バンドやろうぜ!
「バンドやろうぜ!」
「勉強があるから」
「僕も勉強が」
夜、大騎は彩加と響を同伴させて、望と秋穂が通う塾の前で待ち伏せ、出てきた二人を声かけキャッチ。
「秋穂ちゃん、すごいね。塾から出た途端に『バンドやろうぜ!』なんて声かけられたら普通は「わっ」って驚くのに、冷静だね。わたしだったらびっくりして尻もちついちゃうよ」
と、冷静な秋穂に関心する彩加。
「望くんも驚かなかったよね~」
響も二人の冷静さに関心している。
「僕らは大騎のそういうのには慣れてるので」
「なあなあいいからバンドやろうぜ!」
と、誘いはしたものの、望と秋穂はそう簡単に乗ってくるはずもなく、大騎は塾の前で二人を一週間待ち伏せした。
「あなたなんなの? そんなに受験の邪魔をしたいの」
秋穂が言う隣で、望は俯いて黙り込んでいる。
「お前らこそなんなんだ? 何がしたくて勉強してんだ?」
「そ、それは、医者になるためよ……」
言いつつ、秋穂は悟っている。自分が医者になるのは絶望的だということを。医学部に入るにはあまりにも成績が足りない。
「ちぇっ、またダメか。アイツら頭かてぇなあ」
きょうもきょうとて断られた大騎は彩加、響とともに来た道を戻る。
「なかなかね~、わたしらみたいに呑気にしてる子って、あんまりいないし、焦る気持ちもわからないでもないからなあ」
「ひ、響ちゃんもバンドやめちまうのか!?」
「やめないよ。バンドはわたしの生き甲斐だし。ね、彩加ちゃん」
「うん、わたしはやりたいときにやるだけだけどね~」
「さすが水城従姉妹! わかってる!」
「どうしても秋穂ちゃんと望くんを誘いたい?」
と彩加。
「じゃあ、入りたい! って思ってもらえるようなバンドにならなきゃね」
「入りたい、か、そりゃそうだよな。でも、どうやって」
「もう大騎くんの為人は二人ともわかってるから、あとは曲で勝負するしかないなあ」
「そうっすか、やっぱ曲っすかあ」
「そうっす、曲っす」
「じゃあつくろうよ! ぼちぼち!」




