TILE5ー14 記憶がない。
「愛歌ちゃん、着いたよ」
と真吾の声で目が覚めた。薄ら重い瞼を開ける。
時間はとうに夜九時を回っていた。
「ありがとう....。」
「しかし。大変だね。」
「....?」
「い、いや、こっちの話しさ。」
....真吾?
あまり20代、もあと同い年には見えない彼の雰囲気とは違う。何かを、真剣に見つめる表情だった。
「まぁ、また明日。捜査にこさせてもらうね。」
「........。」
おやすみ。と手を振って彼は車でどこかへ戻って行った。
翌日に。事件は起きる。
朝、わたわたと慌てたもあが横を通り過ぎる。
「先生?何か、あったのですか?」
「あ、あぁ。愛歌か。........優は村内で、飛夜理は病院で....」
「もあ!」
後ろから真吾がやってきた。
やはり、か。と思いながら二人はそれじゃあ。と職員室の方へ走って行った。
「....今日は、もう帰らないと、ね。」
「悠志。そう、わかった。」
薄らにこっと笑い、彼は校門の方へ歩いて行った。
私は、どちらにも進むことが出来なかった。教室の方へも校門....家の方へも。進めば死に近付く気がして。
でも、結局、私は家の方へと歩き出していた。
・・
....それから、記憶がない。