朝妬けのクラウディー
目が覚めると外は既に明るくなっていて、部屋にはレースのカーテン越しにまばゆい光が差し込んでいた。
どうも私は、ソファーで眠ってしまったようだ。隣では東橋くんが手足と口を大きく開いて鼾をかいている。うるさいから口と鼻に唐辛子でも詰め込んであげようかしら。未曾有の刺激にパニックを起こして悶え叫ぶ彼の滑稽な姿を見れば、きっと愉快な朝になるわ。
「おー、秋穂ちゃん起きたかー」
どこからかリビングに戻ってきたのはこの家の娘で彩加ちゃんの従妹に当たる響ちゃん。着替えているし湿気っぽいから、お風呂に入っていたのね。
「おはよう。あとの二人は……?」
「彩加ちゃんと望くんは海までお散歩しに行ったよ」
「そう……」
私の素っ気ない返事に、響ちゃんは頭上に『?』マークを浮かべたような表情を体現した。
あぁ、また二人だけの時間を過ごしているのね。彩加ちゃんは学力で私を追い抜き、望くんとの距離まで一気に縮めてしまった。
彩加ちゃんが悪いのではなく、私が不器用なせいだ。
でもどうすればいいの? 生まれ持った性格はそう簡単に変えられなくて、たとえ思い切って変えたとしても、変に思われるし、自分らしくないキャラクターを続けるのは疲れてしまう。
私も海に行って、望くんと二人で景色を見てみたい。けれどそもそも、勉強に追われる日々でそんな時間あるかしら?
海に行けないのならば、今まで通りご飯屋さんでお夕食ができたら……。それさえもできなくなったら、私はどうなってしまうだろう?
考えたくない、そんな未来、考えたくない……。




