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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

四角関係?・・・三角錐関係?

作者: meriarose

なんとなく書いてみた百合もの。主人公はノーマルですが、流され体質なのとかわいいもの好きなので抵抗ないのです。

 「ねえ、有海あみ。わたし、明日和真かずまに告白しようと思う。」


わたしこと、相田あいだ ひびき

なんか男の子みたいな名前だけどれっきとした女子15歳!

受験勉強も追い上げに入る前に幼馴染に告白しようと思う。

だって、自分の性格上はっきりさせないと気が済まない。受験勉強にも身が入らないと思ったから。


フラれたとしても、悲しいかもしれないけど気持ちがわかってすっきりするし。

もしオッケーしてもらえたら、気持ちよく受験勉強にも取り組める!楽しみも増すってものでしょ。


でもその前に、親友の有海には報告しておかないとと思って、今日は二人で帰る前にカフェに寄ったんだ。有海はフワフワで栗色のボブヘアーで、ほんとに巻いてないの?ってくらい自然な巻髪。天然らしいけどすごい羨ましい。大きめのお花のピン止めがすごくかわいい。メイクなんて必要ないくらいツルツルの肌に、長い睫、大きな瞳。町を歩けばナンパされるし、学校でも数えきれないほどのラブレターに告白大会。なんで私なんかの親友してくれてるんだろう?って不思議なくらい。


わたしから見てもケチのつけようのないくらいの美少女なんだ。


で、私の容姿と言えば。


髪はへんな癖のある硬い黒髪。一度いつも行く美容院がお休みだったとき、無性に髪を切りたくなって全然知らない美容院に行ったら大変なことになった。

あまりにもひどい仕上がりに、翌日いつもお世話になってる美容院に泣きついたくらいだ。

それ以来美容院を変えたことはない。


「響ちゃんの髪は、微妙に癖があるから慣れてないとカットするのも難しいかもね。」


と美容師さんが言ってた。私が小さいころから切ってくれてる人なんだけど、いつも綺麗。

それに私の黒髪をすごく褒めてくれる。ストレートで痛んでないのが密かに自慢なんだ。


体型はちょっと筋肉質かなぁ。女子にしては身長も高いし。でも、マッチョではないよ。

自分で言うのもなんだけど、スポーツが好きだからスタイルは悪くないと思う。

性格はよくサバサバしてるとか、イケメンとか言われる。

もっと御淑やかな女性らしさを身に着けたほうがいいと家族には注意されるけど。

性格は簡単に変えられないよ。


「そっか・・・頑張ってね・・きょうちゃん。」



有海は小学校3年生からの付き合い。家の隣に引っ越してきたんだ。

最初は引っ込み思案で、なかなか話してくれなかったけど和真としつこくしていたら、少しずつ打ち解けてくれた。笑った顔は天使みたいで、二人して見惚れてたっけ。


和真は生まれた時からお隣同士。かなりのベタな展開で申し訳ないけど、つい最近好きだなって自覚した。だんだんかっこよくなって、女子からも告白されるのを見てなんか有海はともかく自分以外の女子と仲良くしてほしくないって嫉妬したんだ。それで自覚した。

ああ・・・私、和真の事好きなんだって。



なんとなく表情が曇った有海が気になりつつも、私はその時自分の事しか考えてなくて。

何かを言いたげに私を見る有海に、全然気づかなかったんだ。




翌日の放課後、勇気を振り絞って和真の部屋へと押しかけた。

勇気を振り絞って告白した私。



「えっ!?ああ・・・有海、言ってなかったんだ。」


「え?何を?っていうか、はぐらかさないでほしいんだけど。」


突然有海が出てきたもんだから、わけもわからず和真が私の告白を誤魔化そうとしてるんじゃないかと疑ってしまった。


「いや、そうじゃなくて。気持ちは嬉しいよ。でも、俺有海と付き合ってるからごめんな。てっきり有海から報告したと思ってたからびっくりした。」


「はっ!?付き合ってる??いつから!?」



自分がフラれたことよりも二人が付き合っていたという事実のほうに衝撃を受ける。

だって、二人とも何にも言ってなかったじゃん。うちら幼馴染で親友でしょ!?

