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破棄されない婚約(真相)

破棄されない婚約のシュナイダー視点でほぼ独白です。上手く繋がっていなかったらごめんなさい!!!だが後悔はしない!!キリッ

「ミリアリア!!」



気を失い、腕の中に落ちてきた愛しい人を優しく抱き止め、必死に声をかける。しかし彼女は頬を紅く染めたまま深い眠りに入ったようだった。


「嫌・・・ではなかったよな?この染まった頬に期待してもいいだろうか」


ミリアリアを抱きかかえ直ぐ傍にあったソファーに横たえる。そして間近で彼女の寝顔に見入る。ココアのような濃い茶色の髪に吸い込まれるように口付けを落とすと、気のせいかほんのり甘い香りがした。俺は未だ熱を持った頬に手を滑らせ、その熱と柔らかさを堪能する。


「なあ、ミリアリア。目が覚めたらすべてを聞いてくれるか?もう隠し事はしない。だからもう、婚約破棄をしたいだなんて言わないでくれ・・・」


俺は柔らかな彼女の手を握り、早く目が覚めるように祈った。









ミリアリアが言った通り、俺とミリアリアの婚約は政略的なものも関係している。しかしそれはごく一部で事実は違った。単純に俺がミリアリアに一目惚れをし、婚約するなら彼女がいいと駄々を捏ねただけだ。だってそうだろう。初めての登城で周りは大人だらけ。だから不安気に父親にくっついていたのが歳の近い俺という存在を見つけるとほっとしたように笑ったのだから。その笑顔が可愛らしくて惚れない方が可笑しいというものだ。そんな此方の一方的な理由など知りもしない彼女は当然、国の為の婚約なんだろうと思うわけだ。そう思っていても構いやしなかったけど、まさかとんでもない勘違いから婚約破棄をしたいなんて言い出すとは思いもしなかった。あんな厄介な面倒事に付き合わされなければこんな無駄な苦労と労力をしなくても良かったんだよ。












そもそも、とある子爵家に養子縁組の話が挙がったことが俺とミリアリアの仲を壊しかけた発端なんだ。養子縁組なんてこの世の中特別珍しくはない。その子供が真実子爵家当主の血を継いでいるのなら尚更。しかし簡単に話が進まなかった原因が二つあった。まず一つ目、子供と当主の血が繋がっているということは当主が外で妻ではない女性と関係をもったということ。簡単に言ってしまえば不倫だろう。まあ別にこれも珍しいことではない。結婚している夫が他所で性を発散するなんてよくあることだ。娼館なんてものがあるのがいい例だ。平民の妻ならば怒り狂うこともあるだろうが貴族社会の中で育った令嬢にはある程度の火遊びは許容範囲のうちだと自然に教えられる。たとえ相手の女に嫉妬をしても貴族であるという誇りがギリギリのところで思い留まらせるのだ。しかしどうやら子爵夫人はそれに当てはまらなかったようで養子の話があがった途端怒り狂い泣き叫び・・・兎に角凄まじかったそうだ。それでも懇願し続けた当主に渋々と折れなんとか迎え入れることに頷いたという。そういえば城でたまたま会った子爵の顔にはガーゼが数ヶ所貼り付けてあり、それでも覆いきれない引っ掻き傷が見え痛々しかったなぁと、この話を聞いて思い出した。そして二つ目、その迎え入れられる側の子供が男児であったことだ。これに関しては大体の予想はつくだろうが、子爵家にはすでに跡継ぎとなるべく継子がいる。そこに半分とは言え正当なる血を持つ男児が入れば・・・見えてくるのは後継者争い。基本的に家を継ぐのは長子である男児であるが例外はある。その長子に家を継ぐ能力がない、或いは著しく欠如している場合、そして迎え入れられた養子がより優秀である場合だ。長子に継ぐ能力がなければ必然的に養子へと継承権は移るわけだが今回の場合はそういったことはないから通常通り長子が継ぐわけだ。だが問題なのはやはり夫人だろう。夫に浮気され子供までいたということで心身穏やかではないというのに我が子の継承権まで脅かされるとなると・・・子供を亡きものにしようと思わないか、そこが危惧された。浮気であれだけ夫である子爵を痛め付けたのだ。子供に冷酷な処罰を下す可能性は捨てきれない。俺も子爵も悩みに悩んだ。どうすれば命の危険性を伴わず無事に子爵家に入れられるか・・・そこで考え付いたのが女装だった。

女ならば何れは外に嫁ぐか修道院に入る為に家から出るから、命を狙われることはなくなるはずだ。なんとも安直ではあるが事実これは成功を見せた。子爵があと数年もすれば嫁ぎ先を見つけると夫人に言えばコロッと受け入れたそうだ。まあ数年我慢すればいいだけなのだから無関心でいればいいという結論に達したのだろう。実際は男だから嫁には行くわけではないのだが。


