表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
次の勇者を召喚します。  作者: P4rn0s


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/8

選択の勇者

白い光の中に、突然放り出された。


足場はなく、上下の感覚も曖昧で、

ただ身体だけがそこにある。


『異世界転移を開始する』

『能力を選択してください』

『制限時間は二十秒です』


意味は分かった。

だが、理解できている気はしなかった。


文字が、多すぎる。


剣。

魔法。

強化。

耐性。


選べと言われても、

何を基準にすればいいのか分からない。


時間だけが、減っていく。


視界の中央に、

ひとつだけ、浮かび続けている文字があった。


《必要な能力を得る》


説明はない。

条件もない。


よく分からない。


でも、他よりは、

これがいい気がした。


「……これで。」


選択。


『能力選択を確認』


次の瞬間、身体が落ちた。


重力。

衝撃。


石の床。


見上げると、玉座と人影。

王の間だと、なぜか分かる。


側近が近づき、水晶を差し出す。


触れた瞬間、周囲の音が言葉になる。


「能力は?」


どう答えればいいか分からない。


「……分かりません。」


正直に言った。


水晶が、魔力を吸い始める。


身体の奥が、冷えていく。


側近が、王に向かって短く告げる。


王が、手を振った。


その瞬間。


胸の奥が、強くざわめいた。


理由は分からない。

だが、確信だけがあった。


──死ぬ。


振り下ろされる刃。


身体が、勝手に動いた。


首を切るはずだった刀が、

ありえない距離で空を切る。


悲鳴。

どよめき。


自分でも、何が起きたのか分からない。


心臓が、壊れそうなほど鳴っている。


「……今の……」


頭の奥に、遅れて言葉が浮かぶ。


──危機。

──回避。


能力だと、なんとなく分かった。


兵士が、もう一度踏み込む。


今度は、はっきりと“嫌な未来”が見えた。


刃。

血。

床。


「やだ……!」


生きたい。

死にたくない。


そう思った瞬間、世界が変わった。


兵士の動きが、遅く見える。

距離が、正確に分かる。


身体が、自然に後ろへ下がる。


剣が、また外れる。


「……なに?」


自分が一番、混乱していた。


側近が、水晶を見る。


水晶が、異常な光を放っている。


「……魔力が、減っていない?」


兵士が一斉に構える。


今度は、

“全部来る”未来が見えた。


囲まれて、

切られて、

終わる。


「やだ、やだ……!」


逃げたい。

ここから、離れたい。


願った瞬間、

景色が、引き延ばされた。


一歩踏み出す前に、

すでに数歩分、位置がずれている。


瞬間移動。


理解する前に、

また別の能力が、当たり前のように使われていた。


王の顔が、青ざめる。


「……側近。」


側近は、震える声で言った。


「能力が……増えています…」


「選択上限を、超えています!」


主人公は、何も分からない。


ただ、怖い。


生きたい。


分かりたい。


「なんで……殺そうとするんですか。」


その言葉に、

王も、側近も、答えられなかった。


水晶が、軋む。


魔力を吸おうとして、失敗している。


「止めろ!」


側近が叫ぶ。


「これ以上は……水晶が壊れる!」


主人公は、その意味を知らない。


ただ、

剣が振られる未来が見えなくなったことだけは、分かった。


誰も、動けない。


兵士も、王も、側近も。


理解してしまったからだ。


この勇者は、

殺せない。


殺そうとすれば、

そのたびに“生きるための能力”を得る。


水晶が、ひび割れる。


召喚陣の光が、集まらない。


「……終わった。」


主人公は、まだ状況を飲み込めていない。


ただ、静かになった王の間で、

誰かが、そう言った。


次の勇者を召喚する必要は、もうなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