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空色サプリ  作者: おじぃ
父の思い出

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死にたくねえ。ただ、それだけなんだよ

「お父さん死なないで。まだおじいちゃんになってないじゃん」


「親がガキより先に死ぬのは当たり前なんだ。とりあえず、お前に先にいかれることはなさそうだから安心だ」


「おじいちゃんから見ればお父さんがガキだよ? でもおじいちゃんは元気だよ? だからお父さんもおじいちゃんになるまで死なないで」


 彩加が語りかけてくる。


 もっともだ。言葉に詰まった。この世はなんて残酷なんだ。彩加に先立たれたくないと願う自分は、両親より先に旅立とうとしている。


 いや、旅立ちたくなんかない。


 死にたくない、俺だってまだ、死にたくない。


 だが姿も見えない天使とかいうのが、そんな連中が、俺を連れて行こうとしている。強制連行だ。


 ガキのころは大怪我をする度に、こんな痛い思いをするなら死んだほうがマシだと思ったが、それよりずっと苦しいいま、俺は生きたいと、心の底から願っている。


 ほんとにバカな生きざまだったな。


 でもよ、老いる前にしょっ引かれるってのは、ちっとは優秀だったってことか?


 昔から、イイヤツほど早死にする。それがこの世の摂理だってことは、神様仏様とか宗教なんざよく知らない俺でも、人生経験で刷り込まれている。俺がガキのころ、ガンで夭折した近所のオヤジ。それから数年後、風邪をこじらせて彼氏に看取られた近所の姉ちゃん。二人とも、素直でやさしかった。俺も、その仲間入りってことか。


 その彼氏というのがいま、彩加が通う高校の校長をしている。弱気でいじめられっ子だったあいつは、威風堂々たる男になった。


 俺が周りの人間に与える最後の贈りものってのが、それなわけか。


 でもな、やっぱりな、死にたくねえんだよ。


 なにがなんだって、死にたくねえんだよ。


 俺がいなくなったら家の稼ぎがなくなる。家の修理ができなくなる。


 そんな理屈を並べ立てるよりも単純に、俺は娘と別れたくない。こんなに早く、別れたくないんだよ。


 ただ、それだけなんだよ。

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