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TILE5-5 辛さも苦しさも
家に着いた。
今日はどうもいやだ。
「もういい!出ていく!!」
父の怒鳴り声が響いた後、私は家から遠のく様に走った。
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そうか。これだけは....いつか見た世界と変わらない。
「愛歌!なにして....」
「綺麗ね。秋空」
飛夜理の台詞を無視して私はぼやく。
オレンジから暗くなる空を見上げた。その空は私の心の色みたいだった。
「大丈夫よ。苦しい訳じゃないし」
「....」
「....飛夜理?」
黙り込んだ彼の目をそっとみる。
「また、嘘をつくのか....?」
え、と聞く前になんだかあったかくなる。
飛夜理....?
「苦しいなら苦しいでいい。辛いなら辛いでいいから。隠すのだけはやめろ」
低い声で私を抱きしめたまま、耳元で彼は呟いた。