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Side アカシア

なんか色々混乱してきた

なんで・・・なんでこんなに胸騒ぎがするの?

私は今日、ロゥにずっと言いたかったことを話した。私は、ロゥにずっとひどいことをしてきたと思う。でも、ロゥが私のことをお姉ちゃんって呼んでくれて幸福な気持ちに浸っていた。・・・はずなのに。


「アカシア様?大丈夫ですか?」


「ねぇ、今日が何の日か覚えている?」


「?」


なんで、誰もロゥのことを言わないの。


私は一人不満をくすぶらせていた。昔は何の疑問も持たなかった。だけどこの様子じゃあの子が消えても誰も気が付かないんじゃないかと思うほどだわ。なぜ?そんなにも、あの子の存在が認識されていないの?


何度も考えては、考えても無駄だと思って中断してきた思考を止められない。この嫌な感じがなくならない。


「ねぇ。」


「はい。」


「ロゥは今どこに?」


使用人に聞いても沈黙が返ってくる。嫌な感じが高まる。いったいどうしたっていうのよ。


「答えなさい。」


「申し訳ございません。お答えすることはできません。」


「なぜ?」


「・・・。ご当主様からの命でございます。」


・・・。よりによってお父様が?何故?あのお父様に限ってロゥの誕生日なんて覚えているはずもないし。そんなことを考えながらその場を後にした。この様子だと・・・かん口令が出されている可能性があるわね。


なら、今度は庭師のところに行ってみましょう。


何故かって?わが家の情報の伝わり方では庭師と料理人の下に最後に連絡がくるから。


「すいません。庭師さん。」


「これはお嬢様。こんなところに珍しい。いかがいたしましたか?」


「申し訳ないのですけど、お父様が今どこにいるか知っていらっしゃる?」


「ご当主様なら・・・今朝、地下室であわただしく何かの準備をしていたらしいですので、地下室におられるのでは?」


「そう。・・・ありがとう。」


「いえいえ。」


私は庭師の手前にこやかに別れたが頭の中は疑問でいっぱいだった。地下室はお父様から絶対に入ってはならないと特に釘をさされたところ。そういったご本人が入ったところすら一度も見たことがない。昔、ちょっとしたいたずら心で入りに行ったけど。厳重なのにも程があると思うほどの錠前が付いていた。そんなところに何をしに?何故かロゥのいる場所も教えてもらえないし。


私は地下室へと向かった。そこは、昔と変わらない不気味な雰囲気で私の足をすくませた。


「って・・・。」


ただ、昔と違う点があった。最近この部屋はよくつかわれているらしい。昔見た時は誇りまみれだった扉のノブが綺麗になっていることと。もうひとつは明らかな違い。錠前が全て開いている。


「な・・・なにこれ。」


鳥肌がたった。恐る恐る扉に手をかける。

「ん?」


誰かの聞き覚えのある声だ。

「――――を――――――――――――――せ。――――――――――――――つなぐ―――――。」


聞き取れない。だけど、これはお父様の声。いったい何をしているの。


ギィイイイイ


後でお父様の逆鱗に触れるだろうな・・・と思いながらも扉の内側へ地下室へと踏み出した。





そこで、何が起きているのかわからなかった。光を放つのは不思議な何かの陣。そして、その外で何かを唱えるお父様。そして、さっきやっと長い間伝えたかった想いを伝えたあいて。私の大切な妹が陣の中央に立っていた。


「契約は成された。」


その言葉をお父様が放ち―――――――――――――空気が変わった。私が見たのは消えていく妹の姿。



「あ     り     が     と     う」


ロゥの口がそう動くのを私は確かに見た。


何で?


何が起こっているの?


あの子に何が起こっているといるの?


