早く起き過ぎた朝
「ふわぁ~」
いつの間にか、床の上で寝ちゃってた。響ちゃんも大騎くんも。ちゃっかりソファーに横たわってるのは、秋穂ちゃんと望くんだけ。
もぞっと起き上がってカーテンを開けてみても外はまだ暗く、霞みがかった南の空にぼんやり月が浮かんでいる。壁掛け時計が3時半を差している。ぼんやりしていると、数分おきにコトンコトンと遠くで貨物列車の駆け抜ける音が聞こえる。
からだがベタつき、疲れが取れず気怠いので、寝息をたてる響ちゃんに「シャワー借りるね」と屈んで囁き、きのうを洗い流す。もちろん思い出は大切に仕舞ったまま、目を閉じて、やさしく降り注ぐシャワーの音で、より深く染み込ませて磨いてゆく。
隅々までさっぱりしたらからだを拭いて、お泊り用に預けておいた下着と緑色のジャージを身に付けてリビングに戻ると、望くんがムンクの『叫び』のような顔でソファーに座ったまま顔を上げていた。疲れきっているのが露骨にわかる。
「おはよう」
望くんを刺激しないように、他の子を起こさないように、彼の背後からそっと声をかける。
「あぉ、あぉはぅあいよござまぁす」
「ちょっとシャワー浴びてきたら? 乾燥機もあるし、私のと一緒で良ければお洗濯するよ。ちょっとのんびりシャワーを浴びている間に乾くと思う」
「えっ、いやあの、あ、響さんに許可取らないと……」
「それは後で言っておくよ。このお家はお金持ちだし、親戚の私がそれくらいしても怒られないだろうし怒られたらお金払うか何か食べものでも買ってくる。それとも、私のと一緒に洗濯はイヤ?」
「いやいやいやそんなことないです! ではお言葉に甘えて!」
「うん。タオルは隣の衣装室の洋風タンスに入ってるから」
言いながらにっこり微笑みかけると、望くんは「あっ、はい」と何故か狼狽え顔を逸らし、そそくさと右後ろにある扉が開いたままの衣装室に入り、手拭いとバスタオルを持ってその奥にあるもう一枚の扉から廊下へ出て行った。脱衣所で望くんと鉢合わせないように、十分くらい経ったら、洗濯機のスイッチを入れに行こう。




