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この世界を救うにはリョナるしかない!  作者: 手厚いサービス
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ハーヴィー邸・地下牢

 ノーウェン辺境伯、神官キース、イェンナさん、そして俺はそれぞれ2階の部屋が割り当てられた。


 先立っての希望であったお風呂に入ることができ、豪勢な夕食の後に、自室に戻って明日に備えることとなった。




「オッケー、コンソール」


「ステータス ノーウェン辺境伯」


【ノーウェン・W・ルーズ 聖騎士 辺境伯 Lv52】

【魔法】初級治癒 中級治癒 呪い解除 光属性付与

【スキル】ブロック(盾) スラッシュ(片手剣) スラスト(片手剣)

【趣味】収集癖

【ステータス】HP:302 MP:140 SP:110 体力:130




「ステータス ハーヴィー子爵」


【ノグレス・O・ハーヴィー 魔導師 子爵 Lv31】

【魔法】初級火炎魔法 中級火炎魔法 初級風魔法 初級水魔法

【スキル】ブロック(杖) 足払い スラッシュ(ナイフ)

【趣味】地下牢に監禁

【ステータス】HP:158 MP:98 SP:103 体力:80



「ふむ」


 君子危うきに近寄らず。しかしながら、地下牢とは見てみたい。短い付き合いだが、ハーヴィー子爵は良い貴族だった。驕らず、気遣うことができる。そんな彼が闇を抱えてるのが想像出来ない。居ても立っても居られない。布団に潜り込み、明日に向けて寝ようとしても中々睡魔に襲われなかった。


 一通り思い悩んだ後、廊下に出てイェンナさんの部屋をノックする。


「……はい」


「すみません、イェンナさん」


 扉がガチャりと開かれる。


「ちょっとお願いがありまして、気になったことがあるので調べる為に1階にいます。もし俺が、あちらの時計で1時間ほど経っても戻らなかったら、ノーウェン辺境伯と1階まで来てくれませんか?」


「……分かりました」


「そんな怪訝な顔なさらないでください、肝試しのようなものですよ」

 

 そう言って扉を閉ざす。我ながら胡散臭い。保険掛けの段階でハーヴィー子爵の評判を落とすのは避けたかった。目撃者は少ない程、良い。



 

「サーチ」


 光らない。1階に降りてみる。


「サーチ」


  複数の光源が見える。一つずつ、見て回る。高価な品や怪しげな品はあるが、物があるだけだ。


「ここで最後か」


「サーチ」


 キッチンの食料箱の下が怪しく光る。箱をズラし、床の木板をズラすと地下へと続く階段が見えた。


 思わず唾を飲み込む。恐る恐る、一歩踏み出した。






 最初は真っ暗だった。曲がった地下への道を1分弱程歩くと、少しずつロウソクの炎が見えた。


「ここは」


 思わず口にした。


 突如ガサッと音が聞こえる。


 慣れない目で、音の方を見る。


 牢屋だ。それも鉄製の。


 奥の方に何かある。


 ジッと見続け、目が慣れるのを待つ。


 

 そう言えば奥さんは居たか? いや居なかった。


 推測だが30代のの子爵だぞ、そんなことがあるのか。


 使用人は居た、シェフも居た、だが子爵の家族は誰一人見なかった。


 目が慣れる。


 牢屋の奥にいる影が輪郭を帯びる。


 いや、だが、しかし。 


 牢屋の奥には、妙齢のネコミミ女性が怯えるようにして縮こまっていた。



「こんばんは」

 こちらを見てガタガタと震えているが返事は無い。


「今夜は月が綺麗ですね」

 これもまた無視だ。


「ここから出たい?」

 ピクリ、と反応がある。


「僕は明日には出発する。直ぐには無理だけど、子爵さまに頼んで見るよ」


「君の意思が知りたいんだ」


「「……。」」

 

 長い沈黙の後、啜り泣く声が聞こえた。


「たす…けて…ください」


「君、名前は?」


「すてり」


「ステータス ステリ」


【ステリ 町娘 獣人-キャット族- Lv9】

【魔法】

【スキル】痛覚耐性 毒物耐性

【趣味】

【ステータス】HP:3 MP:20 SP:20 体力:5




 沈黙と同時に気づく。来た道から足音がすることを。


 そして思い出す。ここまでは一本道で特に隠れる場所も無いことを。



「おや、ニシダ様」


「家探しはダメですよ。それでは盗賊になってしまう」


「盗賊?」


「それは私の所有物です。飢えて倒れてたところを助けました。その際に私の奴隷になることを了承したのです」


「あくまで善行の見返りだと?」


「その通り」


「では、俺に譲ってくれないか? 子爵の変態趣味については辺境伯には黙っておくよ」


「……」


 交渉とはいえ、博打だった。出会ったばかりの子爵の人柄がはっきりとは掴めてない。しかしながら子爵の嗜虐的な性癖と、豪胆ながら明るいあの中高年では相性が悪いだろう。奴隷とはいえ、高貴な人物が世間に言えない趣味を持っているなど誰も知られたくは無い、俺をここで始末すると『20年振りの神の使い』を自宅で失うという、言い逃れしづらい状況になる。リスクリターンを考えてさえくれれば悪くは無いだろう。


「分かりました。……好きに持っていきなさい」


「いや、今はダメだ」


「なんですと」


「イェンナさんやキースさんに怪しまれる。それでは意味が無いだろう」


「王都に行った後は、俺は自由行動になると聞いている」

 チラリと牢屋を見る。


「しばらくは王都を中心に活動すると思う。契約の儀式が終わったら、あんたの耳にも届くのだろう? 頃合いを見計らって俺にそいつを送り届けて欲しい」


「ステリ」


牢屋の隅から、声が聞こえる。


「はい」


「俺に惚れろ」


「「!?」」


「偶然会った俺にステリが惚れて、無理を言って俺の奴隷になったことにしろ」

 言いたいことを言い、子爵に向き直る。


「ハーヴィーさん」


「性癖というのは、抗いがたいものです。今回はたまたま見つけてしまったので、無理を言い、譲って頂きました。俺は貴方の事を優しく良い貴族であり、友人だと今でも思っていますよ」


 ハーヴィー子爵はこちらの目を射抜くように見た後、バツが悪そうに目を逸らす。


「俺に渡すまで、せいぜい彼女を大切に扱ってください」


「ステリ、また会えるのを楽しみにしている」


「あ……り……がとう……ございます」

 嗚咽混じりの声が響く。俺は黙って出口に向かった。






 2階に戻り、イェンナさんの部屋の扉をノックする。


 ガチャりと扉があく。眠そうなイェンナさんが現れた。


「取り越し苦労でした。おやすみの邪魔をしてしまい、申し訳ありません。今日はもう寝ますので、また明日。おやすみなさい」


「……おやすみなさい」


 寝ぼけたイェンナさんが近づいてきて、ホッペにキスをした。


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