27 méchant
叔父の言葉に理性を保ちながらも…やっぱり俺は、父のことが気になっていた。
様子を見に行こうと何度も思ったし、―――父を殺す夢を見たことさえあったんだ。あいつにとっては過去のことだけど、俺にとっては……決して忘れられない、いや、忘れてはいけないことだと感じていた。死んだ母のためにも。
俺は日本に来て、まずは日本料理の専門学校に通った。
そのとき初めて気づいたのは、俺の顔はすごく女性ウケが良いってこと。フランスにいたときもそれなりにモテはしたけど、日本ほどじゃなかったな。
学校を卒業して、修行に入った日本料理屋でも、その人気ぶりは衰えることを知らなかった……って、べつに自慢してるわけじゃないよ。できれば、璃子には隠しておきたかった話なわけだし。
俺は本来、真面目な性格だったけど、たくさんの女性に言い寄られるようになってから…徐々にほだされてしまって、気づけばただのプレイボーイになっていた。挙句の果てには、修行先の奥さんにも迫られてね…。さすがに断ろうとしたけど、大将に見つかって、俺は店を追われてしまったんだ。
奥さんは、俺が店を出てからも頻繁に連絡をとろうとしてきて、実はついこの間もここに来てた。あ、もちろん関係を持ったことは一度もないよ。
そんな情けない理由で店を追い出されたとも、簡単にフランスに帰るとも言えず…。俺は、自分の店を開くことにしたんだ。
あの奥さんみたいに執念深い女性は他にもいて、俺が店を追われたとき、“一緒に暮らそう”とか“結婚してほしい”とか、突然そう言ったことを言ってくる人もいた。自分でまいた種であることに間違いはないけど、俺はその女性たちと縁を切るためにわざと土地も売り物も変えて、縁もゆかりもなかったここでバーを開いたんだ。
勝手なことをしたっていうのは、自分でも痛いほどよくわかってるし、反省もしてる。でもそれ以上関わっても、お互い何も得しないのは事実だし、俺はあの時期の自分を捨てたかった。
―――それに、あのままじゃきっと…俺は、父と同じ道をたどることになっていたかもしれない。
それだけは、どうしても嫌だった。
こんな穢れた体で、真っ黒な心で、フランスには帰りたくない。祖父母や叔父に会わせる顔がない。俺を心から愛してくれたのは母と、あの人たちだけだから…。もう大事な人を、決して失いたくはない。
だけど日本にいても、父のところへ行って手を下せるわけじゃない。俺はこの半年、悶々としながら過ごしてたんだ。
働いてるときは全てを忘れて、仕事を楽しんだ。最初はうまくいかないことも多かったし、実際かなり厳しい状態になったりもしたけど、徐々にお店が軌道に乗り始めてきた。
―――そんなとき、君に出逢ったんだよ。




