第六章~また君に初めての恋をした。~/星矢の猛アタック
家に帰ってもゆっくり眠れるということはなかった。
あれは確実に健だ…もう一度会いたい。高校生のとき、健がいなくなってから押さえ込んでいた想いが一気にあふれ出してきた。ただ、今は綾には浩太という彼氏がいて、そして健には理恵という彼女がいる。
そんな狭間を行ったりきたりして迷いが出てきていた。
そんなときに携帯が鳴った。星矢だ。
『昨日はありがとー!綾ちゃんかわいいね!今度遊ばない?』
といういきなりの誘いだった。まぁ社交辞令だろうと思い軽い気持ちで『いいよ』と返した。すると1分も経たない内に
『えっ本当に?いつ空いてる?』
という連絡がきた。正直、渉が健だと分かったときから星矢の存在を忘れていたくらい興味がなかった。ただ、健に悪い印象を与えたくないという意味もあって星矢には気に入られようという考えが出てきてしまった…だが、それがいけなかった。
星矢は毎日のように綾に連絡してきた。
そして、仕事終わりに一度飲みに行くことになった。健が来てくれるかもしれないという多少の期待はあったが、待ち合わせ場所についたら星矢だけだった。
少し落胆はしたが、そんな表情は微塵も出さずに歌舞伎町を歩き出す。
お寿司をご馳走になって、またあの時のバーへいく。
お互いに仕事でお酒が入っていたことで話は思っていたより盛り上がった。そして、星矢は少しずつ綾のことを気になるようになっていた。
綾と星矢は水商売特有の薄っぺらい話でそれなりに楽しんでいたが、次第に朝方になってきた。
綾が眠くなっているということに気づくと星矢はおしみつつも帰ろうと促した。
「もうさすがに眠いよね!そろそろ帰る?」
「うん…ごめんすごい眠い(笑)」
「いいよ!こんな時間だからね(笑)」
そういって星矢は綾が財布を出す前に支払いを終えており、エスコートしてバーを出た。
バーをでてすぐ星矢が口を開く。
「今日、本当にありがとう。」
「いえいえー私も楽しかったよ。」
そういいながら空車のタクシーを広い手を振ってその場を後にした。
星矢さんが良い人だというのは綾も分かっていたが、それよりも健の存在がずっと頭から離れなかった。一方で、星矢はホストの寮に帰ってからも綾のことが頭から離れず、自分は綾のことが好きなのかと悶々と考えていた。
そんなことを考えていると綾からお礼の連絡がきた。本当に良い子だな…そんなことを考えつつ、返信をして眠りについた。




