16話目! 魅力爆発?
転移装置をアイゼングラッドへ設置してから4ヶ月経過し、私がこの世界に転生して1年と2ヶ月ちょいが経過しました(中途半端ですよねぇ)。
まあこの4ヶ月も私が素材を買い集める為に都合のいい町を優先して転移装置を取り付け、それに使う魔石を採りにいく等の用事がたくさんありました。
とくに昔行く予定でした《カストゥール》ですけども、この街は水の街として綺麗だったので一度視察に来た時に「絶対にここに転移装置設置しよう」と決めたほどのすばらしさです。
ただ私が来たときはこの街にもその水に関する事で街にとっては死活問題が起きていたのですが今回はそちらを思い返す事にしましょう。
「うわぁ。ここがカストゥールの街……綺麗な所~」
「そうだね~。リリアちゃん。でも綺麗だけど、水路が多いからリリアちゃんみたいによそ見してたら落ちちゃうよ」
「私はそんなへまなんてしないよ~」
「どうかなぁ?地球にいたときも結構そそっかしかったよね」
などと言ってたらやはりこうなりました……。
ガツッ!………バッシャーン………
「ひ、酷いよぉ。りリアちゃ~ん!」
「ご、ごめんヒロミ。でも私の代わりに落ちてくれてありがとう?」
「落ちたくて落ちたわけじゃな~い!!」
じつは会話中、綺麗な魚を発見しお腹がすいたなぁなど思いながら私が水路を覗き込んでいた時に後ろを馬車が通りました。ですが道の幅が狭かったらしく私と馬車がぶつかったのですよね。そのぶつかった箇所の説明はどういえばいいでしょうか。
馬が引いてて台があってその上に御者さんが乗りますよね?その後ろに荷や人を乗せるスペースがあってそのスペースの外側に車体のバランスを取る為かちょっと長い目の棒が飛び出ていたんですよ。
その棒の部分が私に当たり私は水路に吹き飛ばされたのですけども、吹き飛ばされた衝撃を受けた瞬間私が持っていた魔具 《入れ代わっクン!》が発動して近くにいた人 (このときはヒロミ)が水路に落ちつつある私と馬車を避けた後、道の中央にいたヒロミの位置と入れ変わってしまい私が落ちるはずだった水路に代わりに落ちたと言うわけです。ちなみに場所の速度的に普通の人が当たってたら骨くらい砕けてるかもしれません。私は金ランクのモンスターの攻撃も一度は受けきる魔具で守っていましたので問題ありませんけどね。
説明、分かりにくいですか?要するに落ちる心配が無かったヒロミが魔具発動のせいで身代わりとなり水路に落ちたって事ですけども……頑張って理解し……無くても良いですので先へどうぞ!
【創造魔法】で自作の魔具【かわっくん】を強化し、5秒足らずでずぶ濡れのヒロミを服ごと乾かした後は、転送装置の設置を依頼した町長さんにお会いし契約を纏めました。
転移装置の設置自体は滞りなく終わったのですが、その後町長さんから私が金ランク冒険者である事を知っていたのか一つの依頼を聞かされたのです。
聞くところによると、町の水路は本来《セントバレイル湖》というカストゥールの北西20kmにある湖から何年もかけて引いてできた街とのこと。もっと近くに街を作ればよかったのに……と思ったがその辺は当時の農地やモンスターの分布状況によりダメだったらしいです。
本題ですけどもその湖から引いている水路のどこかに変なモンスターが何かが住み着き水路をふさいでいるのだそうです。今現在はまだ水が流れているがもう一月も後には水路は枯れ果てるだろうとのことでした。
「私にしたい依頼とは、その原因の排除と言う事ですね?」
「その通りです。お礼の方もしっかりさせて頂きますのでお願いできませんか?」
「原因が珍しそうな魔物でしたら魔石と素材を頂きますけどそれでよければ金貨20枚で引き受けますよ?」
「!?そ、そんな安くてよろしいのですか?」
「勿論他にも条件がありますよ?簡単に言うとカストゥールでの出店・販売許可と言った所もありますけど……」
「その程度でよろしいのであればどうかお願いします」
