TILE4-11 なくなる欠片
次、の日。
秋祭りが開催されるということで合図の花火が打ち上がった。
それで目が覚めた。
ピロロロ....ピロロロ....
電話がなってる。
妹か母が出たようだ。父は寝ているだろう....そう思い起こすのを辞めて一階へ向かった。
「....おはよう」
挨拶をするが、妹は気づかない。
電話に集中しているようだ。
うんうんと首を上下に降っている。知らない人なんだろうか。
でも、はっきりと声が聞こえ、わかった。
「....え?」
疑問符が着いた時、表情が変わった。なにがあったのだろう。
「....そうですか。あ、お兄ちゃん。いるんで、変わりましょうか....?」
俺か?変わるのか?と妹に聞く間もなく電話を差し出してきた。
「はい」
『飛夜理?舞菜だよ』
珍しく大人しい声の舞菜。
どうかしたか?と問う。すると、舞菜の声のトーンは低くなる。
『お....落ち着いて聞いてね?』
「あ、あぁ」
カタカタと声が震え始める。
ゆっくりゆっくり息を整える。
大丈夫か?と受話器の向こうの舞菜に問いかける。
『あ、あのね....』
....舞菜からの、電話を終えたらすぐ、俺は『彼女』の所へ走り出した。
近いから走って行くにはすぐの距離だった。
「はぁ....っ、はぁ....」
夏用のサンダルを履いて走ってきたから足が痛いはずだが痛みはない。
「はぁ....あ、愛歌....!!」
呼べなかった、呼ぼうとしても返事がない、と感じると呼べなかったが....やっと声になった。
神社の本殿の前。賽銭箱の、影。
人々がはっとこちらを向いた。
なんにも頭の中にインプットなんてされない。
状況も....場の空気も....
信じたくない。現実も....
確かに、仲がいいかと聞かれたら、あまりよくないと答えるだろう。優しいかと聞かれたら、あまりと答えるだろう。
ただ、いい人だったかと聞かれたら、間違いなく、偽りなく、はいと答えるだろう。
「あ....い....か」
妹も静かになった理由も、舞菜が大人しかった理由も、これでつながった。
....愛歌が死んだって....
舞菜が言ってたことがリピートされる。
真実は静かに現実になっていく。
「....落ち着きたまえ」
....刑事....濱崎さん。
彼は山も当てた。愛歌が殺されるって事も、山をかけていた。
当たるかもしれない、そう分かってたのに、助けられない、それが悔しかったのか、表情が彼も歪んでいた。
肩に乗っている彼の手を弾いて俺は村の中を歩いた。
なんだろうか。その単語しかもはや頭にはなかった。