TILE5-6 微笑んだ
隠す....そっか。私は傍から見たらそう見えるか....。
それから、飛夜理は一言足りとも口にはしなかった。
「....わかったから。大丈夫。そのうち。貴方にも話すから。」
自分でも驚いた。
声のトーンが....あまりにも低かったから。かすれていた、から。
「大丈夫。うん....だから離して」
「....」
飛夜理は反応しなかった。
だから、私はもう一度。
「離して」
と言った。
「いやだ。」
彼はそう返事をした。
意味がわからない....なんで....
そう、自問自答。
「意味がわからない....」
なんだか、熱い水が、私の頬を伝った。止まらない。
なんだ....?
それだけではなかった....
私の、口が勝手に、なにか言い出す。
「意味が、わからない....あな、たが....わたし、を....心配する、意味、が、わか、ら、ない」
私からしたら、ただパクパクと口を動かしただけ。
でも、一拍置いてから。飛夜理は答えを出した。
「なんで、か?心配だから。....それ以外に理由はいらないだろう?」
そして、私の肩を握ってた彼の手の力が強まる。
優しい様で....強かった。
「....それ以外に理由は、いるか?」
理解できた。いらない。
首を左右に降る。『いらない』と。
もし、彼の気持ちが偽りなら、こんなふうに人に優しく出来ないだろう。
優しく私を離すと、彼は私の頬に手を触れた。
なにか、拭き取る仕草をする。
「な?これが涙。それは、ここまで耐えてきた証拠。だから、もう耐えなくていい。辛いなら辛い。苦しいなら苦しい。それで、いい。」
そう言って何時もの様に、飛夜理はニコッと笑った。
その笑顔は私が好きだった笑顔。
なんにもわからない私に色々な事を教えてくれた笑顔。
「ほら。舞菜来たぞ」
「!」
背中をポンと叩かれる。
やぁ、とぎこちなく笑う。
「なにやってんのー!探したんだからね!」
それから、舞菜のお説教。
でも、きっとここまで笑えたのは初めてだ。
後ろを向いたら飛夜理が優しい目で微笑んだ。