さようなら
あれ?やっと!?
私は運命に逆らわない。逆らえない。この家の今の当主は娘だろうが妻だろうが、家を守る為ならば何でも捨てる。
誰かに助けを求めても何もしてくれないのは知っていた
神様を信じていないわけでも信じているわけでもない
ただ、神様は助けてくれない
神様は助けてくれるような存在では ない
私はかすれた記憶の中で理解した
神とは何か?
神とは 無慈悲な傍観者だ
地下室の湿った冷たい空気が頬に当たる。
「・・・。お父様。参りました。」
「ロゥか・・・。丁度いい頃だ。始める。」
「はい。」
荒れ狂う心の内を必死になだめる。あきらめろ。今までだってそうして来たじゃないか。
「それでは準備をお願いします。」
「お前はいつまでたっても・・・哀れな操り人形のままだったな。」
私は聞こえない振りををした。本来ならばならないことだが・・・私の中でお父様はどうしても守らなければならない対象には入っていない。正直、今すぐにでも消してしまいたかったがお姉ちゃんを悲しませる可能性を1パーセントでも作ってはならない。
「・・・。私は私の意思で行動しただけでございます。」
今日はいつもと勝手が違う。やっぱり、死ぬ前となると少しでも自分から声を発したくなるもんなのか?いつもなら・・・お父様の言ったことに返事はしないのに。怒られるから・・・。
「そうか。」
それだけなのか?お父様は興味のない様子だった。ただ、私は返事をしてもらえたことに驚いた。怒られなかったことに驚いた。
お父様はおじい様が残した資料を見ながら魔法陣を描いていく。昔使った者では強度が落ちるそうだ。
それにしても、これ・・・最先端なんてものをはるかに超えた科学技術だなんて偉そうに言ったが・・・完璧魔術じゃないのか?お父様はこれをどうしても魔術とは呼ばない。お父様はこの儀式の研究をして儀式を理解した。らしい。残念ながら専門知識がないと理解の使用が無いらしく、資料庫に入ることを禁じられた私には理解のしようもないが。とはいったものの、何の生き物だったのかすらわからない肉の残骸や、ちょっと近づくのも躊躇するような匂いと色を持つ液体を使用するのは止めて欲しい。これではいくら言ったところで魔術にしか見えない。信じている信じていないは別として。
「・・・。ロゥ。儀式は月がこの屋敷の真上に来たら始まる。」
始めるではなくて始まるのか。
「わかりました。」
「最後に聞く。何か言いたいことはあるか?何か心配しているのかもしれないから言っておくが私は、わざわざ儀式の寸前になって生贄をいたぶる様な愚かな行為はしない。」
そうか。
「言いたいことはありません。ただ、伝えたいことがありました。」
「なんだ。」
「・・・。アカシア様を・・・お姉ちゃんをよろしくお願いします。」
初めてかもしれない。お父様と目を合わせたのは。
「お前はアカシアの保護者か?」
なにか反応が返ってくるとは思わなかった。
「アカシア様は私の・・・お姉ちゃんです。」
嘘は言っていないが・・・恥ずかしい。
「私はお前の様な娘がいて不快以外の何物でもなかったがな。」
知っているよ。そんなこと。私を見るたびに顔をしかめていたからね。それでも、私はあなたを怨めない。私の命の有効活用をしてくれるのはお父様だから。私の望みを叶えてくれると言ったから。
「申し訳ありません。」
それからは、ひたすら沈黙が続いた。
あぁ・・・時間的にあと5分程度か。このことをお姉ちゃんは知っているのだろうか。いや、知らないでいて欲しい。きっと優しい人だから優しすぎるからお父様を怨んでしまう。憎んでしまう。
月がタイムリミットを告げる。
魔法陣(?)から光が発せられる。
まんま魔法だよなぁ・・・。
「それでは、儀式を行う。」
私は無言で魔法陣の中央に立つ。一応一通りのことは頭に入っている。この儀式はとても短い。あっという間に終わるだろう。今頃、お姉ちゃんはご飯の準備ができたと使用人によばれているだろう。そういえば、ラリーは今日は弟に会いに行く予定だと報告を受けたが・・・報告では聞いたが本当に弟とは仲直りが出来たんだな。兄の方でももうそろそろできるだろうとの情報を得た。
「汝、世界に弾かれし者。地に眠る精霊に命を与えられし人形。偽の姿を世界に還せ。時の流れを繋ぐ鎖となれ。」
魔法陣がぐるぐる回り出す。思わず笑みを零した。これを魔法と言わずに何とする。それにしても呪文が長い。お父様が言うにはこれはスイッチだそうだ。装置は魔法陣で・・・電池が私。このスイッチを押すのにもそれなりのエネルギーがいる。らしい。
「世界の環より来たれ、天秤の守護者。この者の命と引き換えに時の流れの足枷とせよ。」
この呪文だが結構わかりやすい。私だって、何も分からないまま生贄になるのは悔しい。だから、使える手を使って調べた。
この儀式は、この世界の寿命を延ばすらしい。何故、そんな重要なことを極秘で私の家が行っているかまではわからなかったが、私の家では代々世界に弾かれる人が生まれる。今回は私だ。この世界に生まれる者にはそれぞれ、死ぬまでに果たす役目を持っている。そして、皆それをやり遂げる運命にある。皆が皆、世界の人形であるのは間違いない。まあ、そのことで何の弊害もないのだから何の問題もないが。そんな中で、世界に弾かれた人=役目を持たない人となる。らしい。詳しいことはわからなかったが・・・ようは世界の環にいる天秤の守護者に私の存在と世界の時を進めるつまり、寿命が来るのを遅らせるための足枷と交換するんだ。他にもわからないことが大量に会ったのだが・・・知る手段がなかった。私が気付いていないことはあるというのも確かだが。そして、お父様が最後の一言を口にすれば私はこの世界から消える。
「契約は成された。」
ばいばい。最後に癪だからお父様を驚かせて見ようと思った。私だってまだ子供だ。遊び心もあるつもりだ。
「あ り が と う」
視界が真っ白になる前に何故かお姉ちゃんの叫び声とお父様の驚きの顔が見えた。
そして さようなら
その日を境に私はその世界から完全に消えた。
なんか口調が途中でごちゃまぜになる・・・
なんかおかしなところがあったら教えてください<m(__)m>