「ロゥ・・・・・・・。ロ―――――――ゥ。いや。いや。嫌ぁぁああああああああああああああああああああああああああああ。」


私は私の絶叫が地下室に響き渡るのを感じた。


そして、ロゥの口が最後に紡いだ音を聞き取った。


そして            さようなら



何が、何がさよならなの?私は今日あなたと話したわ。それで、明日からはロゥにお姉ちゃんって呼んでもらいながら一緒にあなたのプレゼントを選びに行くはずなのよ?私はあなたに何をすれば喜ぶのかなんて知らない。あなたのことを何も知らない。でも・・・でも。知る時間があるはずなの       それなのに





私の目の前で何が起こったの?


光がおさまるとロゥが立っていた場所には何も残っていなかった。ただ、お父様が私を見ている。




「アカシア?何故・・・お前がここにいるんだ?」


「お父様。ロゥはどこに行ったの。」


「もういない。」


「何を言っているのかわからないわ。」


「お前の気にするようなことではない。」


「なんですって。」


「・・・・・・・・・・・。言った通りだ。」


「ロゥは私の妹です。私の家族です。私の大切な妹なんです。私の気にするようなことなんです。」


お父様はつかれたように笑った。


「聞きたいのか?」


「ロゥはどこですか?」


「あいつにはもうどこを探しても会えない。」


何を言っているの。


「あいつはこの世界から消えた。」


「何、とち狂ったことをおっしゃっているのですか?」


「お前は信じないだろうな。」


「聞いてみなければわかりません。」


私はお父様から話を聞いた。


そのことからわかったのは


ロゥはこの世界に必要とされていない存在だった。そういう世界から弾かれた人がこの家で必ず生まれる。その人はお父様が行った儀式によってその人の存在つまり命を代償にこの私の生きる世界の寿命を延ばす。そして、代償となった人はこの世界から存在丸ごと消える。ただ、そのものがいた痕跡は残るらしい。そして、消えた者を戻す方法は見つかっていない。その方法を探した人もいたらしいが、契約内容は時の流れの足枷と生贄の命を等価交換することと等しい。交換されればその時点から足枷としての役目を持つ。役目と言うのは人が誰しも持っているはずのものであり、必要とされているということでもある。その役目は他の者に揺るがされることは決してない。


つまり、足枷と言う役目を変更することはできない。



私はロゥが戻って来ないということを理解してしまった。くわしい説明を聞いて理解したんじゃない。だって・・・この何かが欠けてしまった感覚がなくならない。それに、目の前で消えてしまったのを見たのは私自身だから。頭でわかっても心が受け入れられなかった。


私はふらふらしながら呼びとめるお父様を無視してロゥの部屋へ向かった。


「何かご用でしょうか?」


いつもみたいにいるんじゃないか。また、さっきみたいに話せるんじゃないか。そんな気がしてならない。


「ロゥ・・・。」


ロゥの部屋の前で呼んでみる。返事は無い。扉をあける。


「返事・・・・・・・・・・してよ。」


中には誰もいない。


「何であなたなの?」


ロゥがこの世界に必要とされていなかったなんて、役目を持っていなかったなんて私には信じられない。


「あの子である必要がどこにあったの。」


ロゥがいつも座っている椅子に私も座ってみる。


「ん?」

丁度、椅子に座らないと見えない隙間に何かが挟まっているのに気付いた、


「何これ?」


指がぎりぎり入る様な隙間だ。


「・・・。」


出て来たのは紙の束だった。


「これは・・・・・。」


それは手紙。ロゥからの手紙。


「!」


考えるのは後にして開けることにした。



中は、酷く淡々とこの後どうすれば家がよりいい方向に進んでいけるか。私の好きな紅茶の仕入れ先やらお父様が買っている株の状況とこれからの予想。そういった、業務じみたことだけだった。


「なにこれ・・・。」


そう思わざるえないような内容だった。悲しみや怒り。そういった、感情をいっさい感じさせない文章が綺麗な字綴られていた。


私はただ、他に書いてあることは無いかとページをめくり続けた。最後の一枚だけ内容がガラリと変わっていた。



お姉ちゃんへ


いまだ、そう呼ぶのにためらいがあります。だけど、お姉ちゃんってずっと読んでみたかったので嬉しかったです。本当にありがとうございます。ここからだけはお姉ちゃんと話した後に書いたのでちょっと情緒不安定です。悪い意味ではなく嬉しすぎたからです。もう、時間があまりありませんのでただ伝えたかったことだけ伝えます。


