TILE4-12 最後の願い
その日の夜の事だった。
いきなり異臭がして目が覚めた。
「なんだ....げほっ」
苦しい....体が重い....
這い蹲って、玄関へ向かう。
家族はみんな眠ってる....起こす気力なんてなかった。力なんて、なかった。
よなっとした体力で必死で歩いた。山を抜ける体力もなかった。ただ、一台車があった。
「飛夜理くんかい?どうかしたか?」
濱....崎....さん....
朦朧とした意識の中、何かを伝えようとしたが何も伝わらない。
そのまま、視界は真っ暗になった。
「飛夜理くん?飛夜理くん?!しっかりするんだ!もしかしたら....」
そんな濱崎さんの声だけが、俺の聞こえた限りの最後の言葉だった。
──────────────
あの後....俺は死んだのか....?
いや、こうして意識は....ある。
生きてるのか?
「災難でしたね。村の中には彼の御家族も....」
「えぇ。毒ガスで殺された様です。ほかの人々も同様に。」
....!?殺されたって....!
他って....舞菜や優たちも....?
「....濱崎さん?」
「飛夜理くん。目が覚めたか。」
「あの....」
「御家族....も平井さんも....ただな、空下家だけは遺体としても村にいた形跡もなかった」
空下家が....?
それ以外、意識が朦朧とし、考える事すら出来なかった。
「大丈夫ですか?」
先生の声だけにこくり。と首を上下にふる。
そうか....そうか....
一つ一つが理解されるんだ....
みんな....仲間は....みんな....
死んだ....そうか....死んだのか
妹も....家族も。
「仕事に戻らなければ....では先生。」
「はい。」
「それではな、飛夜理くん。また明日来るよ」
俺はそっぽを向いた。
なんだか、この人が嫌味たらしくて嫌だった。
先生も病室を出たら俺は一人で星空をみた。
すると、キラリと流れ星が光った。
なんだっけ....愛歌が、言ってたこと....
もう一つ、キラリと流れ星が流れていく。
その時、ひとつだけ、願い事をかけた。そして、朦朧とした、意識の中....ベッドに寝転んだ。
「坂下くん、大丈夫?」
女性の、声....
ひとつだけ、願いを掛けたけど....俺はどうやらもう無理そうだ。
「坂下くん!先生!!様態が!」
「しっかりして下さい!!二人目の死者を出す前に手当を!!」
ふた....りめ....?
分からなくなる。また意味が分からなくなる。
「───!────!!!!」
声が遠くなる....
....最初で最後の願い....聞いてください。
「....で....また....に。」
そのまま、俺の意識はなくなった。
ただ、暗闇の中に....周りの声だけが響く....
人は一番最後に耳の機能が停止する、と言うが....本当なのだな。
そのうち、俺の脳の機能も停止する。
息は....止まった。体は言う事を聞きそうにない。
あぁ、人は....最後になると....
いいや....考え、ないで、おこ、う....
俺は....覚めることのない、眠りについた。
そして、最後に、願いは届く、だろうか....
『来世で、また仲間達と会えますように』