TILE5ー10 如何にも....
流れ星、か。
村は空が広く見えるからある意味、外で見上げれば広く見える。
「そうか。」
「俺は....その....」
いつも見る飛夜理の目とは違った。色が、まず違った。
何を考えてるのかわからない『目』だったのに。
今は。少しわかる『目』。
奥に奥に、色がある。ずーっと、奥に。色。
深い、青。そんな気がする。しっかり、自分の考えが持ててる目。
....少しすると、思わぬ言葉を飛夜理が口にした。
「........迷信だと、思えねー気がするんだ。」
「....?」
「あのなぁ....なんて言おうか。村に来る前、なのか来た後、なのか....に、話を....」
「........もういいよ。飛夜理」
「あ、そうか....」
わかった。....確かに話したかもしれない。でも、話してないかもしれない。今となっちゃ、誰もわからない....唯、一人を、覗いて。
「....私、今日はここにいる」
「え?....それ、大丈夫なのか?」
「........」
「舞菜に余計心配掛けるから....ここは流石に辞めたらどうだ....」
「........」
どの道、私に帰る場所も、居ていい所もない。選りに選って、こんな時なんだから尚更。誰にも迷惑を掛けたくない。もちろん....飛夜理にも。
「風邪も引くし、多分中には入れないだろうし....どうするんだ....よ?」
「なんとかする。だから....」
「もういい。」とでも、私の口は言いた気だった。
舞菜にも心配を掛けるかも知れない。飛夜理にも....皆にも。
初めてだった。初めてこんなことを思った。
「なら....家、来るか?」
「....いい、のか?」
「まぁ。」
「....................なら。」
「じゃあ、帰ろうか。」
彼はにこっと優しく笑った。それで、家路に向かって歩いた。
真吾も「飛夜理君なら安心だな」と許してくれた。
家に着いて、事情を話したら彼の両親も妹も暖かく迎えてくれた。
....初めて。こんな家族の暖かさを知った。
私の家は基本、母はよく、帰ってこない日が多いし、父は夕方に帰る頃にはもう家にはいない。弟に関しては時々祖母が連れて帰る。食事も基本一人だ。家族団欒なんて、有り得なかった。
「愛歌ちゃん?大丈夫?」
「あ....はい」
そう答えると、ふふ、と笑い、料理を薦めて来られた。
そりゃあ、最初は慣れなかった。でも、一晩もしないうちにもう慣れていた。人間とは凄いものだ。
....なんて、思ったのも束の間。
次の日、学校に行くと、優の様子が変だった。
「優、どうした」
「あ....ぼ....僕....」
どう見ても、目も全て可笑しかった。カタカタと口元、手足は震え、言葉すら上手く話さない。
「落ち着け....今なら、許される事かも知れない....」
「そんなの....ある訳ないじゃないですか....」
如何にも変だ。
優は震える左手を右手で押さえて良く分からない方向を見て、そっと呟いた。
「ま....さ....を....殺....し............」
一度は何のことかさっぱり解らなかった。
もう一度、ゆっくりゆっくり話す。
「舞菜....さんを........殺し....た........んで............す」
「!!」
なんだか、不思議だった。別に怒りも込上げない。ただ、なんで?と聞きたい。
なんでこんな事をしたか....それだけが知りたかった。