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「さて、まずはどこの貴族がジャンを連れ去ったのか調べないとね」
王都へ入り、王都のギルドの部屋を借りた。
随分立派な部屋に通され、もてなされている。
「本当にギルド長はS級冒険者のすごい人だったんですね……それから師匠も有名なんですね……」
うんうんと頷くとギルド長は胸を反らした。
「そうだぞ。見直したか?」
それから、気になるのはエディだ。
「もしかして、エディも結構名の知れた騎士だったりします?フードをかぶって顔を見られないようにしてますけど」
エディがあははと小さく笑った。
「うん、まぁ……連れ戻そうというやつに見つかるとめんどくさいからね。念のため」
そっか。連れ戻されたら……。ジャンが戻ってきても、今度はエディがいなくなっちゃうんだ。
「騒ぎ立てて、逆に隠されたりすると厄介だからねぇ。秘密裏に調べたたいが」
エディが手を挙げて提案を始める。
「北の戦線で息子を亡くした貴族という線から調べてみます。僕も戦争に行っていましたから。参加者の名簿を見ることもできると思いますし」
「そうだな、俺は……」
ギルド長が頭を下げた。
「下手に動くと目立っちまうよなぁ。ギルドで情報を集めるよ。ジャンを連れての移動なら誰かが見ているかもしれない。移動手段護衛そのほか依頼が出されていなかったかも確認しておこう。もしかしたら王都ではなく領地へ移動している可能性もあるから他の支部にも情報が入り次第伝えるように手配もしておこう」
「私は……」
ぐっとこぶしを握り締める。
「クリスの家に行こうと思います。クリスのことを何か知っているかもしれません。そして、クリスに会ってジャンをどこへ連れて行ったのか捕まえて聞きます」
「ワシが付いていこう。シャリア一人じゃ心配じゃからの」
師匠が私の肩をポンポンとたたいた。
そうだね。私はクリスに2度も騙された。また言いくるめられて騙されてしまう可能性がある。
……私に嘘の情報を伝え、その間にジャンを別の場所へ連れていくなんてことも考えられるわけだ。
ギルドで別れてそれぞれの行動に移した。
「しかし、クリスは家にいるとは思えんがのぉ。それほどバカじゃあるまい」
そうだよねとは思うけれど。
「……シャリアが訪ねて行ったんじゃ、出てこぬかもしれんのぉ。ワシが行ってやろうかの」
クリスの実家である子爵家の門をたたく。いや、門番に師匠が声をかけた。
「ふむ。すぐに会えるそうじゃよ」
「え?本当ですか?どんな魔法を使ったんですか?」
平民が貴族を突然訪ねたら追い返されるだけだろうと思ったのに。
「ふほふほ、過去の栄光を使っただけじゃ。これでも名の知れた冒険者じゃったからな」
そうだった。冒険者たちに一目置かれてるんだよね。しかも国内に2人しかないS級冒険者のギルド長の祖母だし。子爵程度が敵に回せるような相手じゃなかった。
「それにしてもクリスがいると言うことは、王都に連れてこられたということで間違いなさそうじゃ。案外すぐに会えるんじゃないかの」
「はい」
ほっと息を吐き出して通された部屋で待つ。
「お待たせして申し訳ありません。クリスです。どのようなご用件だったでしょうか」
お茶が用意されるほどの時間も待たされず、すぐにクリスと名乗る青年が現れた。
「え?誰、ですか?」
「誰とは?私を訪ねてきたのではないですか?」
アイシャさんが私の顔を見た。
「人違いなのかい?」
こくりとうなずく。
どことなく似たところはあるけれど、別人だ。
「……でも、確かに、クリスは、ハムレイ子爵家の三男だと……」
青年がはぁーとため息をついた。
「それはたぶん私のいとこでしょう。前にも見知らぬ人から貸した金を返せと言われたことがあって……迷惑しているんですよ」
何てこと……。
クリスは何一つ私に本当のことを言ってなかったんだ。名前さえ……。
「あの、それで……クリスと名乗たその人はどこにいるのかご存じありませんか?」
本物のクリスが首を横に振った。




