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孤高の鷹は、花を愛でる  作者: 刄津まゆり
少年と赤子
2/21





目が覚めると、そこは冷たい砂利の上だった。

梓乃はぼうっとしている頭の片隅で、無意識に骨の具合を確かめていた。



父の教訓が蘇る。


『梓乃よ、怪我の失神から目覚めた時にはまず、己の骨の具合を確かめろ。単純に二つに折れているのか、複雑にいくつも折れているのかでは、痛みの種類が違う。骨が折れた時に、覚えておくといい…』



あぁ、まるで呪詛のようだと。そう、思う。


生まれて歩けるようになった頃には、既に父・小太郎から忍びとしての訓練を受けていた。

その長年の教訓は、血となり肉となって、今の梓乃を蝕んでいた。




…しかし、とりあえず危機は脱したということなのだろうか。


幸いにも、骨はどれも折れてはいない。多少、肋の骨が痛むものの、それも大した怪我ではなかった。

頭が冴えてくると、崖から落ちた後の事を思い出して、改めて己の幸運に感謝した。冬の川の激流の中を、よくも溺れなかったものだと思う。



逃げている途中に負わされた傷も、冷たい川の水で止血されていた。状況は思っていたよりもずっと良いようだ。滑らないよう、先に上体を起こし、それからゆっくりと腕の支えで立ち上がる。

その拍子に、腰に差していた二本の刀が、ガランと乾いた音をたてて地面に転がった。

当然のことのように再び身を屈めて腕を伸ばしたところで、梓乃はふと、その動きを止めた。


目の前にある二振りの刀は、一般のものより少し刀身が短く軽い作りになっている以外は、何の変哲もない只の刃物だ。



だが、これは二つある。

二刀流使いは、梓乃の一族が古くから受け継いできた、由緒正しい戦い方。


それを…抜け忍となった自分が、一族を示す二つの刀を下げるのはおかしいのではないかと、疑問に思ったのだ。



暫しその場で考え込み、結局二つとも拾い上げた。


生き方や今後のことを考えるのは、後でいくらでも出来る。

ひとまずは、この山から確実に生きて脱出することが先だった。



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