整理された街、茅ヶ崎
道幅が狭い理由に疑問を持ったまま、悶々と通りを一歩、また一歩と大股で、しかしゆっくりとグリーンベルトを歩く。いつもならもうカンカン照りの時間だけど、きょうは雲が晴れず街は灰色ベース。
あぁ、なんだかここは日本じゃないみたい。店先に自販機が並ぶサンドイッチ屋さんは相変わらずだけど、周りの建物やお店がパリとかロンドンみたいな街並みを演出して、わたしが幼いころにはもう少しあった和を順次置き換え、時代の移ろいを実感する。
ほんと、東海岸はどんどん変わってくなぁ。
私が住む中海岸や図書館のある市の中央部はヨーロピアンというよりはハワイアンな色が濃くなりつつある。それでもまだまだ和の雰囲気は健在で、緑地内には無料開放している日本庭園があり、もう少し西に位置する南湖には古くからの和風住宅が多い。昔からこの街に住む人は、これこそが由緒ある別荘地、茅ヶ崎のあるべき姿だなんて言うのかも。
わたしはというと、欧米風に進化を遂げる姿にワクワクしたり、幼少期から慣れ親しんだ雰囲気の残存にホッとしたり、つまりどっちも歓迎だったりする。
茅ヶ崎という街は東海岸や中海岸のように異国文化を積極的に取り入れているエリア、南湖のような和のエリア、サザン通りをはじめとした人との縁を大切にする昭和の香り漂う商店街、駅から北の大型商業施設が密集する都市エリア、他県にもあるニュータウンやファミレスを中心としたチェーン店が軒を連ねる道幅の広い通り、田園風景、里山と、いろんな顔があって、尚且つそれがごちゃ混ぜにならず、それぞれちゃんと区分けされている、のんびりまったりな田舎町という表向きの実は整理された街。
ニュータウンに近い雰囲気を醸すファミレスとか中規模スーパーが並ぶ街区は市内ほとんどのエリアにある。
不肖このわたくし、芸能が盛んなこの街では決して珍しくない茅ヶ崎の新星を目指しておりまして、改めて故郷を振り返ってみました。
うん、表面上のことは知ってるけど詳しいことはほんとわかんないや。
これは資料を調べたり彩加ちゃんとか街の人に訊いたほうが良さそう。
ひとりじゃ夢は叶わないっていうし、周りの人を巻き込んでハリケーンを巻き起こす。
とりあえずふたりにメッセージを送っておこう。
ニューヨーク雑貨店を背に、交差点の一角で立ち止まったわたしは邪魔にならないよう隅に寄ってスマホでちょちょいとメッセージを送った。
お読みいただき誠にありがとうございます!
『名もなき創作家たちの恋』の後書きにも記しましたが、本作の舞台になっている茅ヶ崎海岸、近ごろでは響が朝起きて散歩している辺りに大きな台風被害がありました。
心痛いですが、このような出来事もまた、街が変わりゆくきっかけになるのだなと改めて実感いたしました。




