TILE5-12 明日なんてあればね
あの後、帰ってきたのは夢、一人だった。
「用事が出来たみたい、お母さんから連絡があったみたいよ」と夢は話す。
事情はもあ先生も知ってる....ならおかしくはなかった。
「さぁ、授業始めましょうか」
先生が話した。
....何一つ、頭に入らない授業。今日がとても長く感じだ。
一体何時間経った?
今は一体何時?
そんな疑問だけ、私の脳内がぐるぐる回る。脳裏を走って、消えて....なんにもわからない。
「....さて、今日は終わりね。
....また、明日なんかがあったら....会いましょう。」
....彼女も察してる。
この村に『明日』なんかがあるかすら、わからないことを。
........わから、ないことを。
「帰ろう、か。愛歌。」
「....................うん」
飛夜理に声をかけられて、私の意識は元に戻る。我に返る。
........でも、わからないことはわからない。
「........此処で、いい」
飛夜理に言ったら、彼は驚いた表情をした。
「あ、でも...」
「いいの....真吾は、もう家に戻ってもいい、と言ってた........遺体も撤去ようだし....もう。生活環境も....整ってるわ。」
「........」
「....大丈夫、よ」
そう言うと、もう飛夜理は口を開かなかった。
「何かあったら....」と言葉を続けようと思ったが辞めた....。
「また明日ね。」
ただ、それだけを言って、私は自分の家に向かった。
心配そうな目の彼を背に。
『愛歌....。貴女、馬鹿ですね』
「....は?」
『私が話さなかったのも悪かったですけど........』
「....なによ、ふぶき」
声は、途切れた。
ノイズだけが彼女の声の代わりに聞こえてくる。
「なによ。意味わからない」
呟き、歩いて家に着いた。
二階で鞄を降ろし、私服に着替え、一階のソファに腰を掛け膝掛けを掛けてテレビを付け、音と光だけを観ていた。時間は三時過ぎ。暖かい....。日差しが暖かい。
「....」
プルルルル........プルルルル........
電話の音がした。
....時間は............7時。
四時間も寝ていたか....
電話の音をまた聞き受話器を手に取った。
「はい」
『愛歌ちゃん....!今すぐそこなんだが....出られる様に用意をしておいてくれ!話はそれからだ....!』
「ちょ、真吾さ....?!」
プツッ
ちっ、あの野郎。なんて思いながら表に出る。
「愛歌ちゃん、乗って。病院に向かうよ!」
「説明....を」
車に乗り込むと話を切り出した。
実は....と真吾は息を整え話す。私は「修羅場を、私なんかより....違うはずよ。」と。
「実はな....」
彼の話を聞いた時、私の中に声に出来ない、言葉に出来ない感情が生まれた。