15話目!(マリア視点?短いです)
「あの子が村を出て行ってもう5ヶ月もたつのかぃ……早いもんさねぇ」
私はマリア。正式にはマリア・リベル・ウロボラスという。種族はダークエルフで弓での狩が得意だ。
そんな私があの娘に出会ったのは7ヶ月前……。森で狩りをしている時に狼に襲われているあの娘を助けた事から始まったんだよ……。
~7ヶ月前・運命の出会いの数時間前~
「マリアよ!お主はいつまでこの村に燻っておるつもりじゃ?」
「いきなり何さ?収めるべきものを収めている私がどうしようと村長には関係ないだろう?」
「おぬしの狩猟の腕は村の者全てが認めておるよ。じゃが、その圧倒的ともいえる強さが村の者がおぬしに近寄らん原因となっておるのも確かじゃ」
トトリス村長……ディカルドが私に言う。私がトトリス村に世話になって早くも半年。
この会話は私がこの村に厄介になって2ヶ月もしないうちに言われ始めている事だが、私としては村で会話する人が居なくとも狩猟して獲物を獲ることで村の人が喜んでいるのを知っているので満足した暮らしをしているつもりだ。それに強い者が身近に居ると恐怖心を抱く事も幼い頃からの経験で知っている。
「ディカルド村長は私に出て行って欲しいのかい?私はそんなに村にとって邪魔者だったのか?」
「いや、断じてそうではない。おぬしほどの強さを持つ者がこのような辺境の村で燻っているのが我慢ならぬのじゃよ」
「そうは言われてもだな。私のやりたい事なんざ一つを残してこの村に来る前に全て終わらせちまったし、今更世にでて目立つ真似をしたくないんだよ」
「ふむ?その辺におぬしがまだだれにも話さぬ原因があるのじゃろうなぁ」
「……まあね。でも誰にだって隠し事はあるだろう?」
「うむ……じゃがっ!」
「悪いね。もう狩に行く時間だ。続きはまた今度にしてくれるかい」
私は素早く狩の準備を整えお気に入りの弓を手に森へ入り……運命と出会った。
~時間はさらに戻ってトトリス村に来る1ヶ月前のこと~
「魔王様!魔王様は何処に!?」
「また魔王様がまたお隠れになられたぞ!さがしだせぇ!」
私は退屈な城の生活から抜け出し、久しぶりに魔王城に隣接する人間基準で言うと黒ランクモンスターがウジャウジャといる森(人が魔性の森と呼び、私達は庭の森と呼んでいる)に向かっていた。だが私の力であればこの森のモンスターたちなど赤子も同然。
むしろ人間たちがこの森程度のモンスターを怖がる理由が分からなかったのだ。
少し運動して腹が減った私は森の中にある広大な泉の中にいた巨大魚と食すべく一方的な蹂躙という名の漁を行った。泉に潜って30秒も立たないうちに泉の水面には50M近い大きさの頭に金色の角が生えている魚の死体が浮き上がっていた。
「ハムッハムッ!いつ食っても神金王魚は美味いねぇ」
私はこの死にたての魚に生でカブりつきその身を咀嚼している。15分ほどあとには50M級の魚に食べられる身は一切残っておらず骨格のみが散らばっていた。私が居なくなった後はその骨すら食べに来るヤツラが居るのでそいつらが綺麗に片付けていくので散らかしても気になどしない。
食事を終えた私はまた散歩を続けるべく森の奥へ奥へと歩みを進めると、何度か来たことがあるはずの場所に見慣れぬ社がポツンとあり中には生物の気配までするではないか。魔王としてこれ程怪しい物を調べないわけには行かぬと思い、社へ向かって歩いていくと社の中には女性が一人。
「ようこそおいでくださいました。現時点で最強の力を持つ魔王様……」
「私のことを知っているアンタはだれだい?少なくとも私の領内の民ではないだろう?」
「ご推察の通り。私はこの世界を司る神の手の者とでも言いましょうか。名を心崇と申します」
「神の手の者……ねぇ。それが本当だとして私に接触してきた理由は教えてもらえるんだろうねぇ?」
「勿論でございます……ゴニョゴニョ」
端的に言うと世界の神は私が力を持ちすぎているので何かのきっかけでその力が世界の破壊に向かないか心配しているらしい。
魔族なんだから破壊に走るのは当然!とか思う奴も多いだろうけど、私達魔族は別に人族に害を及ぼしても居ないし、それなりに仲良くやっていると思っている。
「実は近い将来、貴女に匹敵……いえ将来的には貴女を超えうる能力を持った者がこの世界に現れます。その者の保護もしくは観察をお願いしたいのです」
「!?へぇ?この私より強いやつが現れるだって?それは楽しみじゃあないか。ここ数百年の間にめっきり強いといえるやつが減り退屈してたんだよ」
「この依頼、引き受けて頂けませんか?」
「条件付で引き受けよう。その条件とは……」
私は心崇に引き受けるにあたり2つの条件を提示した。
「分かりました。その条件については私から神様の方に報告し対処いたします」
「そいつは現れたらすぐに分かるのかい?」
「はい、おそらく」
「なんだい頼りない返事だねぇ」
「申し訳ありませんが私達も全てを把握しているわけではありませんので……」
「……そうかい」
心崇と社の姿は契約がなった後はそこには何も無かったかのように消え失せ、後には見慣れた石舞台があった。
この数日後、突如魔王が退位を発表し姿をくらませたのであった。