この話をミリアリアにするとたぶん疑問に思うだろう。何故王族である俺が一子爵家のゴタゴタに骨を折ったのかと・・・

まあ簡単に言ってしまえばその問題の男子が俺の友人であるからだ。どうやって平民の男子と友人になったかといえば、お忍びで城下へ降りた時に知り合い何故か意気投合、城下へ降りる度に一緒に遊び倒した経緯からいつの間にか友人と呼べる存在になったのだ。友人が困っていれば助けたくなるものだろう。それ故俺はこの件に尽力したのだ。まあ本人は日常生活を女装して過ごさなければならなくなったから不満はあるだろうが命が保証されるならばそれくらい我慢してほしいものだ。だが問題解決しただけでは心配だった故合間を見計らっては様子を伺いに行っていたのだが、それがまさかハージェスト家の影がミリアリアに伝えていたとは・・・しかも事実とは違うことを伝えたものだからミリアリアにあんなことを言われる羽目に!!あの時の俺の絶望を知らしめてやりたい!暫くは眠れなかったし食欲も湧かなくて、気を紛らわせるように政務をしていたら倒れかけた。城医や父上に理由を聞かれたが言えるはずがない。婚約者に婚約破棄されかけているなんて口が避けても!!折角公爵にも寸でのところで引き止めて説得し倒してミリアリアとの婚約も継続中に持ち直したというのに、父上に知られればどうなるか・・・暫くは揶揄の的になるだろうことは容易に想像がつく。

兎に角、あいつの問題もなんとか鎮静化してきたし、子爵とあいつと話し合い、貴族の庶子が平民に戻るのも如何せんということで来年から騎士学校に入学予定だ。まあ表向きというか夫人には隣国にでも嫁いだと吹き込めばすぐにあいつの存在など忘れてくれるだろう。漸くこの問題に決着がついたということで俺はハージェスト家へとやって来たのだ。
























「まあ、そうでしたの・・・・」

「信じてくれるだろうか」


目覚めたミリアリアに全てを話した。まるで物語のように出来すぎた話に、俺なら信じられないと嘲笑するだろうな。だけどこれが真実で、出来れば彼女には信じてほしい。縋るような気持ちで彼女を見つめると急に彼女が笑いだした。


「どう、したんだ?」


やはり信じられるはずがないと思っているのだろうか。


「ふふっ、いえ、あまりにも真剣に見つめられてしまい可笑しくなってしまったのですわ。そうですわよね、シュナイダー様は誠実で、隠し事はせずきちんと話してくださる方だったのに忘れておりました」

「ミリアリア?」


にこりと微笑む彼女に嫌でも期待してしまう。


「信じます。そしてごめんなさい、シュナイダー様のことを信じきれなくて」

「そんなことは気にするな。言えなかった俺も悪い。というか、言う必要はないだろうと勝手に判断してしまっていた」


シュンとする彼女に焦り自分の責だと謝罪する。


「それで、婚約の話はこのままでいいんだよな?」

「・・・(わたくし)で良いのでしたら」

「ミリアリアがいいんだ!!言ったろう?一目惚れだと!!」


彼女に近付き自分に引き寄せると小さく抵抗するものの明らかな拒絶がないことに安堵し少しだけ離れ彼女の顔を覗き込むと頬を紅く染め瞳を潤ませた彼女と目が合った。


「好きだミリアリア。生涯君だけを愛するから傍にいてほしい」

「はい。私もシュナイダー様の御傍に在りたいです」














この数日後、彼女に乞われ友人を紹介するも仲良くなりすぎて今度は俺が嫉妬することになることを、幸せの絶頂にいるこの時の俺は知る由もない。



後日談



「ミリアリア!!またあいつと会っていたのか!?」

「はい。私、あまり親しいお友達がいないのでいい御話し相手になっていただいていますの」

「だがあいつは男だぞ!!」

「でもドレスも着ていますし、女性のように可愛らしい方ですわよ?」

「いくらドレスを着ていようと年下で幼く見えても男には変わりないからな?」

「・・・シュナイダー様は仲良くされていますのに私は駄目なのですか?」

「え・・・いや、駄目というわけではないがしかし君は俺の婚約者なのだから・・・」

「?」

「・・・・っあいつにばかり構っていないで俺の傍にいてほしいんだよ!」

「・・・ふふっ、では今度、お忍びで城下に連れていってください。勿論、二人きりですわよ?」

「ああ、勿論だ!」



















とまあ、こんな風にいつの間にかミリアリアの尻に敷かれるシュナイダーであった。

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