28話目! 緊急連絡?
マリアが弟の魔力反応のあった魔族領に旅立って二月が経過しました。
その間、私はというとナギ君や上位官僚である魔族の方に助けられながら、魔王の仕事を片付けていました。
「せっかく魔石いっぱい貰ったのに、魔具が作る暇が無いなんて……」
「そりゃしょうがないだろ?リリアは今現在マリア様の身代わりの魔王として仕事を片付けてもらわないと、色々困るんだからな」
「だからってさぁ、自分の時間までなくなるなんて聞いてないよ」
「魔王だからしょうがないんだ。マリア様が戻るまでは我慢しろって」
グヌゥと唸りながらも渋々、山のように積み上げられた領内の書類に目を通し、不明な点があるとナギ君たちに質問し処理していく。
「リリア殿。マリア様の魔具から反応がありました。通信魔具のようです」
執務室に入ってきたのは、以前私が黒ランクの魔物を倒すところを見るため城周辺の間引きする際に、ともに行動した兵士で、上位官僚以外で私が変身できる事を知っている人です。名前はたしか……
「あっ、ギドさん。態々ありがとうございます」
ギドさんから通信魔具を受け取り直ぐに開く。すると、前回の通信から一月ぶりに聞くマリアの声が届く。
「リリアかい?通信が遅れてすまないね。少々厄介事に巻き込まれてねぇ、力が封印されてたんだよ」
「ちょ、それ大丈夫だったの?」
「それがねぇ、本来助ける立場である私ともあろう者が愚弟なんぞに助けられる結果になっちまったんだよ」
「え?リーベルト……さんと会えたの?」
「あぁ、だがね、愚弟ときたらこの国のサキュバスの女王にゾッコンになっちまっててね。連れ帰るにはまだ時間がかかりそうなんだよ」
ここで初めて私は、目的の場所がサキュバス達の国 《ネイトメーニア》だったと知りました。この国は女性が9割を占める国で、他国から種族問わず異性というか男性を攫い、種族特性の魅了で引き込むのです。
リーベルトも女王の魅了にやられ、ゾッコンなのでしょう。でも、厄介事からマリアを助け出すくらいの理性は残ってたんですね。そこは評価しても良いと思います。
「それでね、リリア。私は今から若作り婆……女王ナミカミシマに会い、愚弟を返してもらおうと思っている。だけど厄介な能力を持っているんだよ。そこでリリアに頼みがあるわけさね」
サキュバスの女王の名前を聞き、違和感を覚えましたけど気のせいよね。彼女がこの世界に居るはずが無いし、私が知る彼女はそもそも女王をできるような性格じゃないもん。
「頼みって?」
「頼むといったら魔具しかないだろ?内容は……」
「了解。最近魔具を作る時間が取れなかったけど、マリアからの要請なら優先しても問題ないよね」
「頼んだよ?完成したら転送してくれるかい?」
「分かった。できるだけ早く作るね」
マリアとの通信を終え、近くで聞いていたナギ君や官僚さんに許可を得て早速、魔具の制作に取り掛かる。私の代わりはナギ君がやってくれますし、今のうちに頼まれた物以外の売買用魔具も造っておこうかな? 忘れがちですけど、亜空間にあるお店の店番のヒロミもそろそろ魔具の在庫が減ってきたみたいな事言ってたし。
マリアに頼まれた魔具制作は1日で終えました。身につけることで精神耐性を付ける魔具で、既に精神に異常を与えられている場合は使用した魔石のランクにより弱化される効果があります。当然使用した魔石は黒ランク8の魔石ですので身につけてさえくれれば1時間程度で異常を取り除くことができるはず。
流石に薬のように即効性は無いですけど、それはしょうがないです。というか、薬も作ろうと思えば創造魔術で作れるんですけど……精神異常に深い理解が無い私では、効果の低い物しか作れないのです。
結果、薬品を作るうちに魔族領に生える薬草類の品質が高い事が分かりました。品質が高いからどうなの?といわれても困るんですけどね。私の創造魔術は対象に関して理解が低いと材料の品質が良かろうと悪かろうと、並程度の効果の物しか作れませんから。
商品用魔具に関してはヒロミから金ランク魔石などを転送するようにお願いしておいたので、良いストレス解消になりました。
そんなこんなで作り終えた魔具と幾つかの精神安定剤らしきものをマリアに送ると、待ち構えていたかのようにナギ君が現れ、私は執務室へ連れて行かれてしまいました……。魔具をもっと作りたかったのにぃぃ!