21話目!(ナギ君の視点だとおもうのであります)
俺、葛城凪がこの世界に来て3年が経とうとしていたある日、3年前に俺を助けてくれた魔王……マリア様が戻ったと聞き、俺はつい2日前に起きた事件を相談すべくマリア様の部屋に急いだ。
「なんだい?騒々しい。かえっていきなりアンタには会いたくないよ。帰っとくれ」
内容は兎も角マリア様のお声で間違いない。というか俺ってマリアさまに遭いたくないっていわれるほど失礼な事をしたっけか?
というかこんな俺自身の事なんてどうでもいいんだよ。それよりも相談しなくちゃいけないことを早く知らせなくては。
「も、申し訳ありませんがそれはできかねます!火急の用件がございまして」
マジで火急の用件なんだってば、国の一大事だから早く話をきいてぇぇ。と叫びたくなるのを我慢していたがマリア様の返事は素っ気無いものでおっしゃられた言葉は……
「イヤだよ?私は魔王をやめたんだからね。そういったのは弟に任せればいいじゃないか」
確かにそうなんだけどね?それができないからマリア様のとこに来てんのっ!
「それがですね、弟君……リーベルト様が2日前より行方不明となっておりまして……」
「……な、なんだって?リーベルトが行方不明になるなんて何の冗談だい」
ふぅ、ようやく大事な案件のとっかかりを伝える事ができたぜ。
しばらくするとマリア様は部屋の鍵を開けてくれたので俺は一礼をして入室し、マリア様の以前と変わり……ある巨にゅ……じゃなかった。お顔を確認しほっと一息ついた。
「詳しく話しな、カツラギ。帰っていきなり厄介ごとに巻き込まれるなんてね……ツイてないさね」
「申し訳ありません。リーベルト様が行方不明になったときのことからお話しますと……」
俺はリーベルト様が領内の書類作業中に見たことのない魔法陣と光に包まれ、おれが目を開いたときにはもうその姿はかき消えていた。もちろん俺は城の中あの魔術師をあつめ魔法陣の痕跡などを必死に調べたさ。
だがなにも分からなかった。かすかに魔力の残滓はあるがそれを大元まで追跡し断定する事はできなかったのだ。
「そうかい、考えられるとしたら魔族召喚の儀……そこに居るリリアのように異世界に呼ばれた可能性もあるねぇ」
さすがマリア様、パッと原因になりそうな現象について口走りその後に俺にとって戦慄の走る言葉も紡がれた。
「は?異世界から……ですと?」
マリアが指差した方向に向いた俺が懐かしい顔を見たのはそのときだった。
俺は異世界という言葉に過剰気味に反応してしまった。というのも冒頭で触れたが俺はこの魔王城で厄介になる前は極めて普通の高校生だったのだ。
幼稚園の時から中学の3年まで一緒だった幼馴染もいたがソイツは中学校の帰り道で交通事故らしきもので死んじまった。俺はソイツが死んだと聞いたとき、心に穴が開いたような気分になった。
幼いころから一緒にいてなんだかんだで年頃になっても遠慮なくかつ仲良く話をしていられた只一人の女子……と言ってもいいだろう。流石の俺もソイツが死んだ後から数日はショックで学校に行けなくなった。
葬式の日にも参列した時あいつの家族は涙でほほを濡らし、たった一人小学生だったアイツの弟も姉が死んだ事を理解できず「おねぇちゃんはどこに行ったの?」などという言葉が今も耳から離れない。
だがまあそういうショックというのは意外と時間が癒してくれるわけで(もちろん本人の家族は別だぞ)俺は中学を卒業し、家に近い場所にある高校に普通に進学し、1年生になって2ヶ月ほど経ったある日突然教室が光に包まれ俺はこの世界の暗い森に放り出された。
光が収まる前に話していたはずのクラスメイトの姿はなく、周りにかんじるのは嫌な気配となぜか持っていた学校のカバン。なかにはアンパンやヤキソバパンなどが入っていたが俺はそんなものに気をとられている場合ではなくなっていた。
「ギャオォォォン!」
「どわぁぁぁぁ!」
聞いたこともない大きな声に驚きつい大声を上げてしまうとその声に導かれたのか8本の腕を持ち体がなにか雷らしきものをバチバチと纏っている熊や、紫色のいかにも毒がありますよーっていう感じの粘体生物……スライムっていうんだろうか?
