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空色サプリ  作者: おじぃ
父の思い出

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お父さん死なないで

 病気でも、お父さんは目の前にいる。もう近いうちに死んじゃうとわかっていても、目の前にいて、呼吸をしている。そんな状態がしばらく続いている。


 もしかしたら回復するかも。


 そんな期待感が、ふとしたとき胸の奥から込み上げてきて、本気になってしまう。幼いわたしは、余計にそう思ってしまった。


 だって、大声を出していっしょに遊んで、豪快に飲み食いして、竹馬の針金が緩まないようにペンチでギュッと縛ったり、日曜大工で近所の人のために犬小屋をつくったり、わたしを片手で持ち上げて腕や肩に乗せてガハハと笑っていたお父さんが、そんな簡単に死ぬはずない。動かなくなるなんて、信じられない。


「お父さん死なないで。まだおじいちゃんになってないじゃん」


 それが、わたしが涙したときの口癖だった。


 思い返せば、なんて残酷な言葉だろう。お父さんだって、死にたくない。


 若くして家族を残し旅立つ。遺された家族の暮らしは、わたしの養育費は。お父さんは病に苦しみながら、そんな不安も背負っている。


 わたしが高校生になってアルバイトができるようになるまでは、お母さんが一手に担うしかない。


 当時のわたしは、まだそこまで気が回らなかった。


「親がガキより先に死ぬのは当たり前なんだ。とりあえず、お前に先にいかれることはなさそうだから安心だ」


 凄く苦しいはずなのに、わたしの前ではお父さんはいつも笑顔。


「おじいちゃんから見ればお父さんがガキだよ? でもおじいちゃんは元気だよ? だからお父さんもおじいちゃんになるまで死なないで」


 わたしが発する言葉の語尾はいつも口ごもって、上手に言えていなかったと思う。入院後、こんな応酬が余命の目安を告げられてから何日か続いた。


 だけどある日、ふと思った。お父さんは入院して点滴をされているだけで、口調は以前と同じく元気そのもの。お父さんが死んじゃうなんて、きっと嘘だ。次第にそう、心に言い聞かせるようになっていった。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 更新遅くなり申し訳ございません。

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