なのに黙ってるなんてひどい。


「えっと、中学入ってすぐ俺から告白した。マジで知らなかったわけ!?」


「だって、うちらいっつも一緒だったじゃん。休みの日って言えば大体三人で遊んでたし、二人がそういう関係だって全然気づかなかったし。もしかして、私二人のことすっごい邪魔してた!?」


「いやいや、そんなわけないじゃん。誘ってたのは俺らだし。そういえば、お前がいるのが自然すぎて違和感なかったわ。そりゃ、気付かないか。」


当然のように言ってるけど、私はそれどころではない。

だって、二人はほぼ3年前から付き合ってたわけで、私には一切そんなこと言ってくれなくて。

知らない私は二人の邪魔をしつつ、ついに昨日あなたの彼氏に告白しますと宣言しちゃったじゃないか!!


さいあくじゃんかー!!


有海泣いてないかな、でもこれ私も結構傷ついてるわけで、有海も可哀想だけど私も可哀想だよね。


「もう!そういうことはちゃんと言ってよ!有海が自分からそういう事言えるわけないでしょ!!あんたが悪いんだからね、わたし昨日有海に告白すること言っちゃったじゃん。絶対不安になって泣いてる、ちゃんとフォローしといてよ!?私からも言っとくけど。アー恥ずかしい、私めっちゃ恥ずかしい!」


必死に涙をこらえながらまくしたて、和真に有海のフォローを押し付けて部屋を飛び出す。

和真の引き留める声も聞こえたけど、聞こえないふりをして自室に引きこもった。

なんか予想外な事実を知ってしまった上に、フラれたわけだけど。

フラれたという事よりも、二人に秘密にされていたことにショックを受けている。


だって、私と三人で遊んでいても、二人は陰で恋人同士の時間を過ごしていたわけでしょ?

あれ?でも待って?過去の出来事を思い返してみるが、有海はいっつも私の隣にいたし。

和真も私の隣にいた。私が何かを買いに行くときは、有海が必ずついてきてたし。

あの二人が二人っきりでいるところを見たことないんだけど。



つかあいつ有海と付き合ってるって思い込んでるんじゃないだろうな。

とりあえず、有海にも確認しなくては。



悲しむことも忘れ、私は翌日有海に確認する。



「有海、和真と付き合ってるの?」


「!!」


「怒ってるわけじゃないの。本当の事を言ってほしい。」


「ご、ごめんなさい!!響ちゃんに言わなきゃって思ってたのに、嫌われたくなくて!だって、和くんは響ちゃんのなのに、後から割り込んで私が・・」


ボロボロと大きな目から涙をこぼしながら謝る有海。


「ばかだな、怒ってないってば。泣かないでよ。ただ、もっと早く教えてもらいたかっただけ。だって私たち親友でしょ?昨日初めて知って、私すごくショックだったんだよ。」


「ごめんなさい。」


私に抱き着きしゃくりあげる有海を、宥めながら小さくため息を吐く。

遅まきながら私も悲しくなってきた。

大好きな幼馴染二人が付き合ってて、ハッキリ言って私ってばお邪魔虫じゃん。

ずっと一緒って思ってたけど、そんなわけないよね。いつかは、バラバラになるんだから。


あーあ、二人が幸せならいいけどさ。正直二人を近くで見てるのはちょっと辛いな~。



私だって和真が好きだったんだもん。

でも、有海も大好きだから諦めもつく。

だって、お似合いだもん。



よし、気持ちを切り替えて、受験がんばらなきゃ!!



ただ、受験校は変更させていただきます!!


馬に蹴られたくないしね。









「ひ・び・き・君vv」



長い飴色の髪を二つに縛り、赤いリボンを結んだ美少女。

左手の薬指には花の形の石がはめ込まれた細身のシルバーリング。

中庭に寝転がり、本を読んでいた私のおなかの上に跨るようにして座り顔を近づけてくる。

大きな目がキラキラしてすごく可愛い。


私の左手薬指には同じデザインの指輪。



決意してから猛勉強して、私は志望校のレベルをワンランク引上げ県外の全寮制女子学院へと進学した。幸いレベルが高すぎるということもなく、日々の予習復習で授業にもついていける。

ただ、女子高ということもあって独特の風習があるみたい?


