とりもどす
「エディ、シャリアは見つかったかねって、どうしたんだい!」
家に入るとアイシャさんが私を座らせ、落ち着かせるように背中をさすってくれる。
エディは私の前にしゃがみこみ、手を握った。
「話せそうなら、教えてくれ」
ずっと震えて冷たくなった手がエディの手で少し温められた。
「ジャンが……連れていかれてしまった……」
私の言葉に、アイシャさんが固まる。
「誰にだい?」
首を横にふる。
「分からない……クリスが、昨日教えてくれて……ジャンの父親が亡くなって、それから、ジャンの祖父に当たる人が亡くなった息子の忘れ形見の存在を知り……ジャンを跡取りにしたいと思っていると……」
エディの手がピクリと動く。
「クリスとは誰だ?どこにいる?すぐに話を聞いてくる」
頭を横に振る。
「クリスは、ジャンを連れ去った貴族と私が話をできるようにしてくれると……」
「クリスという男は、信用できるのか?」
え?
クリスは、私をだまして売った。
でも、そのことを気にやんで償いをしたいと……。
ジャンがつれていかれた時に、傷だらけになって取り返そうとしてくれたし……。
信用できる?
話をつけに行ったのが本当だとしても、金を渡されてかかわるなと言われたら?
ううん、そもそも、クリスしか私とヒガナカさんのことを知らないんじゃないの?どうして祖父にあたる人はジャンのことを知ったの?
ヒガナカさんだって戦地に行ってしまったのだから私が子供ができたことなんて知らないはずだし……。
まさか、クリスが情報を売ったの?
ううん、それだけじゃない。
考えてみればおかしい。寝てしまってその間にジャンを奪われたのも。
私は、なぜ寝てしまったの?
クリスは宿から出ない方がいいからとパンと水を用意してくれたけれど、そんなに気が回る人だった?
あのパンか水に……薬が混ぜられていたとしたら……。
警邏に知らせない方がいいというのだって……。
あのケガも、血を見ただけで傷口を見たわけじゃない。
クリス……!
私をヒガナカさんに売ったばかりか、ジャンの情報を売り、そして……。
ジャンも売ったのね!
「信用……できない……どうしよう……きっとクリスはジャンを助けてはくれない……かもしれない」
歯がかち合わない。がくがくと震えだした。
私は本当にバカだ。
クリスの言葉を信じるなんて……!
「……その貴族というのはどの家だ?僕が話をつけてくる」
エディが固い表情で立ち上がった。
「……分からないの……。クリスに聞きそびれてしまって……動揺していて……」
ううん。もしクリスが計画的にジャンを連れ去ったのだとしたら、聞いたとしても本当のことを教えてはくれなかったかもしれない。
「大丈夫だ、僕の行使できる力を全部使ってジャンを探すから……相手が貴族というなら、やみくもに探すよりもはるかに見つけやすいはずだ」
エディの言葉に頷く。
そうだ。どこのだれか分からないわけじゃない。少なくとも貴族だと分かっているのだ。
いや、貴族というのも嘘の可能性は捨てられない。
だけれど、ヒガナカさんは大金をクリスに払っている。今回だって、誘拐なんて危険を冒してジャンを連れ去った。大金がもらえるのだろう。だとしたら、貴族ではなかったとしても金持ちであることは確かだ。見つかる、きっと……。
エディがドアに向かって歩き出した。
「待ちな、エディ」
アイシャさんが引き留めた。
「見つけたとして、取り返せるのかい?」
「取り返す!」
アイシャさんが首を横に振った。
「ジャンを取り返す権利などお前には一つもない、わかっておるのか?」
エディがハッとした。
「エディ、お前がたとえ相手の貴族よりも地位が上だったとして、何と言うつもりだい?」
エディが考え込む。
「た、確かに……。ジャンの肉親から他人の僕には何の権利もないかもしれないけれど……母親であるシャリアにはジャンを手にする権利がある。その手伝いを」
アイシャさんが首を横に振った。




