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クラスのギャルは平穏の為に今日も戦う!

作者: せつなっち

勢いで書いた。

 初めまして。

 私はギャル。クラスでは何とかスクールカーストのトップの座にいる。形式上は。

 私は私の平穏のために今日も戦う。なんとか高校卒業してやる為に。


「ユカ~?購買行こ~?」


 昼休み。私は親友のユカを誘った。

 私の家は両親共働き(ホストとホステス)でご飯なんて作ってもらえない。むしろあの人達に作らせると暗黒物質ダークマターが精製されてしまうため不可能なのだ。

 それでも私は小学校にあがるまで暗黒物質を食していた。おかげで常に体調が悪かった。

 幼稚園ではお泊りとかが無かった。しかし小学校で給食というものに出会って以来、暗黒物質が料理として成り立っていないことを知った。

 購買のパンは魅力的だ。いつも焼きそばパンを巡って争いが起きている。

 そういう時に男子生徒は良いな……と思う。

 ユカと相談した結果、購買の近くで待機していたクラスメイトの栗原くんに代理をお願いすることにした。


「栗原くん、私たちのパンも買ってきてくれない?お金渡すから。お願い……」


 私は精一杯の上目使いで栗原くんを見た。でも栗原くんは私の胸元を見ていた。

 完全にパイチラしていたので仕方ないと思うがちょっと悔しかった。


「は、はい!」


 緊張した顔で私を見た彼は、混沌の中へ飛び込んでいった。

 太っている彼はなかなか頑張っていた。

 女の子とロクに話せないであろう彼は私たちのお願いを断ることはない。


「いーぞー栗原ー」


 他人事のように彼を応援していたユカはちょっと失礼な態度だったが、何も言わなかった。私だって彼を利用している。


「佐伯さん、中根さん!持ってきました」


 栗原くんは汗だくになりながら、パンを私たちに渡すと一目散に逃げ出した。お礼も言えなかった。


「はぁー、あのブタ、キモ」


 ユカはいつものように彼を馬鹿にしていた。私はちょっとムッとしたが、いつものことなのでスルーした。私たちは屋上で食べることにした。あそこにはリア充カップルがたくさんいるが、邪魔さえしなければ教室よりかは居心地がいい。教室は私たちの同類が陣取ってて面倒くさい。


 屋上ではクラスメイトのイケメンをたくさんの美少女達が囲んでいた。彼の名前はヒカルくん。そして彼らはヒカルハーレムとか呼ばれている。格好良いなとは思うけど、ちょっと好きになれない。


「あんな面倒くさそうなのよくやるよねー」


 これについては同意である。なんでわざわざ好き好んで女がたくさんいる男を狙うのか。確かに彼と話していると心が癒される感覚があるけど、女共と戦争するのはまっぴらごめんである。

 

 私とユカは食事のあとにちょっとお化粧直し。男子はよく分からないかもしれないけど、これは女にとって大事なことだと思う。一番気を抜いちゃいけないところだ。

 私はがっつりアイラインやカラーのアイシャドウをしているため、汗をかくと気持ち悪くなってくる。じゃあなんでやるのって?そりゃ私が私であるためだよ。


 だって私、高校デビューだもん。っていうか、濃い目のメイクしてる子って高校デビューが多いと思う。中学校で目立ってるのは、元々可愛い子かヤンキー系って相場は決まってる。

 私は中学校の時は大人しいグループにいた。今も割と大人しい性格だけど、昔の私は図書委員とかやってそうな眼鏡っ子だったし、しかも太っていた。

 だからクラスの目立つグループの人達からは嫌われていたし、いじめのようなこともあった。


 中3の夏、すべてをかけた私は勉強とダイエットと化粧を死ぬ気でやった。死ぬ気でやった私に死角は無かった。受かったのは隣の県の進学校。知り合いゼロ。やったぜ!

 しかも、ダイエットしたのになぜか胸だけ痩せず、立派な巨乳になりました。可愛い下着とか買うの超緊張したよう……。

 でも地味な顔を隠すためにメイクを濃い目にしてた私は、同じような濃いグループに入ってしまった。

 なんとか高校卒業まで平穏で生きていきたいのである。


「あんたさァ、好きな男いないの?」


 ユカはまた恋愛話を持ちかけてくる。好きな人?男なんか怖くて近づくのも面倒くさいんですけど。処女だなんだと馬鹿にしてくるユカは彼氏の他にも男がいるらしい。引くわ。

 しかし、曖昧にすると関係が悪くなるので、遠距離の彼氏がいる設定にした。そして従兄弟のお兄さんと撮ったプリクラを渡してみた。


「へぇ~なかなかイケメンじゃん?」


 ここでまあまあイケメンの彼氏じゃないといけないのが不思議。女子高生は男をほとんど顔で判断するので仕方ないと思うが、これもまた面倒くさい要素である。フツメン以下の男と仲良くしてると馬鹿にされるのだ。別に誰と仲良くなろうがどうでもいいじゃん。


