真夜中の悪夢 命を刈る者
初めて投稿します、釜沼商店と申します。まだまだ未熟な為、文章も読み難いかと思いますが、よろしくお願いいたします。この話は、私が実際に見た夢を書いた物です。実は、知人に怖い話好きな人がおりまして、この話をした所、不気味だと気味悪がっていました。とてもリアルな夢で、登場する場所、家、風景など、今住んでいる場所そのものです。
はじめに
年に1、2度程、リアルな夢を見る事がある。 色やセリフ、感覚もはっきりしている。
感覚も食べた物の味、ケガした時の痛み、触った感覚までリアルなのだ。こんなリアルな夢でも、ストーリーがはっきりせず、途切れ途切れであったり、意味不明な物がほとんどだ。
ただ、滅多には見られないが、風景も鮮明でストーリーが完成している夢を見る事がある。
これから話す夢も余りにリアル過ぎて、将来の何かを暗示している様な気がしてならない。
さて、前置きはこのくらいにして本題の夢の話をしよう。
俺は家に帰る為、深夜の山道を車で走っていた。時計を見ると、もう0時だ。
俺の家は、小高い山の上にある。
周囲を木に囲まれ、近くには、一軒も民家がない。
車は街灯もない暗く細い坂道をひたすら登っていく。
道路の横には、杉林が広がり、ひとっ子一人いない。
ところがだ。
坂道の前方を誰かが登っている。
月明かりの為か、その姿が良く見える。
全身、黒い服装で頭には黒いベールの様な物をかぶっている。
どう見ても異様な姿だ。黒づくめのそいつは、俺の方を見た。
ベールのせいで顔は見えないが、目が合った気がした。
ヤバい。
直感的に、見てはいけない物を見てしまったと感じた。
俺は、アクセルをあおり、奴の横を通りすぎた。ルームミラーから見ると、奴の姿が小さくなっていく。
少しほっとしながらも、急ぎ車をとばす。
家が見えてきた。 坂道を登りきった所が家だ。
道は家のすぐ先で途切れその先は林になっている。
家の前に車を止め、降りようとした時、こんな事を思い出した。
俺は、この土地と家を買う時、不動産屋とある約束をしていた。
不動産屋は俺にこう言っていた。
「この物件を購入するに当たって、ある約束を守っていただきます。その約束とは、夜9時以降は絶対に家から出ない事。また、家から外も見ない事。絶対に守って下さい。そのかわりに破格の値段で、この物件をお売りします。」
俺は、約束し、とんでもない格安で土地と家を手に入れた。
なぜ、不動産屋がこんな事を言うのか、何をみたらマズイのか、俺は聞かなかった。
曰く付きの物件だったのだろうが、特に何とも思っていなかったし、適当に約束した。
こんな訳だから、約束の事も、すっかり忘れていた。
約束の時間は、もう3時間も過ぎている。
もしかして、不動産屋が言っていたのは、この事だったのか。
なら、恐らく奴は、ここに来るだろう。
見てしまった俺を捕まえる為に。
背筋が、ゾクリとした。 冷たい、嫌な汗が流れてくる。
あわてて、家に入ろうしたが、急にこんな事を思った。
ドアに鍵をかけて、家に立てこもっても、ムダなんじゃないかと。
奴は人間ではなく、霊的な何か得体の知れない者の様な感じがする。恐らく、ドアに鍵をかけても何の役にも立たないだろう。
むしろ追い詰められ、逃げ場を失って、かえってヤバい事になる。
家はダメだ。
なら、車で逃げるか。
いや、道は行き止まりな訳で、坂を下るしかない。
それでは、奴と鉢合わせになってしまう。
それは、まずい。
車もダメだ。
なら、どうする。
焦る俺の目にある物が写った。
家のすぐ側に10m程のやぐらが建っている。
そうだ、このやぐらに登って隠れ、奴をやり過ごそう。
俺は、やぐらの螺旋階段をかけあがり、てっぺんの踊り場に身を潜めた。奴が家にくれば、必ず中を調べるはずだ。
いない事がわかれば、あきらめて帰るだろう。 よし、やり過ごせる。
やぐらの踊り場に腹這いになり、下の様子をうかがった。
月明かりに照らされた坂道をゆっくりと奴が歩いてくる。
やはり、奴はこの世の者ではなかった。
月明かりに照らされているのに、影がなかったのだ。
奴は両手に何かを持っているようだが、良く見えない。
俺と奴とは、距離があるのに声が聞こえてくる。しわがれた低い声が聞こえてくる。
「カロウカ、カロウカ、ドコイッタ、ドコイッタ」
繰り返し、繰り返し、聞こえてくる。
やはり俺を探している。 カロウカって、どういう意味だ?