といった生物が森の奥からやってくるのが見えた。というかあいつらの目は俺の方を見ていて(スライムに目はあるのかは不明だけどな)こっちに近寄ってきている。
「マジかよ。日本で普通の熊も見たことないってのに、来てそうそう出会ったのは8本腕の巨大熊とかシャレにもならないぜ……」
誰にともなく呟く。逃げようにも腰を抜かしてしまい動けない体たらく。
「グッホホッホホ」
流石にスライムより熊のほうが移動速度は速くすぐに俺の元へ到達する8本腕の熊。
そのたくさんの副腕が一斉に持ち上がり俺に振り下ろされた!
ズッズゥッゥン……。
「!?」
だが来るはずの衝撃が来ない。何か起きたのかと見てみればその熊は俺の目の前に倒れておりその頭頭部はどこかに飛んでいったのかなくなっていた。
「人族がこの森で何をしている?」
そう声をかけてくれたのがマリア様だった。俺は必死に状況を説明したがマリア様は対して興味を示さなかった。だがせっかくだから街まで案内してやる という言葉を聞き、安心できた俺はこんな物騒な森にいるよりは絶対にマシだと思い込み、マリア様についていきお城でマリア様の手伝いという形で職を得て、今は魔王城の参謀というか魔王様の補助をしている。
俺が城に入って1年と少し後には突然マリア様が王位を辞して弟に譲ると、その足でさっさと城を出て行ってしまった。おれとしてはマリア様に連れて行って欲しかったのだが、今の魔王で親友でもあるリーベルトに頼まれ残ったのだ。
マリア様が出て行かれてから2年後の今日、マリアさまが最高の?タイミングで帰還してくれたので冒頭に戻るわけだが……。うん回想って同じ所ループするよなぁ。
そこまで思い返したところで回想に入る前を思い出して欲しい。そう、懐かしい顔を見たというアレだ。
俺の目の前には俺の記憶では4年前に死んだ幼馴染のアイツ(ソイツ)……というか理亜の姿があった。
そりゃあもう驚いたぜ。見れば見るほど瓜二つ……っていうかマジでこれ本人じゃね?てことは本人の幽霊なのか?本人じゃないのかって思っているのに幽霊なのかっておかしいのか?うん、わけがわからんな。
といったまたしても無限ループに陥るわけで……ようやく出た言葉がこれだ。
「え!?なんで??お前蔵咲だよな?」
理亜らしきやつはおずおずと手を上げわざわざ俺が嫌がる言葉で返事をしやがったんだ。
「や、やっほー。ナギ君。久しぶり?」
昔からナギって呼ぶなっていってのに、またコイツ懲りずにナギ君とか言いやがった……。その上疑問系に疑問形で返すなよ……ってあれ?
やっぱりコイツ本人だよな。そもそも偽者だったらナギ君なんて呼び方しないからな……。
それを再確認する為にもこう返さなくてはな。
「ナギっていうなあぁぁ!」
その後はマリア様に色々聞かれたさ。理亜(いまはリリアと名乗っているらしい)のことをな。
もちろんメインである親友であり魔王でもあるリーベルトの事も話し合った結果、領民の不安を抑える為、マリア様に一時的にでも魔王に戻らせる為になんと理亜があの森の凶悪なモンスターを倒して見せるとか言い出しやがった。それにアイツの冒険者ランクがなんと金の11らしい。
冒険者ランクが金11というとギルドに信頼され、何らかの偉業やら利益をもたらせた場合になれる上級称号だもんな。一体どういった生活してきたのか非常に気になるぜ。
金11になれた理由はあとで理亜から直接聞けた。なんとこいつ転送装置という便利な移動魔具を作り都市間移動を可能にしたらしい。そういうことなら俺のためにも是非この魔王城にもおいてもらわなくちゃな。只ではないかもしれないけど理亜は昔から腹芸は苦手だから言いくるめてみようと思う。