ミスリル級
「甘いね、他人が口を出すなで終わりだろうよ。違うかい?家庭の……いや違うな、他の貴族の跡継ぎ問題に、他家が口出しなどできるのかい?跡継ぎを奪う行為など許されないだろうよ」
エディが口をつぐむ。
ううん、私にもわかる。
貴族は血をつなぐことが何より大切な場合もある。だからこそ、跡継ぎは結婚し子供をもうける。子供ができなければ血縁者から養子をとる。もしくは、別の女性に産ませる。
それくらい、血のつながった子供というのは大切なのだ。いくら上位貴族だとしても下位貴族の世継ぎを奪うことなどできないだろう。
それに……。
「それと、シャリアを家に迎え入れろというのも難しいんじゃないか?」
そう。外に産ませた子を貴族は取り上げることがある。
当然の権利だと思っている。
ジャンを手元に、世継ぎとして得ることができれば、産んだ母親は必要ないのだ。
「……ぐっ」
エディが言葉に詰まった。
「ううん、エディお願い。ジャンがどこに連れていかれただけでも調べて……母親としてかかわれないかもしれないけれど、乳母としてでも、下働きだとしてでも、ジャンの近くに行きたいの!それに……いざとなれば……」
実家の伯爵家に頭を下げれば。家格が同格か下ならばジャンを取り返せるかもしれない。
「もちろん、できるだけ、協力する。いいや、協力させてくれ……シャリア……」
エディの目に涙が浮かんでいた。
「ジャンをもう一度この手に……」
エディが私の手をぎゅっと握り締めた。
「そう悲観しなさんな。まるっきり方法がないわけじゃない」
「え?」
アイシャさんがにっと笑う。
「一つは、お前たちが結婚すればええんじゃ。ジャンとエディの髪の色はそっくりなんだから、自分の子だと言えばどうとでもなるんじゃないかの?」
「確かに、エディは瞳の色もジャンと同じめずらしいアースアイだから、顔つきは似てなくても親子だと言えば信じてもらえるかもしれないけれど……」
ああ。
「違う、あの、エディ、ごめんなさい、違うから。さすがに、ジャンのために結婚してほしいなんて……。自分の子だと嘘をついてほしいだなんて、そんなこと……お願いできるわけが……」
「いや、かまわない。結婚しよう」
エディが私の顔を覗き込んだ。
「エディ……だめだよ……だって……」
結婚出来たらどれだけよかったか。
エディがジャンンお本当の父親だったらいいと何度おもったことか。
「ずっとエディに悪いことをしたと負い目に感じてしまう……」
「負い目に感じる必要なんてないんだ、僕たそうしたいんだから」
うつむいて首を横に振る。
顔が見られない。
「エディの気持ちじゃなくて、私が……私の問題だわ。ずっと、負い目を感じて、エディの未来を奪ってしまったんじゃないかって考え続けて、それから……ジャンにも嘘をつき続けることになる……」
震える肩をエディが抱き寄せた。
「きっと、エディの笑顔を見るのも苦しくなる……」
「シャリア……」
エディの声は私を責めるわけでも自分の言葉を後悔するわけでもなく、ただ私をいたわるような声だ。
「はぁー」
アイシャさんの大きなため息が聞こえた。
「まぁーったく、しょうがないねぇ。んじゃ、もう一つの手を使うかね。」
「ほかにも方法があるんですか?」
エディがアイシャさんに食いついた。
アイシャさんはふふふと笑った。
「前にも言っただろう。ミスリル級冒険者は王にすら意見できるだけの力があるって」
あ。
私が、ミスリル級になれば……ジャンを取り戻せるってこと?
「ほら、さっさとしたくして、行くよ」
アイシャさんが奥から箒を二本持ってきた。
仕込み杖ならぬ仕込み箒だ。
「貸してやるよ」
ほいと渡されたのは、いつも貸してもらっているものではなくて、師匠のとっておき、アダマンタイトの箒だ。
「え?いいんですか?」
「ぼけっとしてないで、エディもちゃっちゃとついてくる」
アイシャさんと3人でギルドへと入った。
「ガルドはいるかーい」
奥からギルド長ガルドさんがすぐに出てきた。
「なんだよばーちゃん」
「緊急事態だ。エディにお前の剣を貸しな。それからお前もダンジョン行くからついておいで」
ギルド長の表情が引き締まる。