入学した直後から、毎日のように送られてくるラブレター。

告白も数えきれないくらいされて、何人もの女子を泣かせてしまった。

本気で私の事が好きなのかな?って疑問に思ってクラスメイトに聞いてみたことがある。


「んー、っていうか女子校のノリ?やっぱ女子しかいないわけだし、その中で素敵な人と一緒にいたいって思うのは自然なんじゃない?マジで恋愛対象にしてる子もいるかもしれないけど。とくに相田さんに告ってくる子はマジかもね。だって、殆ど泣き崩れてるのと、相田さんマジでイケメンだし。」


ということでした。



どうやら私は女子の間で、恋愛対象になりえるらしい。好かれるのは嬉しいけど、私はノーマルだからちょっと複雑。

そんなわけで、毎日のように女の子を泣かせるのはとても心が痛むので真剣に悩んでいたら。


「相田さん、私とエンゲージしない?」


そう言って私の目の前に座る美少女。

今私の上にいる彼女。三葉みつば 聖羅せいらだ。


今までの女の子とは逆に、非常に軽いノリで言ってきたことに興味を惹かれる。


「何でわたしと?」


「だって、困ってるんでしょ?告られて。わたしが虫除けになってあげる。」


「でも、あなたにメリットはあるの?」


「セイラだよ。あるよ、私だってエンゲージするからには相田さんをくどかせてもらう。でも、他の子達みたいに最初から好きになってもらいたいとは言わないよ。お友達からお願いします。」


にっこり笑ったセイラはとっても可愛くて、この子とは仲良くなれそうな気がした。

だからオッケーしちゃったんだよね。


そしたらセイラの積極性にびっくり!!

今まで多くの女の子を泣かせてしまって、軽くトラウマになってるのか強く拒否もできず…ベロチューが普通になりました。



また、うまいんだよ。セイラが。

っていうか、私の経験値がなさすぎなだけか。

そんなこんなで、夏休みも間近。



「わたし響くんのお家行ってみたいな。」


「なんで?別に普通の家だよ。」


何を言い出すのかと思えば。


「だって、寮に居てもつまらないし、響くんのご両親にご挨拶したいし。響くんが普段どんなところで遊んだりしてたのか興味があるんだもん!」


いいでしょ〜?と上目遣いで見つめられるとつい絆されちゃうんだよね。

でもなー、家に帰るってことは確実にあの二人と会うことになるわけで。




だって、家が隣同士だし。

それに入学してから何度もメールや電話が来てるんだけど、じつは返事をしていない。


『いつ帰ってくるの?』ってとにかくしつこいんだよね。


ちなみに幼馴染二人が。


その内容も長いし特に意味もないし、数が多いわで返事をする気が失せる。とにかく、目を通すのが精一杯だ。

そんなわけで、会えば絶対文句を言われるのがわかってるので会いたくないんだよね。

それにさ~目の前でいちゃいちゃされるのもね~。


私が帰省したのを知ったら、確実にあの二人が押しかけてくる。


「えっと、悪いけど色々あって実家には戻りたくないんだよね。」


二人のことが嫌いになったわけじゃない。

むしろ寂しいくらい。また昔みたいに、三人で楽しくって思うけど、まだ自分の気持ちに自信がないから。だって、仲のいい二人を見て嫉妬したりしちゃうかもしれない。嫌な態度とっちゃうかもしれない。そんなのは嫌だから。


「え〜」


「ごめんって。そのかわりさ、どっかショッピングにでも行く?付き合うよ。」


不満そうに唇を尖らせるセイラの頬を撫で、代替案を提示する。


「やだ。ショッピングなんていつでも行けるじゃん。ひびきくんちに行きたいの!!」


困ったなぁ。

そんな風に見つめられたら弱いんだよ〜。

おっきい目がウルウルして、メイクなんてしてないのに、なんでそんなにほっぺがピンクなの??


可愛いなぁ。



PRRRRRRR!!



