TILE5-13 病院、悪い夢
頭が回らない。
私は運転席の真吾の方を向いて少し口を開いた。
「今のは、全て真実なの?」
──────────────
目的地に到着した。
私は車から飛び降り、言われた『病室』を探した。
つい数日前まで私もいた所だからなんとなくは解る場所。
──────見つけた。
個室だった。名前の表記には、確かに『坂下飛夜理』と書いてあった。
ガラッと引き戸を引いた。
「飛夜....っ!」
彼はベッドで横になり、眠ってる表情にも取れる。
周りには両親も妹の姿も見えなかった。
彼のそばに行き、力ない手を見た。ピクリと少しだけ動くと同時に真吾がやって来た。
「愛歌ちゃん。」
「......か...?」
同時にやはり薄らと声が聞こえた。
「あ...い、か......」と名を呼ばれる。
「飛夜理....馬鹿、馬鹿飛夜理」
....自分の手をぐっと固く握り俯いて呟いた。
何時もより力はなかったけど、頭を撫でられる。彼はふっと笑う。
「馬鹿....闘うって決めたのに....こんなんじゃ....こんなんじゃ....!」
「だ、いじょ、うぶ。だから....」
そう言って頬を撫でる。
私より大きな手。それはわかってる。でも、温かみも温度感も感じられなかった。安心感....も。
「嘘だ....嘘だ。安心出来ない」
「....愛歌ちゃ─────」
「大丈夫....さ。信じ、ろ」
彼はニコッと笑うとさっきまでの手に力が失われた。
口が曖昧に動きだす。謎も闇に消えていく中、それ以上に分からない感情が表向きになる。
「死なないで....ぇ。もう....やだ.......」
真吾が心配そうに見ながらも「帰ろ、うか」と呟いた。
外はもう暗くなっていた。車に乗せてもらってそれでも私の家....村の中心部までは一時間半弱はかかる。その間に目を瞑った。
眠ってたから、夢を見た。
残酷、な夢かもしれない。
舞菜がいなくなって、飛夜理もいなくなって、皆いなくなって独りになる夢。自分が何一つ変われないせいで、皆を殺してしまう夢。
もう、やめて....。そう、私は心の中で思ってた。