TILE5-7 見慣れた
「さぁて、帰ろうか!暗くなってきた事だし」
飛夜理がそう言った。
確かに。時間も時間だ....
『大丈夫なのですよ....暫くはこうしていられます....貴女が間違わなければ....』
その、老婆....といえば大袈裟だが、暗い声は....ふぶきの声は。
風と共に薄くなり、消えていった....
「でも、愛歌。どうする?」
「私....?帰るわよ。何言ってるの?大丈夫。」
くす、と小さく笑ってみせた。
それに....作り笑いと自分がわかるせいか、ちくりと胸が痛んだ。
つまり....『彼らを騙すな』と言うことだろうか。
「なら。俺、帰り道一緒だし。送るよ。」
肩にぽん、と飛夜理は手を置いた。
舞菜はにこ、と笑い、「お気をつけてね〜お二人さん」なんて言って自分の道を歩いた。
カラカラ....
飛夜理が乗ってきた自転車の音が田舎道に響く。
どちらからもなく、口を開いたりしない。
『家は、一人で帰ってはなりませんよ....』
いきなり、ふぶきの声が聞こえた。
一人で帰ってはいけない?なんで?何が、あるの?
そんな事を思いながら家の方へと足をすすめる。
「あい....!....!........か?」
遠くで薄く声が聞こえる。
「愛歌!!」
声を聞き、飛夜理....か、はぁ、と息を吐いた。ただ、珍しくあんな大声で呼ばれたら驚く。
気づけば家の前。
それを教えてくれたのだろうか?
「なぁ、愛歌。匂い、しないか?なんつーの....『血の匂い 』がさ....?」
すん、と鼻を利かす。
確かに。薄らとだが、わかる。生臭い、血の匂いが。
私の家からか....おかしい。
飛夜理と家に入ることにした。
───────バンッ!!
彼がドアを開け、その先。
リビングの辺りから赤いものが見える。
赤く、光る....『何か』....
いや、見慣れた『何か』が....