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第六章~また君に初めての恋をした。~/渉の変化

浩太のDVから1週間が経った。

綾はあの日の翌日からずっとお店を休んでいたが、腫れも引いてきたことで出勤することにした。お客様には軽い検査入院をしていたということを伝え、お店にもそういう風に伝えた。

この家に篭っていた1週間は常に頭の中には健の存在が渦巻いていた。

当然、浩太にDVを受けたことでショックを受けて精神的に辛いという気持ちもあったのだが、そのことを上回るくらいもう健のことしか考えられないくらいになっていた。初めて男の人から暴力を受けて、これだけ早く回復することが出来たのも健の存在があったからだろう。


久しぶりにお店に出勤すると、理恵も出勤していた。


「綾ちゃん!大丈夫だったの!?」

「もう大丈夫ですよ!あっもし内容聞いてるならお店には秘密でお願いします!」


恐らく渉からの情報だろう。また後で詳しく説明しますと理恵に伝えて久しぶりにお客様に接客をした。ある程度時間も遅くなってきた頃、理恵が綾のところに来て話しかけた。


「綾ちゃんこの後にお客さん来るー?」

「いや今日はもう予定ないです!」

「そうなんだ!じゃあ早く上がってミラー行こ!」

「この前のお礼もしたいしいいですねー!行きますか!」


こんな会話をしてすぐに店長に伝え、店を早上がりすることにした。綾は正直なところ緊張していた。渉と星矢に会うのはあの日以来だ。お礼も言いたかったのは間違いないが、何よりも渉…健に会いたかった。理恵さんの彼氏であるということは理解していてももう自分の感情は止められなかった。

ミラーに着くと理恵の顔を見た瞬間、内勤の肩がいつもの掛け声を発する。


「おーきゃくさまご来店です。」

「いらっしゃいませ!」


この店のいつもの光景だ。理恵はいつもの指定席といわんばかりに席につき、となりに綾を座らせた。そして、内勤が席まできて指名を聞く。


「理恵さんは渉ですが、綾さんは今日はご指名は?」

「さすがに申し訳ないので星矢さんでお願いします。」

「申し訳ないって(笑)」


こんなやりとりを終えて、しばらくすると渉と星矢が席に着いた。そして星矢が言葉を発する。


「着てくれたんだありがとう!」

「いや本当にこの前はありがとうございました。」

「全然いいよーなー渉!」

「はい。むしろ大丈夫だった?」

「大丈夫だった!」

「ちょっと理恵のこと置いてかないでー(笑)」


なんて会話を楽しみつつお酒も進んで色々な話をした。綾は渉に色々と聞きたいこともあったが、理恵がいる手前、さすがに深く聞くことは出来ず、聞けることだけを聞くようにした。渉は相変わらず綾の質問にすごい色々と聞いてくるなと思いつつ、優しく返答していた。このときは渉は綾に対してちょっとしたストーカーのような感じを抱いていた。

ただ、その反面で、どうしてここまで自分のことを聞いてくるのかという意味では少し綾が気になる存在になっていた。


その日もホストの営業時間が終わればアフターでいつものバーに行く。

そこでもお酒を飲んでワーワー騒いで家路に着いた。そんな時間が楽しくてどんどん頻度も多くなっていき、たまには店外で出かけたりもした。

4人でディズニーランドにいったり、富士急ハイランドに行ったり…グループ交際のような感じになっていた。


そして綾と同じように理恵、渉、星矢もそれなりに楽しい日々を過ごしていた。

そんな関係性が3ヶ月程続くと、それぞれの気持ちも変わってくる。そもそも理恵は渉にとって本営をしていてもお客さんという感情しかもっていない。しかし綾に対しては違う…どんどん綾に対して魅力を感じており、記憶を失ってから初めて人を好きという感覚が生まれつつあった。


しかし、星矢が綾を好きだということも知っているし、理恵と綾が友達であるということも知っている。

そもそも店との関係で綾と渉が男女の関係になれば、当然それは星矢のお客さんなので爆弾ということになる。ホストは永久指名制…つまり、渉は綾を好きになることは出来ない。そんなことが渉の頭の中を巡り、想いを胸に塞ぎこんでいた。

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