依頼を引き受けた後は私とヒロミは水路を遡りその水路を塞いでいるモンスターを探しましたがいませんでした。水の流れも順調で滞っているようには見えませんし、この状態で枯れ果てるとはどうも考えがたいのです。
「どう思う?」
「リリアちゃんがわからない事を私に聞くの?普通に考えて無理だよね」
「だめもとで聞いたのよ。もしかしたらいい案があるかもしれないじゃない?」
「ひ、ヒドい……」
「とりあえず《セントバレイル湖》まで行って調べてみるしかないわね」
そのまま水路を遡り、途中の森を抜け《セントバレイル湖》がある山にたどり着いた私達は、早速湖中探索をするべく空間魔法のアイテムボックス内から水着を取り出しました。
「……えっと何で水着が入ってるの?」
「ヒロミこそ、何を言ってるのよ。水の調査なんだから水着があるのは当たり前でしょう?それともヒロミは全裸で水に潜るつもりだったの?ヒロミがそれでもいいならいいけどね」
「えぇ~?私にそんな趣味はないよ!私が聞きたいのは依頼を受けたのが今日なのにいつの間に水着を準備したのかってことぉ!!」
「そんなの大分前に決まってるじゃない?せっかく無限に入る空間魔法があるんだから全てに対応できるように準備するのは当たり前でしょう?」
「……全てに対応する気満々なリリアちゃんの用意周到さが怖い……」
「ほらほら、わかんない事言ってないで着替えて着替えて!」
「うん……って何で私のがスク水なのっ!?リリアちゃんのは大人っぽいビキニなのに!?」
「気にしないで?」
「気にするよぉぉぉ!!」
その後もブータレ続けたヒロミの根気(訴え)に負けた私は仕方なくフリル付き(パレオじゃない)の紐水着を渡しましたよ。それについても文句を言うのでやっぱ全裸でいいわね?と言いながら水着を取り上げようとしたら観念してくれました。
一応私達は年齢的には高校2年生相当ですが、この世界の食品素材の質が良いのか見た目的にはいい感じに成長しているので先に述べたヒロミの水着姿は胸部が自己主張していますので地球では痴女扱いされる事間違い無し!なのですよね。
わ、私のですか?と、とても人様にみせられるようなものでは……。断じてヒロミが羨ましくなったわけじゃないんですよ?
《セントバレイル湖》の中にも魔物はいましたが水質に害を及ぼしそうな個体はなく、湖底の水源も魔具で調べましたが異常無しでした。
「ん~?全く害になりそうな原因が無いわよねぇ……」
「うん。モンスター自体もまあこの辺の平均くらいだし、問題ないよね」
一応その日から丸一日かけて昼・夜・朝・昼と水質調査や湖底探査を行い、異常が無かったので調査用魔具はそのまま湖底に沈めておき、私達はいったん町に戻り町長に調査報告を済ませる。
「い、異常がないですと!?そんなはずは……」
「私達としても丸一日とはいえ張り付いて調査をいたしましたので間違いないと断言できますね。となると問題があるとしたら《セントバレイル湖》から街までの間ではなく町の中に異常があるということになりますね」
「………そうか……ではすまないが町の中の調査もお願いするとしよう」
「分かりました」
そういうことで今日は水路の中を水着で泳ぎまわる私。勿論調査目的なのでただ泳いでいるわけじゃないんです。ヒロミは流石に街中ではエッチな水着は着れないと言うのでお留守番ですね。
町の男性諸君残念だったね~。
町の中を縦横無尽に多数存在する水路を端から端までくまなく調べ続ける事1週間。あるいみ意外な場所から異常が発見された。
「え?町長さんの家の地下水路から異常反応が出てるの?」
「そうなのよ。ただ町長さんは自宅の地下水路には調査の為でも人を入れたくないといってるから困ってるのよねぇ……」
「だね。逆に隠し事してますって言う感じがプンプンするよ?」
「だからちょっと町の工事をしようと思うんだ」
「……もしかしてアレ使うの?」
「うん。私としてももう1週間もここに滞在してるしそろそろ帰って溜まってそうな仕事片付けたいし。それにさ、怪しい場所が分かったのに調査しないと言うわけにも行かないでしょう?」
