茅ヶ崎横須賀間往復自転車走行
「こんにちは」
「こんにちは、いい天気だね」
「どこか行ってたんですか」
東から走ってきたということは、江ノ島か辻堂海浜公園あたりだろうか。
「ヴェルニー公園」
「え?」
「知らない? ヴェルニー公園。横須賀駅前」
「いや、知ってます。東京湾まで行ってたことに驚いただけです」
「そうそう、東京湾だね、あそこは。猿島もすぐだよ」
「何時間くらいかかるんですか」
「片道3時間。復路は疲れて3時間半かかったよ。近所の人から片道20キロくらいって聞いてたから、葉山まで行って横須賀まで19キロってなってたのを見たときはさすがに青ざめたよ」
「でも、行ったんですね」
「葉山までで既に1時間くらいかかってるのに、引き返すのは勿体ないよね」
「まあ、確かに」
でも葉山から19キロってことは、片道35キロくらいだよな。20キロのつもりでアップダウンの激しい道を走り続けて、16キロくらい走って残り4キロ? いや、それで葉山はさすがに手前過ぎるけど、もうちょっとか、と思っていたところで残り19キロ、まだ半分も行っていないとわかったときの絶望といったら、なかなかのものだろう。
とはいえ葉山あたりだと引き返すにしても休憩できる場所が少ない。
ここ茅ヶ崎の菱沼海岸から横須賀までの経路は江ノ島の前、由比ヶ浜、を通過、そこからいくつものトンネルと坂道を越え、葉山、逗子を通り三浦半島を東京湾方面へ。
この中で葉山に近く、栄えている街といえば、横須賀線や京急線の駅がある街としても知られる逗子。僕だったら逗子駅付近の飲食店に入って栄養補給をし、引き返すだろう。
「いやあ、さすがに疲れて脚パンパンだよ。クエン酸が欲しい。もうちょい走ってコンビニでクエン酸入ってるドリンク探そ」
そういう彼女は、まだ余裕の表情だ。