とにかく、見つかったら、ただではすまない。
奴は、坂道を登りきり、とうとう家の前に立った。
よし、そのまま家の中に入れ。
中を確かめて、あきらめて帰れ。
俺は祈った。
ところが、奴は家を見ているだけで、中に入る様子がない。なぜ入らない。
結局、奴は後ろを振り向き来た道を戻ろうとしていた。
相変わらず、カロウカ、カロウカ、ドコイッタ、ドコイッタと言っている。
よし、そのまま帰れ。
あきらめて帰れ。
少し時間がたった。
もう、いなくなっただろうと思い、確認しようと、また下を見た所、俺はギョッとした。
奴はまだいた。
さっきまでは、背を向けて帰ろうとしていたはずなのに今は、こちらを向いている。
しかも、顔を上げ、俺を見ている。
ベールで顔が見えないのに強い視線を感じるのだ。
まずい、見つかっている。
心臓の鼓動が速くなる。また、奴の声が聞こえてくる。
「カロウカ、カロウカ、ミツケタ、ミツケタ」
奴は、やぐらの螺旋階段の所にきた。
相変わらず両手に何かを持っている。 もう、俺には逃げ場はない。
奴を殺るしかない。
武器になる物がないかとポケットを探る。
何かある。
だが、中で引っ掛かっているらしく取り出せない。
カツン、カツン
螺旋階段を上がって来る足音が響く。頼む、武器になる、何か出てきてくれ。
ようやくポケットから出てきたのは、小さな1丁の拳銃だった。
しめた。
これなら、殺れる。
俺は両手で銃をかまえた。
とうとう、奴は踊り場に上がって来た。
月明かりに照らされながら、仁王立ちに立っている。
両手に何を持っているのか、はっきりとわかった。
左手に大きな鎌を握っている。
右に掴んでいるのは、人の生首だった。
カロウカの意味がやっとわかった。 首を刈ろうかと言っていたのだ。 俺は、恐怖のあまり、声も出せずに口をパクパクさせていた。
震えながらも、銃の狙いを定めた。
奴の鎌が近づいてくる。俺は銃の引き金をひいた。
カチッ
弾は出なかった。
あわてて、引き金をひくが、空打ちの音がむなしく響くばかりだ。
弾なんか、最初から入っていなかったのだ。
茫然とする俺の喉元に鎌がきていた。
耳元で奴がささやく。
ニガサナイヨ
強い衝撃がはしり、目の前が真っ暗になった。
足元に何かゴロリと落ちた・・・・・
俺は、この話を書きながら、今でも思う
夢の続きをまた見るのではないかと。
なぜなら、最後に目の前が真っ暗になった時、確かに奴は言ったのだ。
まだ終わってない、と・・・・・
最後までお話にお付き合い下さいましてありがとうございます。夢で見た事を話す事は簡単なのですが、いざ文章にしてみると、どう書けばイメージしてもらえるか、怖さが伝わるか、考えながらで、なかなか難しいなと感じました。これからも精進していきますのでよろしくお願いいたします。ご意見、ご感想、お待ちしています。