「ん?」



見つめあっていると、突然ポケットに入れていた携帯が鳴りはじめる。


「もしもし、お母さん?」


めずらしく母からだった。


なんだかいろいろと言ってはいたけど、要は一度戻ってこいということらしい。えらく落ち込んだ様子で、懇願されてはいやとは言えない。たしかに寮に入ってからは、あまり連絡もしていなかったし一度も家に帰っていなかったからなぁ。だけど、なんというタイミングの良さ。


仕方ない、覚悟を決めるか。



「どうしたの?」



心配そうな顔をするセイラに、事情を話すとセイラはおっきな目をさらに大きくして私に抱き着いて大喜び。

そんなセイラにつられて、私も笑みが浮かぶ。久しぶりに家族だんらんを満喫することにしよう。





そして夏休み。

最初の数日は二人でショッピング。

いいって言ってるのに、セイラが私の両親にお土産を買って行くって聞かなくて。

結局母の好きな紅茶をお土産に、二人で私の実家へと帰ってきました。



「ただいま~。」


玄関に入ると同時に帰ってきたことを伝えると、すぐに母が出迎えてくれた。


「あらあら、おかえりなさい!本当に久しぶりね、すごく寂しかったのよ!」


少し涙で瞳を潤ませて、本当にうれしそうに笑う。万年新婚で父がいればそれで満足だと思っていたけど、どうもそうでもなかったらしい。なんだか面はゆい気持ちになる。


「まぁ、後ろのかわいい子は?紹介して頂戴、響。」


「ああ、ごめん。この子は私のクラスのお友達。」


「初めまして、お母様。私、三葉聖羅と申します。響君とは親しくさせていただいています。突然お邪魔してしまって申し訳ありません。これ、お口に合うといいのですけど紅茶です。よろしければ、召し上がってください。」


ニッコリ笑顔で紙袋を差出し、挨拶をするセイラ。こういうところはしっかりしてるなぁと、いつも感心してしまう。彼女はとても社交的だ。

そんなセイラを母も気に入ったらしく、私を放ってセイラを連れてリビングまで行ってしまった。


「セイラちゃんね。とてもかわいらしい名前だわ。さっそく紅茶を淹れましょう、おいしいクッキーもあるの。一緒に食べましょうね。響ったら、こんなかわいい子を今の今まで内緒にしてるなんて、ずるいわ!いつまで居られるのかしら?ゆっくりして行ってね!家は何日でも大丈夫なのよ?夏休み中居てもらってもいいくらいよ。」


きゃっきゃとはしゃぐ母に、セイラも同じテンションでうれしそうに「ありがとうございます、お母様v」と応えている。そのうちに、一緒にキッチンに立って紅茶を淹れたりしてとても楽しそうだ。

どうやら二人はとても気が合うらしい。


そんな二人をソファーに座り眺めていると、二人が紅茶とお菓子を持ってくる。

さっき初めてあったとは思えないほど仲良くなっている。



「それでね、女の子に泣かれちゃって。その時の響君の慌てようったら。」


「ちょっとちょっと!!なに話してんの?!学校でのことは内緒にしてって言ったのに!!」


「あら、響ったら!親に内緒にするような疚しいことしてるの??全然連絡してくれないから、私たちとても心配だったのよ?響が教えてくれないから、セイラちゃんに教えてもらわなくっちゃ。」


