第五章~再会~/再開と出会い
「おーきゃくさまご来店です。」
「いらっしゃいませ!」
理恵と綾が店内に入るとホスト全員の声がこだまして綾は驚いてしまった。しかし、理恵は慣れているのかそそくさとお店の内勤の方に連れられるまま席に向かっていった。
歩きながら知り合いのホスト達が「理恵おはよー」や「理恵ちゃん後で席つくねー」と話し掛けてくる。恐らく、理恵は相当な常連なんだろう。
そしてその店のVIPルームに通された。この店で一組しか入れないので早いもの勝ちらしいのだが、理恵がくると予約席になってしまうということをさっき理恵から聞いた。
「ねぇ綾ちゃん何のむー?っていうか何がのめるんだっけ…?すいませーん」
綾が口を挟む間もなく内勤を呼び出した。
「ごめんごめんこれから説明するよ(笑)えっと…初回の方なんですが、鏡月、割り物、ビール、カロリが飲み放題となっています。後、男本といってホストの写真がこちらにあるのですが、こちらから好みの男性がいれば席に優先的に付かせることが出来ます。どうされます?ちなみに理恵ちゃんも今日は飲み放題で大丈夫だからって渉さんが言ってたから飲み放題にするね!何飲む?」
と軽い説明を受けた。考え込んでいると理恵が口を開く。
「じゃあ、カロリのアロエと淡麗くださーい!」
「じゃあ私も同じで。あと男性は誰でも大丈夫です。」
とよく分からなかったので任せることにした。
煌びやかな内装とキラキラしたホスト達を目の前にして、少し気持ちが高まってたのだが平静を装ったフリをした。理恵はそわそわと誰かを待っているが、おそらく彼氏だという人だろう。その理恵の彼氏という人も見たかった。
しばらくすると
「失礼します。」
と渉が理恵の隣に座った。
そして綾は目を疑った。
「健…?」
思わず声が出てしまった。理恵と健は不思議そうに綾の顔を見ている。
「健?違うよーこれが渉!私の彼氏だよ!でも健って綾ちゃんが昔好きだった人だっけ?似てた?でもダメー!渉は私のだからね!(笑)それに本名も渉だから別の人だと思うよ!」
さすがに綾も他人のそら似であるということはわかっていたがあまりにも似すぎていてびっくりしてしまった。とにかく落ち着いて理恵を立てる為にも
「ですよねー!すごいかっこいいですね!」
「でしょでしょ!自慢の彼氏!」
気持ちを抑えてちらちらと健を見る。何度見ても本当にそっくりだ…こんなにそっくりな人間がこの世にいるかと思ったくらいだった。でも名前も違うし健も綾を初めて会うように対応してくる。
「綾さんって言うんですね。渉です。理恵と一緒にいつでも来て下さいね。」
こんなことを言われたら綾もあの健ではないということがわかる。最初は驚いたがお酒も入ってきて星矢さんという渉の先輩という人も楽しく話してくれてその場は楽しかった。終わり際に理恵がシャンパンを注文して、ホストのシャンパンコールというものも見れて人生経験としてはすごく充実した。そしてお店も閉店時間が迫ってきた頃
「ねぇ渉、この後って空いてるよね?どっかみんなでバーで飲もうよ!」
「あーいいけどちょっとミーティングあるから綾ちゃんと先にいつものバーに行ってて」
「分かった!綾ちゃんも時間まだ大丈夫だよね?」
「大丈夫です!」
「星矢さんも行くでしょ?」
「もちろん飲み足りひんからな!」
そんな会話をして綾と理恵だけ先にお店を後にしていきつけのバーというところに歩き出した。