「そうだね。じゃあ私はアレを使う準備しておけば良いのかな?」
「あ、準備は【創造魔術】のおかげで大分短縮できてるから、町長さんの目をひきつける役割をお願い」
「ち、町長さんの目をひきつける?……どうやって?」
「そんなの決まってるじゃない。水着よ、み・ず・ぎ!!」
「い、イヤよぉぉぉぉ」
「だめ!絶対!早く仕事を終わらせる為にも着てもらうわよ!」
「ヒィィィーン」
その翌日の昼、紐水着で水路を真っ赤になりながら泳ぐヒロミの姿が一瞬にして広まり多くの男性が水路に集まったと言う。勿論町長さんもなんだかんだ言ってもまだ現役らしく鼻息荒くして見に行きましたよ。
町長さんが水路についた頃ある一区画が7mくらいの壁に囲まれ、外部からの進入が不可能になったのですがそれに気づいたのは水路の件に興味のない女性とそのことを知らない男性くらいである。
町長さんが留守になった隙に私は、隠遁補助魔具と罠感知強化魔具を身につけ町長宅の地下水路を目指します。地下水路の入り口は魔獣の皮製絨毯で隠してあったので入り口部分に当たる所だけ切り取り地下へ。この辺は後で【創造魔術】で補修しておくつもりなので問題ありません。
地下水路にはなにやらたくさんの水気が充満していました。水気とは文字通り水の気配なのですが通常の水気とかの意味ではなく水に属する魔獣、精霊などをさします。
「あの町長さん、見た目に反してあくどい事してるのね。流石にこの状況はイラッと来るわ……」
地下水路には水の精霊種(中級)であるアクアエレメント、同じく水の上級妖精のブルーフェアリーなどが魔術枷をつけられたうえその体をぼろぼろになるまで痛めつけられていたのです。
どうやらあの町長さんはドドドSらしく、町の住人を傷つけてしまうと自分の立場が危うくなるので水の街の綺麗な水路に集まった精霊たちを何らかの手段で捕まえ、この様に痛め付けて愉しんでいたのでしょう。
「とにかく枷から開放してあげないと」
すぐに私は空間魔法内から魔法金属を取り出し【創造魔術】で魔法の解除鍵を作成し精霊たちの枷を取り外していくと、自由になった精霊たちが何か言っていたのですが、その言葉を理解する事はできなかったので【変身】を使い精霊たちと同じ姿になると少しだけ言葉が理解できました。
「ワレ……ハ、ダイセイレ……ノミコ。タスケ……レテ……カンシャ……」
よく分からなかったけどこんな感じの事を言ってた気がします。精霊種の言葉も習得しておいた方が楽しそうなので今度はこの辺の練習してみよっと。
全ての精霊を開放し、地下水路から出ると町長の家の周りというか壁の外が騒がしかったので魔具 《キケールさん》で音を拾ってみたところ、既にこの場に町長が戻ってきており騒いでいるようですね。
「ヒロミったらもうちょっときわどい引き止め方できなかったのかしら」
と、こっそり毒を吐いていたのはヒロミには内緒です。
「……と言う事で事件は解決しました。原因は町長さん、貴女の拉致していた精霊種の怒りです」
「……お前達が私をはめる為に地下水路にその精霊種とやらを引き込んだのだろう!」
壁の騒いでいたおかげでたくさんの町民が集まった町長の家の前で私は町の水の異変の調査結果を話していた。
するとこの町長、言うに事欠いて私達のせいにしてきましたが、私達が来る前より異変があったことは街の人が知っていたため、その意見は受け入れられず町長は、転移装置でアイゼングラッドからやってきた騎士団に連れて行かれました。
後日聞いた話によると精霊を捕まえた道具は流れの商人から購入したということだけが分かりました。
「うーん、ただ働きになっちゃった……私の一週間が……」
「ふふん!リリアちゃんいい気味~!私にあんな事させるから天罰が下ったんだよぉーだ!」
「くっ、ヒロミぃ~!」
「キャーキャー!」
アイゼングラッドの自宅で全力で逃げ回るヒロミの姿と、それを追いかける私の起こした騒音はアイゼンの街の住民からたくさんのクレームを寄せる結果となった。