責任取ってくれますよね?
それから、硬直が溶けると、頭を手で押さえた。
「まて、ミーニャ、俺は責任を取るようなこと、した覚えはないが?というか、そういう関係じゃないよな?」
ガルドさんの言葉にミーニャさんがずんずんと部屋の中に進んでいき、ソファ私を腰掛けさせた。
「あったりまえです。私はギルド長じゃなくて、銀色冒険者の……って、私のことはどうでもいいんです。責任、とってくれますよね?」
ガルドさんが、ソファに座らされた私を見る。
「は?え?子供が出来たって、まさか……」
「あ、はい。3か月だって、お医者さんに言われました」
呆然としるガルドさん。
「だから、責任取ってください、ギルド長!」
ミーニャさんの言葉にギルド長が青ざめ首をぶんぶんと横に振った。
「いや、俺は手を出してないぞ?そりゃシャリアはかわいいし、強いし、めちゃくちゃ理想、いや、あー、いい女になるだろうと思っていたが、いや、あー。ばぁちゃんの弟子に手なんか出したら、殺されるぞ?分かるだろ、ミーニャ。シャリアを落とすならばぁちゃんに認められないと」
ミーニャちゃんがあきれた顏をする。
「何を言ってるんですか?責任ってのは、有望な冒険者であるシャリアさんを護る、ギルド長としての責任を取ってくれって話ですけど?」
ギルド長がひょっと息をのんだ。
「あ、そうだな。俺はギルド長として……責任を……。よし、相手の男を捕まえて八つ裂き……」
いや、まぁ、この場に”父親としていない”相手の男を責めるという気持ちはありがたい。
でも、悪いのはクリスで、名前も顔も分からないあの人ではない。まさかこんなことになるなんて私も思わなかったけど、あの人も思ってないだろうし。
むしろクリスの被害者仲間。略して、ひがなか。
ひがなかさんに責任はないのに、八つ裂きはかわいそうすぎる。
「えーっと、父親はいなくて……北の戦線に……」
ミーニャさんがはっと口を押え、ぎゅっと私を抱きしめた。
「そう、亡くなったのね」
いや、生死不明で、生きて帰ってほしいと願ってはいますよ。
帰ってきても二度と会わない、いや、会ってもお互いに分からないだろうけど。顔も見てない名前も名乗ってない。
まぁでも死んだのと同じようなものではあるよね。
一生この先会わないだろうって事実だけとらえれば。
うん。子供が生まれたらそう伝えよう。「北の戦線に行ったきり戻らない」と。嘘ではない。あとは勝手にいろいろ想像してもらって。
「そうか……それは辛かったな……」
辛い?
あれ?そう言えば。婚約者だったクリスに裏切られたはずなのに、すっかりショックから立ち直っている。
というか、もはやすっかり忘れかけていた。たった3か月しかたっていないというのに。
師匠に教えてもらった稼ぎ方、魔物を倒して倒して倒しまくる生活をしていたおかげだろうか?
全然辛くないですよと言おうとして、吐き気が。
「うっ」
口を押える。大丈夫、吐き気はするけど吐き戻すような感じではない。
「ああ、シャリアさん、かわいそうに。とにかく、ギルド長!こんなになっても子供のためにお金を稼ごうと魔物を倒しに行こうとしてるんですっ!ギルド長として責任取ってくださいっ!」
あれ?もしかして、私がクリスを思い出して鳴くのをこらえてうめいたと勘違いされてない?違う、吐き気が。
あクリスを思い出すと吐き気がって意味じゃなくてさ。単純につわり。
「せ、責任……?」
「ギルド長として冒険者を護る責任があるでしょう!妊婦を魔物退治に行かせるなんて無責任ですよ!」
えー、ミーニャさんまさかギルドの規則を変えて妊婦は冒険者資格停止にするとか言い出さないよね?
「でも、私、働かないと!」
「んじゃ、俺が」
何かを言おうとしたギルド長の襟首をミーニャさんがつかんだ。