お姉ちゃんは私のことを救ってくれました。私はお姉ちゃんのおかげで幸せでした。本当にありがとう。たぶん、いずれ。というか、たぶんすぐに気付くと思うので書いておきます。私がどうなったかはおそらくこの手紙を呼んでいるなら知っていると思います。お姉ちゃんは優しすぎるのでお父様を怨んで、憎んでしまうかもしれません。確かにお父様はお姉ちゃんでも必要とあらば利用することができる人です。ですが、本当にお姉ちゃんのことを大切にもしています。だから、私はそんなお父様が嫌いになれません。だから、お父様がお姉ちゃんをみて後悔しているようだったら言って下さい。「私は、お父様の判断が間違えとは思いません。そんな事を後悔するぐらいならお姉ちゃんと幸せになって下さい。おそらく、その方がお姉ちゃんがより幸せになれるのではないかと考えました。」後悔なんてしないと思いますが。私が、世界に必要とされていない子であることに憤っているかもしれません。でも、そんなことで起こらないでください。私はお姉ちゃんに何かすることができたとわかっただけで十分です。たぶん、私は役目こそ持っていませんでしたが何の問題もありませんでした。私は幸せでした。



最後に一つだけ約束をして下さい。私からのお願いです。


どうか、幸せになって下さい。私がいなくなっても何の問題のないように手はまわしておきました。ですが、お姉ちゃんの心のうちだけは私にもどうすることもできません。少しずるいと思いますが、あなたの妹なのでちょっと胸を張って偉そうなことを言います。


この世界の寿命を私がせっかく延ばしたんです。お姉ちゃんの思うように幸せになって下さい。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。反則だわ。」


私はしゃがみこんだ。どんな時でも私を優先させる妹が恨めしくてしょうがない。


「こんなんじゃ、沈み込めないじゃない。」


嬉しくて悲しくて辛くて寂しくて涙が溢れた。部屋の外でお父様が言いたげな顔で立っているのが見えた。


「お父様。ロゥからの手紙よ。私に向けて書いてくれたページは私がもらうわ。」


そう言って最後のページをちぎった。


「・・・。わかった。」


お父様は報告書じみた手紙(?)を読み進めていく。 そして、ふと私に尋ねた。


「怨んでいるか?」


「そうして欲しいの?」


「・・・。いや。」


「ロゥはねお父様のことが嫌いになれないんだたって。私のことを本当に大切にしているからだって。本当に・・・。私のことを好いていてくれたんだ。最後の最後まで私の幸せを願ってくれたの。私の大切な妹だったの。」


何を言いたいか自分でもわからない。


「手紙にはなんて?」


「幸せになって下さい。だって。妹からの最初で最後の頼みが私の幸せなんだよ?」


「ずるいな。」


思わぬコメントをもらった。


「ほんとだよ。」


私の声は中に霧散した。


「私は後悔しないぞ。」


「ロゥもそう言っていたわ。お父様が私をみて後悔しているようだったら「私は、お父様の判断が間違えとは思いません。そんな事を後悔するぐらいならお姉ちゃんと幸せになって下さい。おそらく、その方がお姉ちゃんがより幸せになれるのではないかと考えました。」って言えって。」


「お見通しだな。」


「そうです。お父様の娘は本当に有能だったのよ?」


お父様は他には何も言わず行ってしまった。何をしに来たのかわからなかったが、妹の言葉を気持ちを少しでも伝えられたから良しとしよう。









ただ、今だけは思い切り泣かせて欲しい。そうしたら、ロゥの言うように頑張るから。


なんかおかしなところがあったら教えてください!!


次ぐらい・・・異世界へ行けるかなぁ

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