TILE5-11 怯えた
「ゆ....う....?」
私は薄ら口を開く。
どうして....そんな。
すると、優も口をゆっくり動かした。
「....わからないの、です。」
「え?」
「何が、起きたか、わからないんです....気が、ついたら....血まみれの、舞菜さんが....っ!」
「優....お前....」
「可笑しいですよね....でも....薙刀が....ま....舞菜さんの........その....刺さってて....僕の手にも....赤い....紅い、血が....」
「優....」
「僕、どうしちゃったんでしょうか....」
「優。」
「もう、此処にも....」
「優!!」
私は....無意識に声をあげた。
なんでかな。怒り....が、こみ上げてきた。
親友が殺されたから?こんな風に優が言うから?おどおどした彼が嫌だから?それとも八つ当たり?
違う。どれも、違う。
私の感情の中にそんなのはなかったの。
「なんで、理由を言うのよ。さあ....どうして舞菜を殺したの。なんで。どうして!!」
「愛歌、落ち着け。」
「....話しますよ。僕の、曖昧な記憶で良ければ....」
私は敢えて答えなかった。
もう、感情が私も欠けていく。
飛夜理は代わりに「話してくれ」と言う。
一応、話だけは聞いていた。別に、話して欲しくない訳でもなかったから。
「昨日の、夕方です。覚えてますか?....愛歌さんの所に舞菜さんを予備に行ったときです。あの後、舞菜さんと....今度の灯篭流しの川の方へ行ったんです。それで、「鬼」が祀られてるっていう場所の方に行ったんです........それから、記憶が途切れたんです。」
優は、そこまでで話すのを辞めた。
「ふふ。まぁ、何を話しているの?」
「ね........姉さん....」
....どこか、怯えた表情をしてた。
夢に、怯えている........。
彼女は怪しく笑う。
「教室に、入ったらどうかしら?もう授業始まるわよ。....優、貴方はちょっと来るのよ」
「....は、はい....」
優に話す時だけ。彼女の目が怖かった。
飛夜理にいくぞ、と言われ、二人に背を向けた。