「私たちいつも一緒にいるんです、響君のことならなんでも知ってるの。響君に代わって私がお話ししますねv」


紅茶とお菓子を楽しみながら、二人はきゃっきゃと楽しそうにおしゃべり。

それを私は諦めの境地で聞き流す。セイラは包み隠さず、学校での出来事を話し私たちの関係までも勢いで言ってしまわないか正直ひやひやした。

そんなこんなであっという間に時間が過ぎ、母が夕飯の買い物に行くといって出ていったので、セイラを私の部屋へと案内する。



しばらく二人でまったりしたのち、私は二人の幼馴染のことを話すことにした。

だっていつ対面するかわからないしね。合わないうちに帰りたいところだけど、両親がそれを許してくれるかわからないし。

あらかじめ事情を知ってもらっていたほうが、もし二人と再会したとしても気まずいことにはならなくて済むしね。こうなったらセイラにも協力してもらうことにしよう。



そう決意してセイラに事情を説明する。


「そうだったの。まぁ・・・だれが悪いわけでもないけど、蔑ろにされたのはちょっと寂しいよね。親友だったのなら尚更ね。でも、私は少し二人に感謝かな。」


「えぇ!?薄情もの~!!」


「だってぇ、二人のおかげで響くんに会えたし、こんなに仲良くなれたんだもん。」



だんだんと縮まる距離。セイラが私の首に手を回し、その身を密着させてくる。

紅潮する頬、潤んだ瞳。私は拒否することなく、押し倒される形でベッドに沈む。


お互いに目を閉じ、触れ合う唇。

何度も啄むようにした後、それはだんだんと深くなり舌を絡めあう水音が静かな室内にいやらしく響く。


乱れた吐息を整えるためどちらからともなく離れると、しばらく見つめあったまま抱き合う。

ドキドキする。これはなんだろう、好きなのかな。

キスをしたから気持ちが高ぶってるんだと思う。でもそれとは別な何か。

一緒にいるとあったかくて、触れ合いたくなる。

いつの間にかそんな風に思うようになっていた。たぶんセイラの魅力にやられたんだろうな。

彼女にしかこんな気持ちにならないもの。


私の上に覆いかぶさる形で身を起こすと、セイラはいたずらに指を這わせる。

本当に私のことが好きなんだなって思う。だってその目がすごくいとおしいものを見る目なんだもの。


無抵抗でしたいようにさせていると、再びセイラが唇を寄せてきた。

仕方ないなぁと思いながらも、目を閉じようとすると、突然扉が開かれる。


「「!!?」」


びっくりして動きを止めて、視線だけをドアの方へと動かす。

さすがのセイラも身を固くしていた。


「なにしてるの!?」


そこにいたのは、予想していた母ではなく幼馴染の有海だった。


「あ、あみこそ・・勝手に入ってきたりして!」


私たちの状況にショックを受けたのか、有海が顔を青くして呆然と呟く。


「い、今・・キス・・しようとして・・た?!」


私はなんと誤魔化そうかと考えを巡らせたけど、いい言い訳は見つからなかった。


「あー、えっと・・気のせいじゃないかな?」


「そうよ。」


私が適当なことを言っている隣で、セイラがきっぱりと肯定する。


「セイラ?!」


「いいじゃない。本当の事を言えば。だって、この子がさっき言ってた親友で幼馴染なんでしょ?そうじゃなきゃ、勝手に部屋に入ってきたりするはずないもの。まあ、普通はしないけど。」


「あ、ご、ごめんなさい。きょうちゃん。帰ってきてるって聞いて・・つい、会いたくて。」


「え?ああ、いいよ。ちょっとびっくりしたけど。」


あははと笑う私の脇腹をセイラが小突くき、セイラは唇を尖らせた。どうやら甘やかすなと言いたいらしい。


「その子は?女の子同士でキスなんて・・・」


「あ、紹介するね。この子は・・・」


「響くんとは同じクラスで、今日までずっと仲良くしてもらってるの。私たち付き合ってるんだ。光葉聖羅、よろしく。」


「え!?付き合うって?だって女の子同士なのよ?」


セイラの言葉に混乱し、私たち二人を呆然と見つめる有海。その体は小さく震えている。


「そんなの好きになったら関係ないもん。ひびきくんだって、受け入れてくれたし。」


「うそ!!そんなのウソに決まってるわ!!」


セイラの言葉に突然ヒステリックに叫びだす有海。


「どうした!?有海!!何かあったのか?!」


少し遅れて登場したのは、幼馴染の和真。

心配そうに有海を見つめた後、久しぶりと私に声をかけてくる。



「あ、うん。久しぶり。」


ああ、普通だ。よかった、ちゃんと話せるじゃん。ヘラッと笑った私に、セイラが心配そうに抱きついてくる。


「ちょっと!!私の響ちゃんに触らないで!私の方が響ちゃんのこと大好きなんだから。」


なぜかヒステリックに叫びながら、有海がセイラと私の間に割り込んでくる。


しばらく見ないうちに、こんな風にハキハキ自分の意見が言えるようになったんだな〜と感心した。


ってそれどころじゃないな。


今にもセイラと取っ組み合いの喧嘩になりそうだ。


「何言ってるの!?響くんは私の恋人なの!あなたはただの幼馴染で、しかももう一人の幼馴染と付き合ってるんでしょ!?響くんに内緒で3年も前から付き合ってたそうじゃない!普通一番に話すべきなのに、ひどい人。」


「あなたに言われる筋合いはないわよ!さっきだって響ちゃんを押し倒したりして、いやらしい!!響ちゃんに変なことしないで!!」


いや、ちょっと声大きいかなぁ(汗)

