に星矢も自分も同じように思っていたということを理恵に告げた。
この話を2人がしなければ、きっと全員が幸せな人生になっていたことだろう。しかし、もう悪い歯車が回りだしてしまった。そしてもう、この歯車を止めることは誰にも出来なかった。




