表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ma chérie  作者: 華百合
10/29

10 une pluie

 息をひそめ、高橋くんが走り去るのを待つ。バタバタッという彼の大きな足音から、相当いらだっている様子が窺えた。

「璃子、大丈夫!?」

私を建物の陰にかばってくれたのは、拓海だった。

「どうして…?」

「ちょっと買い出し行ってて、帰るとこなんだ。そしたら、璃子が男に追いかけられてるみたいだったから…。もう、焦ったよ」

困ったように笑う拓海を見ていると、なんだか私まで笑顔が込み上げてきた。こんな状況なのに、思わず笑ってしまう。

「よかった、元気そうで」

「…え?」

「最近、お店に来てくれなくなっちゃったから、心配してたんだよ。何かあったのかなって」

「あ…、ごめんなさい。仕事が忙しくて」

申し訳なさげに答えると、彼は深く追求せずにただ微笑んでくれていた。

「そ?なら良かった。…って、今は全然よくないか。一体、誰に追いかけられてたの?」

「会社の同期。うちの場所も知ってるし、最近ちょっと、ストーカーされてるみたいで…」

「えっ!ストーカー!?」私はなるべく声をおさえてるのに、拓海の驚いた声がそれを台無しにしてしまう。

「ちょっ、拓海、声大きいよ…」

「あ、ごめん…。すぐ帰るのはまずいよね…。とりあえず、うちの店においでよ」

「うん…。ありがと」


 途中で雨が降ってきて、2人で濡れながら走った。お店に着くころにはびしょびしょになってしまっていた。

「ちょっと待ってて、タオル持ってくるから」

「あ、うん…」

拓海がバタバタと奥へ入って行くのを見送って、濡れたトレンチコートをそっと脱いだ。ぽたぽたと水が滴ってしまうから、外側を内にして折りたたむ。

ここへ来るのも、3週間ぶりだな。

たった3週間しか経ってないのに、すごく長い時間が過ぎたように感じてしまう。

 「おまたせ!これ使って」

「ありがとう、拓海」

拓海が持って戻ってきたのは、バスタオル1枚。それを私に手渡して、自分はエアコンを操作しようとカウンター奥に入っていった。

拓海の髪や肩も、びしょ濡れなのに…。

「…拓海も、ちゃんと拭かなきゃ」

「え?ああ、俺は大丈夫だよ。すぐ乾くし、これくらいの雨慣れてるって」

「だめだよ。濡れたままでいたら風邪ひくよ」

足音を立てずに後ろからそーっと忍び寄り、タオルを頭からかぶせてあげると、「ぅわっ!」って叫びながら彼は楽しそうに笑った。

ふと目が合って、お互いになんとなく逸らせなくなってしまう…。拓海の綺麗な灰色の瞳に見つめられて、私は胸が高鳴っていくのを感じた。

「……璃子」彼の口から零れた声が、耳に心地よく響く。


―――私、やっぱり…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