 授業が終わると、クラスメイトのある子を追いかけた。彼女は図書委員で、周りからは地味子と呼ばれている。昔の私の同類である。


「あっ、佐伯さん……」


 彼女は私にちょっとビビっている。気持ちは分かるがそんな嫌そうな顔をしないで欲しい。


「この間、借りた小説読んだよ!ありがと!」


 私は彼女に小説を返し、適当な感想も言い合った。こういう話が出来る子は貴重である。もちろんネットにもそういう友達はいるが、リアルは別格だと思う。

 しかし、彼女はあまり私と関わりたくないのかさっさと言ってしまった。仕方ない。それも私のせいだ。私がクラスで地味子と喋っていたらユカ達に馬鹿にされたのだ。あれは彼女を傷つけてしまった。

 そこでしっかりと反論出来なかった私も悪い。標的にされるわけにはいかないのだ。平穏に高校を卒業するためには。

 だから出来れば彼女にもこちら側に歩み寄る努力をして欲しいと思うのは、思い上がりなんだろうけど。栗原くんだってそう。元デブの私からしてみれば、頑張れば嫌な思いしなくて済むのにって。


「ああ!佐伯ちゃんじゃーん!一緒に帰ろー!」


 うわ。うざいのが来た。

 クラスで唯一のギャル男、森。彼は色んな女の子にこういう態度を取っているが女子達には嫌われている。彼は自分がモテると思ってるみたいだけど。

 森が妙な自信を持ってしまうのは押しに弱い女の子が着いていってしまうためだ。ああいう連中は見た目が派手で面白いトークが出来ればいいと思っているが、彼の話は面白くない。

 狙ったように女性誌の特集の話題を出す男なんて私には無理。しかも森は私の胸をガン見してくる。


「あ、森くん!ごめんねー急ぐから!じゃーね!」


 私は逃げるようにして去った。昔の私だったら捕まってしまっていたと思うが、濃いギャルメイクでちょっと自信をつけた私に死角はない。

 ギャルメイクは「面倒な男を遠ざける」要素もある。これはどういうことかって言うと、微妙な男はギャルを好きになることはない。ギャル男に好かれることはあるけど、キモメン避けになる。

 始めから近づいて来なければ、傷つけることもない。まあ、これも思い上がりの可能性はあるけど、モテるナチュラルメイクとかやって、好きでもない男に好かれても疲れるだけなのだ。

 クラスメイトにも元の顔は普通なのに、上手にナチュラルメイクしてて結構モテる女の子がいる。まあ、例のハーレムの一員なので告ってきた相手を振りまくっていて、女子達には目の敵にされている。

 そういうのも面倒な要素。


「あっ……」


 さっきから言い訳ばかりしてる私だけど、もちろん好きな人はいる。男は怖い。でも彼だけは別。

 今、彼はグラウンドをランニングしている。卓球部だけど。

 卓球部で、眼鏡で童顔で背も低い。運動は結構出来る。勉強も出来て生徒会に入った彼。

 ルックスは微妙だけど、私の王子様。ユウキくん。


「はあ……」


 私はいつも彼を遠くから眺めるだけ。レギュラーじゃない彼は、よくグラウンドを走っているけど、飽きないのかな?とか失礼なことを考える。

 小学校高学年の時に一緒のクラスだった彼は、この高校の中等部から入った。高校で出会った彼は私のことなんか覚えてない。いや、見た目が完全に違うし、違う県なので会えると思ってないのだろう。

 実はこの高校を選んだのは彼がいるからで、知り合いゼロというのは嘘。

 小学校の頃から友達が少なかった私の唯一の男友達だった。


 こんなんじゃダメだ。

 平穏を守って無事卒業?馬鹿か私は。

 目の前の唯一の希望をみすみす逃す気か?


 何度もユカと合コン等を繰り返した結果、私には彼のような男性しか無理だと分かった。

 遊んでそうな男は無理。遊んでそうな私が言うのはちゃんちゃらおかしいけど無理なものは無理。


 今日こそ言おう。

 意を決して、休憩している彼の前に出た。


「あの……佐伯です……覚えていますか?」


 私たちの戦いはこれからだ! 

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