TILE4-9 曖昧な記憶
それから数日経った。
もうすぐ、始まるのは秋祭りだ。夜中に寝付けずゴロゴロと転がっていた。
朝、5時を指す。山の上にあるため、あまり日の出は早くない。
ある程度明るくなってきたので早朝の村を散歩することにした。
『きぃぃぃぃぃ』
痛いほどの耳鳴り....なんだろう....
暫くすると、耳鳴りは止まった。
「なんだ....?」
『飛夜理、聞こえますか....?』
聞き覚えのない声。周りには人っ子一人いない。一体誰だ?
「....誰だ?」
『己の名はふぶき。この村の忍....』
低い....でもこの声は聞き覚えがないようで、意外と曖昧な記憶の中に紛れていた。
『己と貴方は何度か会っています。記憶が、少々曖昧ではないですか?』
確かに....曖昧な点が、多い....
前から曖昧過ぎて分からなくなる事も少なからずはあったであろう。だが、それを自分の中で消しさっていたのだろうか....
「何度かって....俺には姿が見えないのだから会ってるかなんて」
そう呟くと目の前に白い髪のなんだろうか、肩の出た浴衣....いや浴衣でも足元が短い。声の割に顔は可愛らしかった。何処か真剣さの奥に少しの幼さがあった。
確かに、彼女とも、初対面な気はしなかった。
「こうなら、わかるでしょう」
ふぶきは呟いた。
例え記憶が曖昧でも首を上下に降るしか出来なかった。