江ノ島シーキャンドル
「わ~お」
「地球がまるい」
僕ら五人はいま、江ノ島サムエル・コッキング苑内にある展望台『江ノ島シーキャンドル』から広大な海や湘南の街を俯瞰している。東に小さな山々が連なる鎌倉や葉山の住宅地、西には中高層の建物がにょきにょき生える我らが茅ヶ崎。北にはそれらより圧倒的に栄えた藤沢の街、東南西180度にはしずかにきらめく大海原。
海というのは不思議なもので、波打ち際にいるとザバザバ騒がしいのに、高所から俯瞰するととてもしずかで、同じ時間、同じ座標でも見る場所によって表情が反転する。
展望台は若者を中心に多くの客が詰めかけ、きれー、すごーいなどと各々感嘆している。
「なぁなぁ望、双眼鏡使えば着替え覗けたりするんじゃね?」
大騎は備え付けのコイン式双眼鏡を指差して言った。
「双眼鏡の先に何か建物ある?」
「あるにはあるが最寄りの建物が遠すぎる」
「絶望だ……」
「ちょっと、滝沢くんまで何言ってるの?」
「なんだよ秋穂、男のロマンなんだから邪魔すんな」
「東橋くんはおサルさんだから絶景を愉しむロマンはないのかしら?」
「おう? なんだお前ここで種付けされたいのか?」
「あら、私はホモ・サピエンスだから種付けの対象にはならないはずよ?」
「うるせぇなぁ、おっ勃てばいいんだよ」
「望くん!」
と、少し離れたところで響さんが手招きしているので、僕は二人の応酬を横目に彼女といつの間にかその隣に移動していた彩加先輩のもとへ寄った。
響さんは二人を盗み見て「いい感じだね」とボソリ。
僕は頷く。あんなに相性が良いのだから、早く付き合ってしまえばいいのに。
お読みいただき誠にありがとうございます!
更新遅くなりまして申し訳ございません。




