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仁史が出張の日、久しぶりに遥子をランチに誘ってみた。
今日はお弁当作りもお休みということで屋上には行かず、ちょっとリッチにカフェで日替わりランチを注文。今日は五穀米カレーらしい。
「璃子とランチなんて、久しぶりだねー!加藤さんとはうまくいってる?」
「もう…、誘ってくれなくなったのは遥子のほうでしょ。遥子こそ、その後どうなの?前に言ってた“あの人”とか」
私が尋ねると、遥子は可愛らしく口に指先を当てて目線を落とした。…これは彼女の“「何か」があったから聞いてほしいサイン”だ。わかりやすすぎる。
「…大阪の彼と陶芸教室の先生、どっちとつきあってるの?」
「そう!ちょっと璃子、聞いてー!」
ああ、もう。話がかみ合ってない。
女子という生き物は、自分の恋バナで盛り上がってしまうと止まらなくなる。特に遥子のような肉食系は、人の話や他のあらゆる物をそっちのけにして喋り倒してしまうのだ。
まあ、私みたいに経験値の低い女は、そういった話を糧にしてたりするんだけれど。
遥子の話を簡単にまとめると、陶芸教室の先生と仲良くなりすぎてしまって、彼氏のことがそっちのけになっていったから、彼氏の方から別れを告げられたらしい。でも彼氏の方も気持ちが薄れていたから、いわゆる自然消滅という感じなのだとか。2人とも合意の上での別れというのが、私にはいまいちよくわからない。つきあってた人と別れるのに、どっちも辛くないなんて…そんなこと、本当にあるのだろうか。
「それで、いまは先生とつきあってるってこと?」
「そうなんだよねー。やっぱりさ、いつでも一緒にいてくれる人が1番だってわかったよ。離れてるけど彼氏がいるって…心の支えにはなるけど、すぐには会えないし。遠恋なんてするもんじゃないね」
カレーをお上品に食べながら、遥子はハッとして私を見た。言ってしまってから気づいたらしい……。
私と仁史が、もうすぐ遠距離恋愛になってしまうということに。
「でっ、でも、璃子は大丈夫でしょ!なんたって、相手は加藤さんだし!璃子は浮気なんて絶対しないだろうし、加藤さんも璃子のことすっごい大事にしてるしさ」
「いいよ、気遣わなくて。…私も、わかってるから。もしかしたら、だめになるかもしれないって。ちょっとずつ、覚悟していってるから」
「あたし、応援するよ!璃子と加藤さんが遠恋でもうまくいくように!」
「えー?ありがと」
“一緒にいてくれる人が1番”。このときの遥子の言葉が、なぜだか頭を離れなかった。




