カケラミライ
望と秋穂に逃げられた後、俺たち三人は響ちゃんの家の地下室で話し合いをしながら曲作りを始めたが、徹夜作業で気が付けばみんな床に横たわって昼を迎えていた。
アイツらが聴いて感動する曲をつくりたい。心に音楽を響かせてやりたい。
「ふわ~あ、大騎くんはソロでやってみるのもいいかもね……」
みんなでむくっと起き上がってぼーとしていると、響ちゃんが欠伸をして言った。
「ソロ?」
「そう、ソロ。ソロなら大騎くんの好きなように曲ができるし、メンバーの都合を考えなくてもいい。すべては大騎くん次第だよ」
「そうか、ソロか、あんま考えなかったな。確かにバンドを組んでたら音楽性の違いなんかで揉めるかもしんないし、アリかもしんないな」
「アリだよ! 好きなように音楽やろう!」
俺は好きなように曲を書いてソウルを思いっきりぶつけたい。中には下ネタ満載の曲もあるだろう。そういう曲をつくったとき、秋穂や望をバンドに巻き込んだらと考えると「何考えてるの、そんな曲やれるわけないでしょ」とか「ちょっと恥ずかしいなあ」とか言われそう。響ちゃんと彩加先輩とやってもただのセクハラ曲になりかねない。
それに、秋穂と望に構ってたら、いつになったら夢に向かって進めるようになるかもわからない。だったら大変でも自分一人で音源をつくってソロ活動したほうが、早く大スターになれそう。
そっか、他人に左右されない人生、ロックだな。
「やてみるか、ソロ」
「やっちゃおやっちゃおう!」
ということで起きて早々作詞を始めた俺。響ちゃんと彩加先輩にもアイディアをもらいながらぼちぼち書いて、初めてにしてはいい感じの詩が書き上がった。
◇◇◇
『カケラミライ』
作詞、作曲 東橋大騎 水城響 水城彩加
あの日見た夢のカケラミライその想いを
あなたは今も、覚えていますか?
ずっと大切にしていたこの願い
なんとなくだけど走り出したあの夏の日
一生モノの旅が奏でるメロディー
手に届きそうな緑と木漏れ日
けどなかなか手に入らないヒカリ
手に持てないほど重い想い
So 突き進め
時に迷っても
So 突き進め
やりたいコトやるために
そしてGlow up
全てはDREAMS COME TRUE
ヒカリ輝く未来掴むために
ほら諦めなければこの手の中に
あの日みた夢のカケラミライその幻想を
僕は少しずつカタチにしてゆくよ
背中押すようにそっと吹く夏の風がそっと囁いている
想いはいつかカタチになるよ