ほら、ご近所に聞こえちゃったりするかもしれないしさぁ。


「響、お前あの子と付き合ってるのか?」


二人の剣幕に圧倒されていると、いつの間にか近くまで来た和真に問われた。


「ん〜、まあ、そういうことになるのかな。最初は都合が良かったからオッケーしたけど、最近はちょっと好きかなぁって思うんだよね。」


和真なら差別したりしないと思い、セイラに対する思いを打ち明ける。

私の言葉を聞いた和真は、なぜかみるみるうちに不機嫌になっていった。



「なんで勝手に進学先変えたりしたんだ?!」


「え…?そんなの、気まずいからに決まってるじゃん。二人の邪魔したくなかったし。」


なんでそんな分かり切ったことを?


「お前がいなくなってから、俺たち気がついたんだ。すごく大事なことに。」


思いつめたような表情で、拳を握りしめる和真。


「なに?」


しばらくの沈黙。いつの間にかセイラと有海の言い合いも静まっている。

有海も和真と同じような表情。



「俺たち本当はお前のことが好きだったんだ!お前がいなくなってから、二人で会ったりしたけどお互い気持ちが冷めてて…考えたんだ。俺たちの間にはいつもお前がいて、俺たちの好きっていう気持ちはお前に向いてたんだって!だから…また、俺たちの元に帰ってきてくれよ!大切にするから!」


和真の告白に空いた口が塞がらない。

こいつは何を言ってるんだ?

わけわかんないんですけど…普通自分が誰を好きかって分かるもんじゃないの!?


はいそうですかって、納得できるもんでもないし。


「勝手なこと言わないで!!何なのよあなたたち、私の響くんにいいよらないで!私と響くんはラブラブなんだから!チューだって済ませてるんだから!お母様公認なんだからぁ!!」


セイラが私の首に巻きつき、二人を威嚇するように叫ぶ。


それを聞いた二人は、セイラを引き剥がそうとしはじめもみくちゃにされる私。


「ちょ、まっ…待ってって!…いた、いたたた!せ、セイラ、爪、爪刺さってるから!!」


「もう!響ちゃんから離れてよ!痛がってるじゃない!」


「いや、有海か引っ張るから余計…和真はどさくさ紛れに触るな!!」


さり気なく私の腰に手を回そうとしていたので、思いっきりつねってやった。


「その子は良くて俺はダメなのか?俺のことまだ好きだろ?」


にっこり笑うその顔は、確かに好きな顔だ。でも、今はセイラがいるし…


「後から割り込むのはやめて!響くんは私に夢中なんだから!」


「割り込んだのはそっちでしょ!?響ちゃんは私達の大切な人なの!たかがキスで自分のものになったなんて思わないでよね!私だって響ちゃんとキスしたことあるもん!」



んん??!

有海とキスした覚えはないんだけど…

そんなことあったっけ?


「嘘言わないでよね、響くんキスしたの初めてって前に言ってたもん!まあ、してたとしても記憶に残らない位下手だったんでしょうけど!」


「そんなことないもん!じゃどっちがキスが上手か勝負しましょうよ!選ぶのは響ちゃんよ!」


有海の素っ頓狂な言い分に、断るかと思いきや、なぜか受けて立つセイラ。

いやいや、セイラさん?私のこと好きなんだよね?他のことキスしてもいいの??


とりあえず、そこんところを強調してみるが怒り心頭なセイラは聞く耳を持たない。


ぎゃあぎゃあ騒いている私たちを、和真はニヤニヤしながら傍観している。有海を止めろと言っても、「だって、俺もその勝負参加したいし。」とか言って、止める気は無いらしい。


ジリジリと迫り来るセイラと有海。

私は逃げの姿勢を取るが、セイラに捕まっているので逃げられるわけもなく。


激しい攻防を繰り広げたものの、結局は濃厚なベロチュー大会が開催されることになった。



どうしてこうなった!?



誰かこの人たちを止めてください!!





閲覧ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 和真も有海も自分勝手ですね。恋人がいるのに主人公も欲しいだなんて。 ちょっと都合がよすぎるのではないのでしょうか? これならいっそ、セイラちゃんと幸せになって欲しいですね。
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