一夜の花嫁の末路
「ありがとう、エディもジャンを探してここにたどり着いたのね」
……英雄は姿を見せないのは、ジャンが英雄の抱っこをいやいやと拒否したからだろうか。
それとも、私と顔を合わせたくなかったなのか。私と同じようにまだ心の整理がついていないのか。
「シャリア……」
エディが感極まったように泣きそうな顔をしている。
ジャンが見つかって嬉しいよね。
エディが何を思ったのか、私の手からジャンを取り上げて、アイシャさんに手渡した。
「少しお願いします」
「ん?もちろんそれはかまわないさ」
え?え?どうして。せっかく3日ぶりにジャンに会えたんだよ?もっとギュッとしてジャンと一緒にいたいんだけど。
「ジャン、いいこで待ってて」
エディの言葉にジャンがにこにこ顔でばいばいと手を振った。、
え?ジャンもちょっと冷たくない?3日ぶりのママだよ?
エディが私の手をひっつかんで廊下に出た。それからずんずんと歩いていく。
「エディ、どうしたの?何かあったの?」
ドアの一つを開いて、部屋に入ると、おもちゃがいくつか転がっていた。
あ、この部屋にジャンがいたのかな?もしかして、ジャンのお気に入りのおもちゃがあってそれを譲ってもらおうとかそういう話とか?
「ほんの少し前の話です……」
エディがもはや我慢できないという感じで、涙を流し始めた。
「何があったの?どこか痛いの?何か無理したの?」
ジャンを探して公爵家にたどり着くまでに……無茶なことをしたのでは?
「僕の人生で……生まれてから今までで、一番幸せなことがあって……」
一度涙が落ち始めると歯止めがきかなくなったのか、ボロボロと泣き続ける。
「ほら、そんなに泣いたら目が解けちゃうわよ!」
ハンカチを出してエディの目元をぬぐう。
「一番幸せなことって、ジャンを見つけたこと?」
泣いてジャンを抱きしめるんだろうなと思っていたのに、英雄が現れるんだと思ったら緊張してそれどころじゃなくてどうしようってそればかりだったのに、現れたのがエディで。エディがジャンを抱っこしているのを見たら、まるで日常の一コマに戻ったみたいで。何も起きてなかったみたいで。
ほっとして。
エディが首を横に振った。
んー、じゃあ、何だろう。こんなに泣くほど幸せなことって……。
さすがにジャンみたいにおいしいものをたくさん食べて嬉しいとかそんなことじゃないよね?
あ!
……そういえば、女性を探していると……。いっそ振ってくれればと言うようなことを言っていた。
もしかして、その女性が見つかって……思いが通じ合ったの?
ずきりと心臓が痛む。
いくら幸せすぎて気持ちが抑えられないからって……今、言うことないのに。
「もしかしたら、僕はもっと幸せになってもいいのかなと、ちょっと欲張っているんです」
ジャンを見つけて幸せで、女性を見つけて幸せってこと?それから?私には関係ないじゃない
「答えてください……」
「何を?」
私に何を答えさせたいの?これからどうしたらいいかとか?
知らないわよ。勝手にすればいい。
あ、違う。もしかしたらパーティーを続けるか解消するかとかそういう話?
「一夜の花嫁……思い当たることはありませんか?」
あ。
ジャンのことを知ったの?クリス……いえ、シャルムが話をしたんだろう。公爵家にも。
「そうよ。ジャンは、その一夜でできたの」
「今、僕が借りている宿で……」
そうだと頷くと、エディは両手で顔を覆って下を向いてしまった。
どうしてそんなことをきくんだろう?
「エディ?」
話の続きを促しても、エディは顔を小さくフルフルと振るだけだ。
くっ。
こんな時までかわいいしぐさしないでよ。
仕方がない。
私は……エディの姉にでも母親にでもなってあげようじゃない。その女性のことだって相談に乗れと言うなら……。
こんなにかわいいエディをほっておけないんだから仕方がないじゃない。
「ちゃんと話をしないと分からないわよ?」




